マガジンのカバー画像

小説:風景の記憶

11
オフビートな小説です。
運営しているクリエイター

#小説

第11回 マリア

 洋介は、まっすぐにマンションに帰らなかった。  あてもなく歩いていた。  やがて、中野駅…

第10回 決心

 アポなしで金子家を訪れた洋介は、執事に、蝶に会いたいと伝えた。  執事は洋介を残して母…

第9回 虚ろな真理子

 果穂から預かった風景はさいごの風景ではないから、喜びなんか見出せない。  生きていれ…

第8回 沢渡果穂のさいごの風景

 洋介は断るつもりだった。  マリアの時と同じ結果になるという予感があった。でも、武はそ…

第7回 老婦人のさいごの風景

翌日、洋介が金子家を訪れると、いつものように執事が出迎えた。昨日も顔をあわせたというのに…

第6回 金子家に招かれて

 数日後の夕方に金子家を訪れた。  いつものように執事が出迎えた。  母屋に案内されると…

第5回 雷の記憶

当然だけど、洋介の仕事は海外のみというわけじゃない。むしろ国内、もっといえば都内がもっとも多い。今日もそういう仕事だった。  マンションの屋上に立っていた。すっきりと晴れていて、強い風が吹いている。そこから見える新宿方面の風景が必要なんだ。  ちなみにこのマンションは昔、依頼人が住んでいた。当時はまだ東京都庁は建っていなかった。東京は今よりもずっと背が低かった。  目の前の風景と依頼人の記憶にあった風景を重ねてみる。   厚い雲が空を覆っていた。ほとんど全体的に黒に近

第4回 久々の日本食とか。

 マンションの部屋に戻って、リビングにいくと、真理子がソファに座ってスマートフォンをいじ…

第3回 マンションまでの道のり

 果穂のことなんだが、と車中で武が切り出した。 「お前がやっている、記憶の書き換えをやっ…

第2回 自営業は、自ら営業。

 南浦和駅から京浜東北線に乗り、赤羽駅で埼京線に乗り換える。新宿駅で中央線に乗り換えて一…

第1回 気まずい連中

 高橋洋介はガラステーブルの上にお土産を並べた。  お菓子やらアクセサリーやら、さほど悪…