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小説:風景の記憶

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オフビートな小説です。
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#風景の記憶

第9回 虚ろな真理子

 果穂から預かった風景はさいごの風景ではないから、喜びなんか見出せない。  生きていれ…

第6回 金子家に招かれて

 数日後の夕方に金子家を訪れた。  いつものように執事が出迎えた。  母屋に案内されると…

第5回 雷の記憶

当然だけど、洋介の仕事は海外のみというわけじゃない。むしろ国内、もっといえば都内がもっと…

第4回 久々の日本食とか。

 マンションの部屋に戻って、リビングにいくと、真理子がソファに座ってスマートフォンをいじ…

第3回 マンションまでの道のり

 果穂のことなんだが、と車中で武が切り出した。 「お前がやっている、記憶の書き換えをやっ…

第2回 自営業は、自ら営業。

 南浦和駅から京浜東北線に乗り、赤羽駅で埼京線に乗り換える。新宿駅で中央線に乗り換えて一…

第1回 気まずい連中

 高橋洋介はガラステーブルの上にお土産を並べた。  お菓子やらアクセサリーやら、さほど悪いものでもないはずだった。でも、義父母は触れもしなかった。義妹や義弟はいちおう手にしたものの、表情が硬かった。こいつは気まずい。しばらく五人で黙りこくっていたんだけど、やがて義妹の奈美恵が口を開いた。 「あのさ、宝石とか貴金属とかなかったの?」 「ネックレスを買ってきたじゃないか」  奈美恵はケルト十字架をモチーフにしたネックレスをつまみ上げた。それはシルバーではなく、麻の紐に木彫り