独学で行政書士試験に再々チャレンジしてみた ②勉強の進め方

このシリーズは

独学で行政書士試験に3回チャレンジして、2022年度の試験で合格に至った話。
ちなみに2016年176点→2019年178点→2022年200点(選択170点、記述30点)です。
②は勉強の進め方とポイントです。長いです。5060文字です。

スペック

あらためて、私のスペックは次のとおり。
・私大卒(工学部・電気系)。
・難易度の高めな資格の受験経験は第3種電気主任技術者・甲種危険物取扱者といったところ。
※第2種電気主任技術者は国家試験を受けず、認定で得たので除外。
・2016年の受験一回目から現在にいたるまで、ほぼ同じ仕事(化学工場の設備設計(電気)・システム)。数年おきに大規模な設備工事やシステム改造があるため、その年は勉強を諦めてきた。
・2018年に長男、2022年に次男誕生。
・2022年からは消防団の分団本部に所属。

長いので、まとめ

・勉強時間の確保には「定期スケジュールの後にちょい足しで勉強する」が合っていた。
・過去2回の試験勉強では惰性で過去問を解きまくることでレベルアップした気になっていた。
・2022年は①遠回りのようでも条文を丁寧にあてはめることを意識する、②その為に六法を活用する…で勉強した。
・模試は受けていない。
・一般知識で足切りくらって178点ってのは、かなりくやしい。一般知識も頑張ろう
・2016年の試験当日、左膝半月板断裂という最強レベルの爆弾が炸裂した。

勉強時間の確保の方法

行政書士試験の勉強時間は600~800時間とも、800~1000時間とも言われています。コンスタントに毎日2時間500日こつこつやれる人もいれば、週末に固めて時間をとる人、隙間時間を拾いまくる人もいるでしょう。
スペックでも記載しましたが、私も家庭(配偶者や子)との時間、仕事の時間、ボランティア活動(消防団)の時間…と、平日・土日を問わずに色々詰め込んでいます。
その上、集中力がもたずにあきっぽく、のび太くんに負けず劣らずの即寝落ち体質なので、夜更かしや朝の早起きが得意ではありません。
ですので、メインは昼休みの食事後45分間、数年がかりで勉強しました。
やってない年は全く手もついていないので、トータルでは700時間くらいです。
隙間時間を拾う方法ですが、スマホで過去問を解くとかトイレで条文素読とか皿洗い中にYoutube動画を流すとかいろいろ試しましたが、定着したものはほとんどありません。
(唯一定着したのは、後述のなりきり授業です)
決まった時間に淡々と決めたことをやっていくのが一番おすすめだと考えています。じゃあ、どうやって時間を決めるのか?
正直なところ「自分の可処分時間のどこを勉強にあてるか」は誰かにアドバイスされて決められるものではないでしょう。飯食って昼寝してから仕事したいって人もいるだろうし、私のように通勤中は車を運転する人もいるでしょう。
ただ、多分「定期スケジュールの後にちょっと時間を足して勉強する」というのが、私には合っていました。今回は昼飯の後ですが、甲種危険物取扱者を3ヶ月で取ることになったときは会社帰りにマクドに寄って勉強しました。

勉強の流れ

再々チャレンジなので、2022年度は基本的な知識がありました。
そこで1回目(2016年)、再チャレンジ(2019年)、今回(2022年)の学習方法の違いを取り上げたいと思います。

初期(2016年頃)

テキストの選び方は前述の通りです。多分、この時も伊藤塾の「うかる!」シリーズを購入しています。ただし、六法は買っていなかったはず。
今、本棚をみると2016年版のアガルート「記述式対策完成への50問」があります。「記述は正確に文章を書く必要があるから、それだけ知識の精度が高くなる。記述の精度が高ければ、単に正誤を判断するだけの択一は十分カバーできる筈だ」と考えていました。
また過去問集や上記のアガルートの記述対策本を単に何周回したか、正解したかどうかしかカウントしていませんでした。
学習の流れとしては「テキストを章毎に読み、参考問題を解く」→「過去問を解く」の単純な繰り返しです。
一般知識はさほど力を入れていませんでした。
「ニュースも見ているし本もよく読んでいる。業務上コンピュータに関する知識も十分あるから、一般知識は大丈夫」という思い上がりです。この年、176点で一般知識は(細かい点数は忘れましたが)足切りを逃れていました。

再チャレンジ(2019年頃)

2017年の手術(前述の通り、2016年の試験日に千切れた半月板)→新居さがし・引越し・長男の出産・業務多忙化(~2018年末)を経て、2019年の新年早々から再チャレンジの勉強を再開します。
この時のテキストはTACの合格革命だったと思います。なお、伊藤塾の「うかる! 行政書士直前模試」を買って、結局やっていません(これも本棚にありました)。
六法も買いました。とりあえず引けばいいんだと思っていましたが、すぐひかなくなりました。英和辞典とかの使い方と変わらない、「民法110条の文言ってなんだっけ?」を見るだけ。すぐに文鎮がわりになりました。
このころも未だ、「テキストを章毎に読み、参考問題を解く」→「過去問を解く」の繰り返しです。だって、やればやるほど正解率が上がって合格に近づいたと感じたのですから。
それに2016年の勉強で得た知識が思った以上に残っていたのが自信につながりました。やり方は間違えていない、独学で行けると思いました。
一般知識も手抜きです。2016年は足切りを逃れたのですから。
そうやって試験を受けた結果は178点でした。何点でも落ちたことには違いありませんが、あと2点、1問! という悔しさは半端ありません。178点で落ちた人は誰もが思うはずです。
「あの時、あの問題で選択肢を間違えていなければ合格できたのに!」
しかも。法令は問題なかったのに一般知識は基準の40%に届いていなかったのです。一般知識を軽視する思い上がりに罰がくだされました。

2022年勉強のポイント

目的もない、惰性での過去問の繰り返しは、やった気になるだけで身についていませんでした。正誤を判断できた気になっていたけど、選択肢を選んだあとで理由付けしているだけだったのでしょう。
よく言われている"単なる暗記では点が取れない"を実感しました。
暗記は必要です。その上で知識を自在に使いこなせるように覚えたいところです。
覚えたことを自在に使いこなせたとき、圧倒的な"納得して肢を選択する"力が発揮できると考えました。そこで重視したのは次のとおりです。

① 条文と原則を大事にする。

設問にしやすい点は判例であったり、条文のなかでもとくに例外の規定なのかもしれません。2019年の私も判例を一生懸命覚えたりしました。
しかし、判例は条文の解釈例だし、原則あっての例外です。
原則通りであれば納得しやすい、例外ならばその要件に原則を上書きするほどの理由があるのです。条文では判断つけられないから判例があるのです。
だから、2022年の私は条文と原則を大事にしようと思いました。
条文を大事にするとは、問題に示されている事情と条文の要件を照らし合わせること、要件が充足されてはじめて効果が発生すること、発生した効果を問題の状況に合わせて具体的にどうなるかを考えること…です。
原則を大事にするとは、例外にとびつく前に原則の成立の可否を必ず判断しよう…いうことです。
かんたんにまとめれば、判例と例外にとびつく前に、条文(原則)の要件を充足するかを判断する、という法律家として当たり前のスタンスです。
たぶん、多くの行政書士試験の講師も、口をすっぱくしておっしゃっているはずです。
試験中はテンパっておろそかになりやすいのだから、せめて勉強中は気をつけようと考えました。
(実際、おろそかになったので、行政法の記述はボロ負けだし、民法の記述もポロポロおとしていそうです)

例えば令和4年度問45は配偶者の無権代理が事情として出題されました。
そのため、民法761条の日常家事代理権を基本代理権として権限外の行為の表見代理(民法110条)の趣旨を類推~と解答された例があるようです。
おそらく、日常家事代理権を書いた人は配偶者という単語を見て、覚えていた判例をそのまま吐き出しています。
せっかく覚えたのにもったいないことです。ほぼ同時に覚えていたはずの"無権代理と相続"の判例の考え方をそのまま吐き出していたら点数が取れました。
その二つを分けたのは"問題に示されている事情と条文の要件を正しく照らし合わせられたか"です。
なぜなら「前条第一項本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。」(民法110条)からです。
第三者が信じた、という主観事情がなければ110の要件を満さず出番はない(=民法761条もおよびでない)…と判断できました。実際、私はそう判断して無権代理と相続を書いています。

②六法はお友達

条文と原則を大事にするのなら、六法は必須だと考えました。
デイリーでもポケットでも判例六法でも行政書士テキストの綴じ込み付録でもスマホアプリとe-govでもいいので、六法を見る癖はつけるべきだと思います。
ここも2022年から心を入れ替えた点です。以前はお守り代わりにしかしていませんでした。英和辞典で単語を引いてその意味を知るだけ…と大差がなかったのです。
引いた条文はマークを入れます。マークの数だけレベルアップします。
過去問の正誤を判断するときも、「この問題のここはこの要件を満たすから、効果が発生する」という照らし合わせを最初に一度でもやっておけば圧倒的な力が付きます。
遠回りのようでも、これをやるようになってから判例の理解も格段にアップしたと感じましたし、過去問で間違えたところも「なぜ間違えたか?」が明確になるので記憶の定着によかったと思います。
ふわっと「間違えたな、暗記しよう」ではなく「条文のこの要件を見落したから間違えたのだ」と理由を付けられるといいのではないでしょうか?

③一般知識対策はテキストとニュース・新聞の王道

一般知識を落として泣いたのだから、ここも対策しなければなりません。
色々と検討しました。妻がよく見ていたオリラジの中田さんの動画を皿洗い中に見る(皿洗い時間が倍になっただけでした)とか、ニュース検定のテキストや問題集をやってみる(結局やらなかった)とか。
政・経・社と情報通信・個人情報と文章理解とあるなか、文章理解は完全な論理パズル問題に落ちます。そして、こういう国語問題が子供の頃から得意だった私は文章理解については自信がありました。情報通信についても、仕事柄コンピュータに明るく、過去に情報処理技術者試験の高度区分の試験に合格したことがある(今は存在しない、テクニカルエンジニア(情報セキュリティ))ので、対策はできていると感じました。
一方で、政・経・社と個人情報は2019年でもボロ負けでした。
そこで、政・経・社、特に経済と環境に絞ってテキストとニュース・新聞で知識を押えました。割り切りですが手持ちのテキストを増やしても回せ切らないので、テキストにないものは諦めです。

模試を受けなかった理由

各受験指導校の悪口を言うつもりはありませんが、私の中では模試の優先度は全ての中で一番低かったので、前述の模試ムックを立て読した以外には模試は一度も申し込んでいません。
模試の目的は①自分の学習のペースメーカ兼弱点探しの目安にする、②受験生全体でどの程度のランクに属しているかを知る、③試験の雰囲気に慣れるといったところでしょうか。
私は
①弱点だらけを自覚しているので、たまたま模試で出題された中から弱点を探す必要はないし、ペースメーカの必要性を感じなかった。
②受験生の中でのランクはあまり気にならない。絶対評価の択一と相対評価とされている記述の組み合わせなら、択一で高い点数を狙いにいくべきと考えた。
③資格試験の緊張感はこれまで経験してきたし、対処方法も確立している。2016年の受験日当日に左膝の半月板が千切れ、激痛の中受験するという最強クラスのトラブルを経験したから、雰囲気に慣れるために模試を受ける必要はないと考えた
ので、模試を受けていません。
目的がはっきりしないのに惰性で模試を受けるのはもったいないと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?