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産霊・ワタツミ(創作神話)

恨みが募ると
どうなるかしってるか

強い強い恨みは
己を毒者(どくじゃ)へと変化させる

毒者の放つものは
深淵の呪い



触れた者を全て
溶かし
焼いて
蝕みつくす

その苦痛は
死ぬまで続くのではない
どんなに体が蝕まれようとも
決して死ぬ事は出来ない



その呪いは
永遠の苦しみを与え続ける毒

永遠の苦しみを受けるのは
呪いをかけられた者だけではない

放つ呪いよりも強い影響を
呪いの主(ぬし)も受け続ける



自身の骨

すべて溶けゆき
それでもなお生き続ける



呪いを放つ度に
増す苦痛
増す怒り

死んでなるものか
我の恨みは
こんな事では晴らされぬ
痛みなどとうに忘れた



呪いたい
許してたまるか

死より辛い苦しみを
与えてやる

許してたまるか
我からあの子を奪った彼(か)の者達を

その為になら
我は神の名を捨てても良いのだ



自身にも
他者にも
延々と続く苦痛

それはやがて
直接関係の無い者にまで
被害が及んでいく
呪いの伝染

呪い止(や)めれば
全て終わる
派生も
無駄な犠牲も無くなる



しかし
相手を強く許せなかった事から始まった呪い
そう簡単に
止(や)められはしない



我の大切な者は
彼(か)の者達によって奪われ
千切られ
踏みにじられ
生け贄とされ
何も何処も関係の無い者達の
護りとして供えられてしまった

我が手に戻すすべもなし



なにゆえあの子を我から奪ったのか

なにゆえあの子を穢したのか

なにゆえあの子を
贄(にえ)にせねばならなかったのか


我はなにゆえ

あの子を
護れなかったのか…………



他者への呪いは
自身への強い呪い

呪い尽くしたかったのは
己自身だったのだ







あるとき、ふと
あの子の笑顔が浮かんだ



浮かんだ笑顔からみるみる
あの子の姿の幻影が生まれていく



その幻影は
やさしく我を抱きしめ
ささやいた

「ありがとう。今でも変わらずあなたを愛しています。」

穢れてしまってごめんなさいと
彼女はつぶやいた



いいや、
違うだろう!!

穢れたくて
穢れたのではないではないか

こちらへ戻れば
きっと君も元に戻れる!



そう言って彼女に
手を伸ばそうとして気付いた

なんと…
なんと穢れた手なのか……

こんな穢れた手では
彼女を元に戻す事すら出来ない……

我はこの再びの機会すら
無駄にしてしまうというのか……





否!!



我は今ここで呪いを解く!!
呪いを捨てる!!

全ての者を許し
解放し
そして我自身も解放する



なんと愚かな我だったのだろうか

命を見護り
育むべき我が

呪いとなってなんとする
毒となってなんとする


今世の我の身は消えゆくが
それをもって
彼(か)の者達の回復と
君の回復とに貢献しよう



君が再び元に戻れば
海も彼らも
穏やかに過ごせるだろう



私の名を
君に渡そう

どうか私を
覚えておいておくれ



いつか再び
この世に存在を受けた時は
また君を
護りにいくよ


愛している





さようなら

またいつか






この作品には、ペアとなる作品と物語があります。
作中に出て来る”彼女”サイドのお話です。
合せて読んでいただけたら、幸いです。




ここから先は、作画課程がずらっと続きます。
とても細かな絵画作業を
重ねて、重ねて
物語の終わりとともに、
作品の完成としております。



はじめ、右の男性の表情はこんな感じでした。
制作していくにつれて、
物語が進むにつれて、
表情がどんどん変わっていきます。


紙はとても薄い和紙を使っています。


金色を入れました。



虎の黒い色も
何重にも重ねて表現しています。








色が入ると人物の表情が一気に変わります。







ここから呪いの表現入っていきます



中の着物にドクロを描いています。






外側の着物、ブルーの部分を白で縁取っています。


ドクロ模様に色を足しました。


服に金色で模様の縁取りを入れていきます。


模様ひとつひとつ、金色で縁取ります。



墨を足しました。



紙面上に白い龍が現われます。



花を描き足しました。
このシリーズ(産霊画)に花は欠かせません。
起死回生アイテムみたいな感じですね。


龍の鱗を一つ一つ描いていきます。


鱗に金色を足します。


鱗も、見る角度によっては光沢が消えて、
鱗一つ一つの描き込みが見えます。



花に色がつき、花びらが舞い散り始めます。


金色がとてもよい具合に光って、
表情を際立て手くれました。


決意のあと。


虎さんは、ずっと変わらず見守ってくれていた。


表情がまた変わってきます。
服も新しくします。



着物に色を足していきます。


内側の着物の模様を描きました。
表情もまた少し変わっています。



表情が決まりました。


着物にどんどん色を足していきます。


着物の模様は、すべて金色で縁取っていきます。
角度を変えて撮影するだけで、色具合が変わるのが面白いです。



着物の内側の模様も、金色で縁取り。



金色での模様の縁取り、すべて終わりました。



仕上げに入って行きます。
手元からエネルギー(精霊体)が生まれていきます。




海神なので、海を描き足し。



虎さんカッコイイです。


表情アップ。


完成作品。
物語の終わりです。



『ワタツミ』
M6サイズ
和紙
アクリルガッシュ
2021年5月
千世国作

創作活動に活用させていただきます!どうぞよろしくお願いいたします!