見出し画像

大都会のこと

 私は東京からは遠く離れた地方で育った。今まで東京に行ったのは4回だけである。

 東京のことは「東京」としてしか知らない。すなわち東京の中のこと、新宿や渋谷や原宿やお台場etc.がどういう街でどういう位置関係でどうつながっているのか、それらがよくわからないのである。多分東京のそれらの地名を地図上に並べるよりも東欧の国を正しく並べるほうが個人的には易しい。

 東京の知識は大抵テレビを通して知るのだが、テレビは「地方の人のための東京講座」などは当然やってくれないので知識も断片的なものになる。唯一、NHK教育で前やっていた10分番組「ゆうがたクインテット」で、「鉄道唱歌」を山手線の駅名で歌う替え歌が一時期毎日流れており、それで山手線の駅名は覚えることができた。

 初めて東京に行ったときは家族に連れて行ってもらったのだが、2回目は一人で地元まで飛行機に乗って帰らなくてはいけなかったので、その時に山手線の駅名を覚えていたのは助かった。山手線は環状線なのでどちら方向に乗っても結局は目的地に着くのだが、一方で東京の中で完結する路線であるため、駅名で方向を示されてもどちらに乗ればいいのかわかり辛かった。「ゆうがたクインテット」で駅名を覚えてからはもう数年が経っており、覚えたときは「これ使う機会あるのかよ」と思っていたのだが、見事役に立ったのであった。ありがとう、ゆうがたクインテット。

 ところがこの前「高輪ゲートウェイ駅」ができてしまった。あの替え歌に加えるにはちょっと長い駅名である。

 山手線以外にもJRくらいはなんとなくわかるようにはなったが、地下鉄のほうは全くわからない。東京の人はあの複雑な交通網を使いこなしながら生活しているのかと考えると、すごいなあと思う。上京した同級生たちはもうすっかり東京の暮らしには慣れただろうか。

 この話は東京だけでなく、横浜、名古屋、大阪にも言える。どこも行ったことはあるのだが、目的地に行っただけなので、都市内の位置関係などは把握できていない。

 地図は好きなので小学生のころからよく見ており、そのため日本や世界の地理はおおむね把握しているのだが、大都市となると地理が全然わからなくなるのは、多分「市街地」としか認識していないせいだと思われる。大きな範囲を見て、山や海岸線などの地形との関係で都市の位置も覚えているのだが、大都市だと一面の市街地でそれができない。

 おそらく実際に行けば、同じ東京の中でも場所によって雰囲気は結構違うのだろう。ただ、どこそこ行けるほど長く東京に滞在する機会があるのかはかなり微妙である。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?