[ショートショート] 全力で推したいダジャレ
日比野は無口な男子だ。
三年間同じクラスだが喋っているのを聞いたのは数回程度かと思う。
そんな日比野と学園祭のデコ係をやるはめになった。
得意な作業なので問題はないのだが、日比野と二人きりというのがちょっと気まずかった。
だって全然喋らないんだもん!
私は紙花を黙々と作りながらこっそり日比野の様子を観察した。
彼も器用に紙花を作っている。
意外にも綺麗な指先をしている。
それに、よく見ると日比野ってかわいい顔してない?
やだ、ちょっと好みかも。
日比野が顔を上げてこちらを見たので慌てて視線を外す。
「は、花、結構できたね。私、壁に貼ってくね」
急に恥ずかしくなって私は紙花でいっぱいの箱を持ち上げた。
「あ、俺やるよ」
日比野は素早く立ち上がると私から箱を受け取り、壁に貼り始めた。
その時にちょっと手が触れた。
私は少女漫画みたいにドキッとしてしまった。
「上羽奈々が折った紙花…」
日比野が唐突にボソッと私のフルネームを言った。
どういうことなのか理解するのに数秒かかった。
…え、ダジャレなの? 日比野がダジャレ?
何それ、超かわいいんですけどっ!!!!
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