工業高校生に送る大学進学の注意点 ②単位はよく考えてとろう
このシリーズは
工業高校→それなりに有名な私大に進学したおっさんが工業高校生(と
その親)に送る応援メッセージです。
スペック
私のスペックは次のとおり。
・関西の公立工業高校電気科→関西の私大卒(工学部・電気系)。
・高校時代に取得した資格は危険物取扱者(乙種4類→3類)、工事担任者(アナログ・デジタル総合種)、4級海上無線通信士、ガス溶接技能講習。
・大学進学後に合格・取得した資格は第1種電気工事士(合格)、第2種電気工事士、第3種電気主任技術者(電験3種)、情報セキュリティアドミニストレータ、テクニカルエンジニア(情報セキュリティ)
最初に覚えておきたい大事なこと
昨今では、工業高校から大学進学は珍しくないルートになりました。
でも、「大学進学」ではなく「大学卒業」までたどりつければなおうれしいことです。
「専門科目は有利!」で自分を騙すな
単位はよく考えて取ろう!
逃げの道はあるよ
今回は単位のお話。
単位はよく考えてとろう
高校と大学の授業の違い、それは「単位」の意識が必要という点です。
前回もさらっと「高校卒業まで74単位」とか、「専門分野はその内25単位以上」とか書いています。実際、高校やその前の小学校・中学校でも単位は存在しています。ただ、生徒はそれを考える必要がなかっただけ。
先生が意識してくれていました。
単位とはなにか。
単位とは、「学校での授業(+そのために必要な家庭での予復習)の時間」です。具体的には、ある授業科目の習得に授業と自習を含めて45時間かかるとき、その科目の単位が1単位とされています。
そして、この単位の認定は中間・期末の試験結果やレポートなどの提出で判断されます。成績は不可・可・良・優でつくので、例えば1単位の授業で可がついたなら、「45時間で習得できるだろう、と計画された科目で、最低限身につけるべき知識が習得できた」という意味です。
単位を取るとは、このような考え方のなかで「可以上の成績をつけてもらう」ということです。
なぜよく考えなければならないのか
基本的に、大学の授業は「いくらでもとっていい!」というものではありません。
上でも書いたとおり、1単位あたり45時間かけて習得することを想定しています。
だから、一年間に履修登録できる単位数に上限が設定されています。大体40単位程度です。これが履修上限です。履修上限を超える履修登録はできません。
一方で、履修下限はありません。全く履修しないのも可能です。
しかし、卒業までに124単位を取らねばならないこと、卒業研究がある場合は、その指導を受けるために年度始めに一定数以上の単位を要求されることがあること、大学3~4年次は就活などで忙しくて思った以上に単位が取りにくくなることを考えてください。
せっかく望みの就職先から内定を貰えても、卒業単位に足りなかったら卒業できないのです。
ですので、大学1~2年次に毎年40単位近く取っておく、最低でも31単位は割らないように単位を取ることをお勧めします。
科目の区別
科目にはいろいろな区別のしかたがあります。
開講期間が通年か限定されているか、受講条件があるか、必修か選択か自由か。専門か教養か。
科目の受講に関係するポイント ~開講機関と受講条件~
開講期間というのは、授業を提供してもらえる期間です。
今の大学は大抵一年間を前期・後期にわけてています。
通年開講ならば前期・後期ともに(先生は違うかもしれないけど)同じ内容の授業が開講されます。
そうでないなら、前期にしかうけられない、後期にしかうけられない……と期間制限があるのです。レベルが高い授業はたいてい開講期間が限られているので要注意です。
受講条件とは○年生以上でないと受講できない、とか、事前に特定の科目の単位を得ていないと受講できない、という制限があるものです。内容のレベルが高いとか、基礎知識が必要といった事情があります。
中には「特定の入学年度までは提供していた科目だけど、それ以降の年度には提供しない」というものもあります。
この開講期間と受講条件を読み違えると、授業の計画がガラガラくずれることがあるので、注意しましょう。
科目の重要性に関係するポイント ~必修科目と選択科目~
大学卒業には、必修科目の単位全てと、選択科目の単位で一定数以上を取っていなければなりません。
必修科目は「取ってないと卒業させてくれない」科目です。
場合によっては4年次開始時点で、一定の必修科目の単位を習得していないと卒業研究をさせてもらえないこともあります。
例で言えば、電気系なら電気回路学とか電気磁気学といったあたりの「これすら知らないのに、大学で電気勉強したって言える?」レベルのものです。
選択科目は「その科目の単位自体は取ってなくても卒業させてくれる」科目です。大事なのは「その科目の単位自体」というところです。
例で言えば、電気系なら「パワーエレクトロニクス」とか「制御工学」、「電気法規と設備管理」といった「他の専門分野が判っているならいいよね。でも、必修以外なーんにも判ってないなら、電気の勉強したって言えないよね」というタイプです。
科目の内容に関係するポイント ~専門科目と教養科目と自由科目~
専門科目と教養科目の違いは「所属学科特有の科目か、そうでないか」です。
自分が所属する学科以外で開講されている専門科目のなかには、他学部の学生にも履修許可があたえられる科目として開講されているものもあります。
たとえば、法学部で開講されている「日本国憲法」が他学部履修許可の科目になっている場合、法学部の学生が受講すれば専門科目、それ以外の学部・学科の学生が受講すれば教養科目として扱われます。
教養科目は、たとえば、歴史ある大学ならその開校に関する科目であったりとか、宗教系大学であれば様々な宗教についての科目であったりといった、専門だけではない幅広い視野を持てるような授業がおおいです。
大学の授業はこれが一番うれしいと、卒業して何年も経ってから思います。
私が行政書士を受けてみようと思ったのも、遠くには大学の頃に受けた日本国憲法があったからかもしれません。
こういう、「今は使わんかもしれんけど、何十年後かに芽を出す種蒔き科目」は規定の単位数を取れたなら、友達と一緒に受けられるものとか、面白そうとか、先輩から「楽やで」と言われたとか、自由に選べばいいと思います。
言いかたは悪いけど、専門分野のことしかしらない「専門バカ」ではなく、広い視野を持ったひとが変な思いつきを持てるのが、社会として
自由科目はほんとに自由。単位を取っても大学の卒業単位には含まれません。しかし、特別な資格(教職・司書など)もこの自由科目に含まれることがあるため、そっちの道を考えている人にとっては重要です。。
とくに注意しておきたい「資格取得のための単位」
何らかの国家資格の「取得条件」として、ときおり「専門分野の選択科目」とか「教養科目」というやつを要求されることがあります。
例えば、資格試験で取得するのが困難な第3種電気主任技術者は、
認定を受けた大学の電気科で、
認定で取得できます。(場合によっては最上位の第1種電気主任技術者まで)。
しかし、この資格認定に必要な所定単位の中には、通う大学によっては必修とされていないものもよくあるのです。
必修でないということは意識していないと単位を取っていないということになります。
さきほどの「電気法規と設備管理」みたいなやつは見落しがちで、しかもとってないと所定単位が取れていないから一発アウトです。
私が「電気法規と設備管理」の授業をとったとき、教室には10人くらいしかいませんでした。開講期間が後期だけですし2年次以降でなければ受講できないので、卒業までに30人くらいしか法規をとっていないことになります。
1学年80人でしたので、半数ちかくは電気主任技術者どころか第2種電気工事士の筆記免除すら受けられないわけです。
この点、工業高校の電気科の場合、認定校ならばかならず資格取得に必要な所定単位を取らせてから卒業させてくれます。
その他、甲種危険物取扱者なら、受験資格の一つに「大学等において化学に関する授業科目を15単位以上修得した者」というのもあります。
化学系の学科でなかったとしても、とにかく化学っぽい授業で15単位とれていれば甲種危険物取扱者をすぐに受験できます。
(実際に受験するまえには確認が必要です)
一見危険物には関係なさそうな栄養学だとか、公衆衛生学とかですら化学に関する授業科目としてカウントされています。
こういうのは落すともったいないので、ぜひ注意してください。大概の大学では入学時の配布資料などで「当学部で取得できる資格」みたいな資料をくれます。
参考にしておくといいでしょう。
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