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季語「囀」

遡ること2年前。
俳句ポストでは「百千鳥」という季語が兼題になっていたことがありました。
今回「囀」の文を書くに当たり、当時の文章と再会しましたので、よろしければ、ご覧ください→百千鳥のスタンス|千代 之人 (note.com)

「囀(り)」。
(り)と括弧書きしたのは歳時記によっては「囀」として掲載されていたり(角川大歳時記)、「囀り」として掲載されている(新歳時記)ものもあります。

歳時記の記述だけ書くと「春になると小鳥たちが繁殖期を迎える。その頃の鳴き声」(角川大歳時記)とあります。

こと四季を楽しむ日本人にとっては、春の到来を告げる喜びの音に聞こえ、珍重し楽しむ対象とされています。
鳥の種類を選ばなければ、囀りを耳にするのは難しいことではありません。都会に住んでいる人でも、ちょっと外に出ればそこの環境に順応しているスズメやセキレイの仲間の囀りは聞けそうですし、公園にでも赴けばいわずもがなだと思います。

今回、小鳥はなぜ囀るのか?縄張り争いや繁殖に至るまでの営みとは?と、ちょっと調べた上で囀りを聞いてみることとしました。

まずは囀りのため鳥が持つ器官について。
鳥には鳴管という発声器官があります。気管と気管支の間にあるこの器官を調節することで、鳥はいろんな鳴き方ができるといいます。

いろんな鳴き方と言っても、大まかにいえば「地鳴き(call:呼びかけ)」と「囀り(song:歌)」の2種らしいです。

地鳴きには、敵(捕食者)を知らせるアラームコール、仲間内で情報共有をするコンタクトコール、餌を求めるぺディングコールといったものがあります。

一方「囀り」です。
小鳥はなぜ囀るのか。

1つは、縄張りの主張という側面について。
小鳥の囀りを耳にしたとき、例えば、左のほうで声がしたと思ったら右のほうから呼応するように声が聞こえることがあります。この文章を書く前に囀りを意識して広めの公園等へ行ったのですが、このように囀りあうことはよく聞けることかもしれません。
左で囀ったほうをA、右で囀ったほうをB とします。この二羽が、春に渡ってくる同種の小鳥だとしたら、お互いに囀りあう関係になる前に、(A、B以外の個体も含めて)縄張り争いを繰り広げていたことが考えられます。雄のほうが先にこの地に来て、争って自分たちの縄張りを決めあい、そこに雌が来るように待ち、誘う。
もし、Aが囀った後にBが呼応しなければ、Aは何だ?と警戒して様子を見に行き、Bがいなくなっているとしたら縄張りを広げる行動に出るでしょう。むろん、Bの隣人がAだけでなく、Cとかもいたら、AとCでまた縄張り争い勃発です。
また、Aが囀った後、隣の縄張りからBでなくDの声がしたら、Aはやはり様子を見に来ます。「誰だ、今の声は!」という感じかもしれません。同種の小鳥でも鳴き声には個体差がありますから、こういうことも起こります。
縄張りを示すという意味でAが囀る意味は、「Bよ、今いつも通り無事か?」と隣人の状況確認。何か異変が起これば、縄張りを狙いつつも、互いの生存確認をしているかもしれません。

1つは、求愛という面での囀り。
囀りあう鳥の声を聞いたとき、音域が広く長く、音節も沢山あるな、と感じます。また、同じメロディラインを何度も繰り返している。例えば、恐らくビンズイと思える鳥の声を先ほど聞いたのですが、以下のwebサイトではこのような声です。
ビンズイ|日本の鳥百科|サントリーの愛鳥活動 (suntory.co.jp)
「長めのメロディを、大きな声で、音を外さずに繰り返し発しているか」。これは、小鳥の雄の健康状態のバロメーターになるようです。そのような囀りを発している雄の縄張りに雌は向かうとのこと(雄同士でも「こいつになら勝てそうかも(負けるかも)」と判断材料にしていると言います)。

縄張りの主張と求愛。このため小鳥は囀るのだということは、恐らく多くの方がご存じだったことでしょう。鳥の立場としてみれば、生活基盤となる場所(いわば自分の命のため)の主張であり、種の存続のための鳴き声が囀りだと言えそうです。

ほんの少しかじった程度ですが、この程度のことでも知ったうえで、外に出たり、窓を開くだけでも、昨日まで聞こえていた鳥の囀りが別な意味を持って聞こえてくるかもしれません。


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