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フリードリヒのえいよ座

 星座の話。

 国際天文学連合(IAU)は全天の星座を88と定めている。日本では星座と言えば星占いが最も身近であろうし、オリオン座はくちょう座などは理科の時間にも出てくる。しかしおそらく、一般の人が知っているのは20くらいで、有名じゃないものは全然知られていない。私も全部覚えているわけではない。

 こちらのリンクに88星座が並んでいるが、結構いろいろあるなあと思う。動物が多いが、モノの名前も多い。神話の登場人物は意外と少ないような気がする。

 いつかのクイズ番組で1文字の星座を3つ挙げよというものがあったように記憶している。や座ほ座ろ座である。や座は矢、ほ座は帆、ろ座は炉の星座である。ほ座はもとはりゅうこつ座・とも座とともにアルゴ座という1つの大きな船の星座であった。

 ヘビにちなんだ星座はうみへび座みずへび座があり、紛らわしい。ラテン語でも前者はHydra、後者はHydrusであり、よく似ている。うみへび座はヘラクレスに退治された怪物ヒュドラ―をかたどった星座で歴史もあるが、みずへび座は16世紀以降に作られた比較的新しい星座ということだ。紛らわしいのでもう少し別の名前にしてほしかった。うなぎ座とか。「みずへび」って何ですかね。あと、へびつかい座というのもある。

 多くの星座は、なんでこの生き物、モノを星座の名前に冠したんだというものはあれど(個人的にはちょうこくしつ座ちょうこくぐ座があるのが解せない)、名前からもとの由来は察することができる。神話由来のものも知らないとわからないとはいえ、「ス」で終わると神話の何かかなあという推測はできる。おそらくナニコレ度が高いのはテーブルさん座レチクル座かなと個人的には思う。

 「テーブルさん」というのはテーブル山、すなわち南アフリカ共和国のケープタウンにあるテーブルマウンテンのことで、実在の地名を冠する唯一の星座である。フランスの天文学者ニコラ=ルイ・ド・ラカーユがこの山で1750年代に天文観測をしており、彼がこの山をモチーフに設定した星座ということだ。確かに明るい4つの星を結ぶと台形となり、山頂が平らでテーブルのような形をしたテーブルマウンテンの形に見えなくもない。ただこのせい星座、一番明るい星でも5等星であり、さらにかなり南のほうにある星座のため、日本からは全く見ることができない。

 一方レチクル座のレチクルというのはWikipediaによると、「天体望遠鏡で恒星の位置観測を行う場合、接眼レンズの焦点面に、視野の中心を示したり視野を分割するための十字線」のことらしい。4つの星がひし形に並んでおり、対角線を結ぶと十字線ができる。こちらも南の空にあるため、日本から見ることは困難である。

 星座には現在の88星座に選ばれなかったものも多くあり、その中でも個人的に印象に残ったのが「フリードリヒのえいよ座」である。

「栄誉」なんて不可視なものを星座にできるのか!?と思ってしまった。この「フリードリヒ」は第3代プロイセン王で、プロイセンの強大化を進め文化的功績も大きいフリードリヒ2世のことであり、死の翌年にドイツの天文学者ヨハン・ボーデにより設定された。この星座が描かれた星図にはペンと剣と王冠と何かの植物(オリーブかな?)が見える。なおこの星座は1787年に作られ一部の星図には描かれたが、19世紀後半にはもう描かれなくなり、現在は使われていない。

 いろいろな星座があるが、日本の夜空は田舎でもない限り明るいのでなかなか星を見るには適さない。昔に作られた星座の数を見ると、昔の夜空はどこでも星がよく見えたんだろうなあと思う。

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