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短歌新聞『うた新聞』感想文

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短歌新聞『うた新聞』を読んで、好きな歌の一首評をしたり、気になった記事の感想を書いたりしています。
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記事一覧

『うた新聞』2024年3月号

①今井恵子「結社の意義」 〈一般に近代短歌のはじまりと考えられる「浅香社」結成にあたって…

川本千栄
4日前
5

『うた新聞』2024年2月号

①大辻隆弘「自己志向的な「の」」 『まひる野』1月号の北山あさひの時評から終助詞の「の」に…

川本千栄
3週間前
5

『うた新聞』2024年1月号

①田村元「AIはどぶに落ちない」 〈歌人のエッセイや日記などから、興味をそそられたエピソー…

川本千栄
1か月前
9

『うた新聞』2023年12月号

①今井恵子「歌壇史と短歌史」 〈『北海道歌壇史』が地域へ目を向けた空間的な広がりをとらえ…

川本千栄
2か月前
4

『うた新聞』2023年11月号

①今井恵子「作家脳と評論脳」 〈釈迢空のいう批評の要点は(…)③作者本人にさえ意識されて…

川本千栄
4か月前
1

『うた新聞』2023年10月号

①高貝次郎「思慮深かった平福百穂」 〈アララギの著名歌人は悉く百穂忌歌会の講師として招い…

川本千栄
5か月前
1

『うた新聞』2023年9月号

①山本登志枝「木俣修・没後四十年」 起ちても濤(なみ)かがみても濤どうしやうもなくて見てゐる高志(こし)の冬濤 木俣修 〈現実の冬波のうねりを感じさせる調べが(…)人生を生きる人間の心のうねりのようなもの、叫びのようなものとなり迫ってくる。〉  この歌、何だか現代的な感じがする。『呼べば谺』(1954)の歌だから、今から70年近く前の歌だが、初句六音、三句六音、三句から四句への句跨り、句跨り部分の口語体、三回繰り返される「濤」の語、などから今っぽい感じを受けるのだろう。この

『うた新聞』2023年8月号

①舗装路の隅の小さな水溜まりハコベの花が水中に咲く 嶋稟太郎 雨の後と取った。舗装路と言…

川本千栄
7か月前
6

『うた新聞』2023年7月号

①田中拓也「信綱の教育観」  佐佐木信綱の多くの業績の中から「教育者」の側面に的を絞った…

川本千栄
7か月前
4

『うた新聞』2023年6月号

①今月の巻頭作家として15首載せていただきました。大変うれしいです。ぜひお読み下さい! ②…

川本千栄
9か月前
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『うた新聞』2023年5月号

①命あるものが鏡にうつるという鏡の奥に昼はあかるく 奥田亡羊 おそらく生物と無生物という…

川本千栄
11か月前
2

『うた新聞』2023年4月号

①長生きは世の迷惑と言はれても生きてゐたいね、からすのゑんどう 高野公彦 初句二句のよう…

川本千栄
1年前
8

『うた新聞』2023年3月号

①マスクなしの顔を知らないまま別れゆくのであろう三月末に 岡本潤 本当にそうだなーという…

川本千栄
1年前
3

『うた新聞』2023年2月号

柴田典昭「追悼・篠弘」 〈そこ(『近代短歌論争史 明治大正編』の「自序」)には篠氏の見出した「短歌史を創る方法」が二つ記されている。一つは「短歌史の底辺における無名者の作品史」であり、今一つは「歌論史ともみるべき論争史」である。さらに「論争というものが文学者にとって命をかけるものである」ことも記されている。『近代短歌論争史 昭和編」でも貫かれた姿勢であると言えるだろう。〉  篠弘の偉大な業績には一本の筋が通っていたことを柴田は指摘している。史観無しに歴史は書けない。当たり前