見出し画像

[ショートショート] 二重人格ごっこ

バイト仲間のミキコちゃんとデートすることになった。

今時珍しい正統派アイドルのような女の子だ。
奇跡としか言えない。

待ち合わせ場所に現れたミキコちゃんの姿を見て俺は少し驚いた。
普段着は随分とパンクな感じだったのだ。

戸惑う俺をよそに、ミキコちゃんは何食わぬ顔でタバコに火をつけ煙を吐いた。

「なんか、今日は雰囲気が違うんだね」

恐る恐る俺が言うと、ミキコちゃんはあははと笑った。
驚く俺に彼女は言った。

「これが本当のあたし。嫌なら帰ってもいいんだよ」

かなり幻滅はしたが俺は帰らなかった。
パンクな彼女とのデートはそれなりに楽しかった。

帰り際に彼女は言った。

「私、本当はミチコ。ミキコの双子の妹。今日は楽しかったよ」

そうして彼女は帰って行った。

翌日ミキコちゃんとシフトが一緒だった。
彼女を目の前にして、昨日のはやはりミキコちゃんだったのではと思えてきた。

あれは君だったの?と聞くと、ミキコちゃんはうふふと笑って何も教えてくれなかった。

(409文字)


たらはかにさんの『毎週ショートショートnote』に参加します。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?