見出し画像

利き手を封じられたら、もう一方の手で活路を・・・

 隅田川の屋形船でコロナの感染が発生して、一年が過ぎようとしている。

 係留されている屋形船で、若い船頭が黙々とメンテナンスと掃除をしていた。シーズンオフとは言え、先の見えない作業・・・どこか胸が痛む。

 隅田川の桜・・・両国の花火大会・・・彼らの晴れ舞台・・・隅田川の川面を競うように滑り・・・何十艘の屋形船がお客のために絶好のビューポイントへと急ぐ。これも江戸から続く下町の男たちの仕事・・・

 禅将・澤木興道老師の講話の中にこんな話がある。
「真剣勝負で、利き腕を封じられて身動きが出来なくなったら、ダメだと諦めるのではなく普段使わないもう一方の手で活路を見出せ、そして、相手の股座に腕を突っ込み急所を握りつぶせ・・・」乱暴な言葉に聞こえるかも知れないが、私はいつも困難に直面した時にこの言葉を思い出す。

 現在、コロナの再燃で日本中の経済が困窮している、特に屋形船の若い船頭を含め中小零細企業に身を置く人間にとっては深刻な状態・・・政府や自治体は数カ月の間じっと我慢してくれという、しかし保障のない人間にとって数か月後に破綻していたら、もうそこに自分の仕事はない。
 当てにならない政府の支援を指を咥えて待っている時間は我々にはない。利き手を封じられた今、もう一方の手で活路を見出すしかない。マスコミやテレビでは評論家とやらが色々言うが、中小零細の活路にマニュアルなど存在しない。百社あれば百通りの活路・・・それぞれが慣れない手で活路を見出すしかない。
 私自身も、この直面する敵の急所を探し慣れない手でもがいている最中である。


 ある人がこういう・・・「一年も経てばもとに戻っているよ」と・・・確かにそうだろう、今日見た墨田川にもやがて多くの屋形船は戻ってくるだろう。
 だが、私が思うことは、今日見た若者自身がまた船頭として屋形船に客を乗せ、墨田川の風を受けている姿なのである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?