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名門校出身者が独立リーグに少ないのはなぜなのか?





はじめに

研究の動機

私は野球が大好きである。四国にはアイランドリーグplusという全国的にも珍しい独立リーグの球団がある。私はそこでスコアラーをアルバイトとしてさせてもらっていた。高校時代、私は名門校と呼ばれる広陵高校で野球をやっていたのだが、選手名鑑を見ていても、名門校出身の独立リーガーは少ない。独立リーグで野球をやる名門校出身者がなぜ少ないのか突き詰めていきたいと考えた。


独立リーグとは

まず日本大百科全書を参考に野球における独立リーグ以下独立リーグという)について解説する。独立リーグとは日本野球機構(NPB:Nippon Professional Baseball Organization)が運営するプロ野球を除いた、国内のプロ野球リーグの総称である。プロ野球独立リーグともいう。日本大百科全書と定義されている。2021年(令和3年)10月時点で、四国の4チームによって組織された四国アイランドリーグplus(四国ILリーグ)、北陸や信越地方などを拠点とする8チームが集まったルートインBCリーグ、関西のわかさみ関西独立リーグ、2019年に発足された3球団の運営による北海道独立リーグ、2020年に発足した九州独立リーグの5つが組織されている。さらに、女子野球の独立リーグとして、日本女子プロ野球機構がある。

 2005年にもっとも早く誕生した四国アイランドリーグ(2011年に四国アイランドリーグplusに改称)は、無名の選手や若い選手にチャンスを与え、野球を通じて地域を活性化することを目ざし、元プロ野球選手の石毛宏典(いしげひろみち)(1956― )が中心となって結成された。2007年にはBCリーグが誕生し、現在は、4つのリーグがある。


独立リーグの現在、野球界に及ぼしている影響と役割

[小林至, 2019]を参照に解説していく。独立リーグは多くの元NPBの選手が在籍する。2018年には2連続で本塁打王に輝いたことのある日本の4番村田修一も在籍した。

 独立リーグをNPBで戦力外になった選手の受け皿としての役割を果たしている。2016年位戦力外通告を受け、2017年にBCリーグ福井ミラクルエレファンズに所属した岩本輝選手は2018年にオリックスに契約されNPB復帰を果たした。2019年に戦力外通告を受け自由契約になった斎内宏明投手はその年の2020年シーズンに香川オリーブガイナーズでプレーをし、NPB復帰を独立リーグでの活躍が認められ2020年7月にはヤクルトと契約を結び復帰を果たしている。元NPB日本人選手だけではない。2014年~2015年に広島カープに所属したデゥアンテ・ヒース投手はメキシカンリーグを経て2018年に独立リーグ富山でプレーしていたところ、5月に西武ライオンズから契約を受けてクローザーとして活躍した。以前であればNPBの選手が自由契約選手となると、引退するか、海外のプロリーグでしかプレーする選択しかなかった。1999年以降は、社会人野球が元NPBの選手の出場を解禁したことで労働市場の流動性に大きな変化は見られたが、登録選手は1チーム3名までで、社員としての雇用条件や最低でも2年間プレーしないとNPBに復帰できないなど規制が多く、NPBの復帰を目指してプレーするところではなかった。

 ところが独立リーグでは野球を生業としてあらゆるバックグラウンドを受け入れる体制ができている。NPBの選手はもちろんのこと高校中退者、大学中退者、社会人野球で登録を外れた選手で、社業に専念することより野球を選んだものなど、従来であれば本格的に野球を取り組むことを諦める選手たちが夢を追いかけ続けられる場所として機能を果たしている。このように野球を続けたい人が諦めず野球へ本気で取り組むことできる環境としてはこれまでなかった環境であり、野球の労働市場として貢献度は高いといえる。

 他にも2006年WBCを制覇した川崎宗則と西岡剛という世界一を獲得した時の二遊間が一緒の独立リーグのチームでプレーした。このようにNPB選手が多く在籍する。彼らのプレーをみようと観客は多く集まった。NPBを代表とする選手だった彼らが独立リーグでプレーすることは、同じチームに在籍する選手はもちろん。対戦する相手チームの選手からもかなりの刺激になるだろう。彼らはNPBでは1軍出場が厳しかったが、独立リーグなら第一線で活躍できる。自分のチームへ知識や経験を還元することもできるだろう。そうすることでリーグ全体のレベルや元NPBの有名選手が在籍することで、リーグの注目度も上がる効果が見られるのではないかと期待する。

 リーグの発展や選手の育成のためにも今後も西岡や川崎のように元NPBの第一線選手が所属するような第2のNPBのような盛り上がりを見せることが今後の注目点である。


本論文の構成

 本文の構成は以下のようになっている。

 1章では、人口減っている我が国がなぜ独立リーグの球団現在増えているか。社会的な面と教育の面での影響を解説する。

 2章では、野球界における名門校の定義をし、今回この論文での名門校として指定する学校とその理由について解説している。

 3章では2章で定義した名門校を元に、野球のカテゴリー別で(独立リーグ、社会人野球、プロ野球など)所属する選手の名門校出身割合を提示する。

4章では、3章で出てきたデータを元になぜ独立リーグの選手に名門校で野球をする選手が少ないのか。名門校で指導する監督の指導法や私の高校時代の体験談を参考に解説している。

 5章では、私の広陵高校時代の同期58名に対してアンケートを行った。アンケート内容はこれまでの1章~4章までで論じたことやデータを参考に、出てきた疑問点を照合する内容になっている。

 6章ではこの論文のテーマである、『名門校出身者が独立リーグに少ないのはなぜなのか』についてのこの論文を通じてわかった私のなりの答えと独立リーグのこれからについて触れている。

 以上の1章から6章の内容から名門校出身者が独立リーグに少ない理由について迫る内容になっている。


第1章 なぜ独立球団は増えているか

独立リーグの球団が増えている。先ほども記したように、2019年に北海道リーグが誕生した。現在3チームで活動している。そして昨年(2020年)には九州アジア独立リーグが誕生した。現在熊本、大分で活動しており、来年度からはホリエモン(堀江貴文)が北九州にオーナーとなり球団を運営すると宣言している。さらに来年度から日本オセアン独立リーグが誕生する。滋賀、福井、石川、富山の4県に球団があり、リーグ戦を行っていく。

現在独立リーグの球団数は23球団ある。独立リーグの給与は10万円~40万円とされている。その中でも、ほとんどの選手10万円台の給与かそれ以下だとされている。関西独立リーグでは給与は出ない。また多くの選手はシーズンが終わると給与がない。選手たちはアルバイトをして生計を立てている。そんな苦しい環境の中でも彼らは独立リーグで野球をやることを希望する。選手たちの需要があるから球団が増えていっている。




1-1 野球の受け入れ先の減少

図 1 社会人野球チーム数の推移

出所: [公益財団法人 日本野球連盟, 2021]ウェブサイトより引用

かつての名門校出身者が野球を続けようとした場合の受け入れ先の変化について、 [横尾, 2009]を参考に解説する。かつては昭和の時代には企業に野球部が存在し、入社後に野球部に入り現役を続ける選手が多かった。しかし現在では企業の経費削減のために野球部を廃止するケースが増えてきている。特にその始まりが起きたのが、日本のバブル経済が崩壊した時だ。そこで企業は多額の負債を抱えることになり、チームの野球部を廃部もしくは減少することとなった。1994年に新日本製鉄が山口県と北海道にあったチームを廃部とした。1999年には日本全国に11チームを持っていたNTTがそのチーム数を削減し、東京と大阪にNTT東日本、NTT西日本と2チームに統合したのである。2年前には都市対抗野球初出場初優勝を果たした名門三菱重工広島も廃部になった。現在は三菱重工westと三菱重工eastに統合された。かつては企業チームで野球に専念をし、プレー引退後は社業に専念することができたのだが、現在はこのような引退後も会社が面倒を見てくれる安定した企業チームが減っていることが挙げられる。

現在はこうした安定した企業チームの減少により、クラブチームという選手達が自らお金を出し合って野球をやる社会人チームができた。そのチームは1995年以降企業チームの減少に伴い増えた。しかしそのクラブチームの選手たちは本業があっての野球チームなので、選手の熱量には個人差がある。中にはチームの人数が揃わず試合ができないというのは珍しくなく問題点の1つとしてあげられる。プロを目指していくには少し現実味がないチームであることが多かったのである。

独立リーグはシーズン中には出場給もあり野球に専念できる環境がある。そこで野球を続けたいが社会人チームに入れなかった選手やプロの夢をあきらめられない選手たちが多く集まってプレーをしている。


1-2 ゆとり教育の影響

ゆとり教育が影響したことを [石原, 2015]を参考に解説する。2009年シーズンに独立リーガーの生年月日を比較位してみたところ16球団(当時)のうち373人中、248人が1984年以降に生まれた選手たちであった。これは1984年以降に生まれた選手はゆとり教育を受けていた世代であった。その割合は、66%を超えており、まさに3人に2人はゆとり世代であったのだ。彼らはいわゆる「ゆとり教育」が本格的に導入される1990 年代半ばに中学校での教育を受けている。

日本の社会に適した人間、いわゆる『よきサラリーマン』を教育する日本の育成システムは、戦後の負け面を指摘されるようになった。その結果、国を挙げて、自由・自立・自己責任をモットーとする個性重視の教育が行われるようになった。これがゆとり教育の始まりであり、1990年半ば以降、学校では個性化、自由化が重点に置かれた教育が行われるようになった。

教育社会学者の刈谷剛彦はこのような教育現場のシフトチェンジの中、生徒への押し付けや強制は否定されたという。その結果、本来学校教育の現場で問題視されるドロップアウトが指導の俎上に乗りにくくなり、生徒を自己満足、自己肯定へと誘うメカニズムが確立されたのだという。実際の進路指導でも、生徒の選択を優先し、夢や希望を捨てさせないことが基本方針とされるようになり、保護者側からも「わが子には好きなことをさせてあげたい。」という声が強くなった。がむしゃらに働くことが美徳化された高度経済成長期を過ごした彼らは、そういう自分たちの半生に疑問を抱くようになっていた。その結果、やりたいことをたてに若者が職業選択の先延ばしを可能にする状況が出現した。 [石原, 2015, ページ: 89]より引用

 その結果、学生時代に芽が出なかった選手が高校や大学卒業後に独立リーグで野球をする選手が増えてきたのである。社会人企業チームの減少の効果もあり、野球のプレー続行の受け入れ口として選手を受け入れ、独自のプロ野球として発展させた結果、現在の球団増加や選手数の増加に伴い球団が増えていっている。

第2章 野球界における名門校とは

 この2章では名門校を定義する。3章でもあるが、野球カテゴリー別名門校出身割合の調査にもつなげていく重要な内容になっている。


2-1 名門校の定義

名門校の定義は [横尾, 2009]こちらの本を参考に定義していく。名門校は強豪校と類似する意味を持つが、両者は全く異なるものだと紹介されている。

優秀な選手を集めれば、比較的容易に強豪にはなれる。一方で名門校とはチームが直面した多くの危機を乗り越えた過去が無ければ名乗ることはできないとしている。 [横尾, 2009, ページ: 162]

また実用日本語表現辞典には

学業やスポーツの実績、歴史などから、優秀であると世間に知られている教育機関を意味する表現 [実用日本語表現辞典, 2021]

だと記されている。

このように名門校と名乗れるには長い歴史と世間からもその高校が野球の分野で秀でていると世間から広く知られていることが条件だと私は解釈し、この言葉を引用して名門校と定義することとした。

一方で名門校と似た意味の古豪と呼ばれる高校は名前の通り名門校には入らないと解釈している。古豪の言葉の意味は、

古豪の意味は競技などで、経験が豊富で力のある人や集団。古強者 (ふるつわもの) [goo, 2021]

されている。つまり昔は強かったとされる高校のことを示している。よく古豪復活となるか?表現されることが多く、最近は勝ち悩んでいるチームとしている。このような高校は名門校にはふさわしくないとし、今回の調査から名門校にふさわしくないとしている。昔も今も勝ち続ける高校に対して古豪と呼ぶことはなく、名門校だと呼ばれるからである。


2-2 名門高校の判断基準

私は独立リーグで野球をやっている選手の高校時代や大学時代で名門校と呼ばれる高校や大学で野球をやって選手がいたのかどうか調査した。名門校と呼ばれるチームは名門校の定義でも記したように、長い歴史と世間からも優秀であると広くその高校の名前が知れ渡っていることが名門校の定義だとした。しかし、野球の名門校を名指しで断定している記事もあるが、なぜその高校が名門校だと呼ばれるのか判断材料というものは存在しなかった。やはり名門校と呼ばれる高校は1度だけ目立つのではなく、長い間甲子園に出場し続けそこで勝ちを積み重ねていき、社会や世間から知られ名門校だと印象付けられていくからである。そこで今回の名門校の判断基準は、高校の場合2021年から10年間で甲子園出場が5回以上で春夏通算10回以上甲子園に出場したことがあるチームだと仮定した。その理由は、プロ野球選手の平均寿命は29歳だ。 [東洋経済オンライン, 2021]つまり10年もしくは5年前には高校生だったわけだ。10年前や5年前からも甲子園出場を積み重無ければこの5回という数字にはたどり着けない。

また名門校の定義に長い歴史が必要だと定義した。そのことを踏まえ、春夏合わせて10回以上の甲子園出場も付け加えた。甲子園に出られる高校の割合は3890校 [公益財団法人 日本高等学校野球連盟, 2021]あり、春の選抜甲子園の枠は32校、夏の甲子園は49校としている。その甲子園に出場できる確率は0.01%なのである。その低確率の中10回以上の甲子園出場は長い年月と圧倒的強さが必要だということがわかる。したがって、今回は10年間で5回以上と春夏合わせて10回以上の甲子園出場を名門校の判断基準とする。


2-4 名門大学の判断基準

また大学に関しては、東京6大学野球と東都大学リーグに10年間で1度でも1部に昇格したことがあるチームに限定した。理由は東京の大学野球はレベルが高く、名門校と呼ぶのにふさわしいからである。特に東京六大学野球は、90年以上の歴史があり、大学野球の聖地明治神宮野球場で毎試合リーグ戦を行う。また全日本大学野球選手権大会では、東京六大学の優勝回数27回、東都大学野球の優勝回数24回と3番目に多い関西学生の6回を圧倒しており、ここ10年の優勝回数でも東京六大学の5回と2位の東都大学の1回(他4校)を圧倒している。

また秋の大学野球の全国大会では出場枠が少ないのだが、各地区のリーグ戦で優勝したチームが全国大会に出場できる春の全国大会とは違い、各地区で優勝したチームが近隣のリーグとも対戦し方チームが全国大会に出場できるのである。しかし東京六大学と東都大学野球だけ、そのリーグ戦で優勝したチームが出場できる。大会では第一シードが必ず振り当てられる。このようにレベルも高く、長い歴史も持ち圧倒的強さを誇ることから、この2つのリーグに所属する大学は名門校と判断した。




2-5 この研究で名門校と定義した高校の一覧

以下の高校は春夏通算10回以上の甲子園出場と近年10年間で5回以上甲子園に出場した高校である。(2021年11月9日現在)これらの高校を名門校とする。


2-6 この研究で名門大学と定義した大学の一覧

以下は東京六大学と10年以内に東都大学野球リーグの1部に所属したことのある大学名である。(2021年11月9日現在)


これら高校45校、16大学を名門校と指定する。次の章では各カテゴリー別野球選手の名門校に所属する野球選手の割合を出していく。名門校は以上で指定した高校として調査する。

2-6 調査結果の注意点

私はこの高校、大学を含め51校を名門校と指定した。その中で、独立リーグやプロ野球選手の中の外国人と独立リーグの練習生、プロ野球の育成選手は含めないとしている。外国人の選手はどこが名門の高校であるか不明な点と練習生や育成選手はまだこのチームの中で戦力してみられていないためである。プロ野球の育成選手は背番号が三桁で、支配下登録されるまで1軍に上がることができない。また、独立リーグの練習生も無給でチームに属している。そのためプロ野球の育成選手は戦力として見られていない点。独立リーグの練習生は無給でチームに属している点でチームからこの調査対象の選手から除外した。

 高校生についても2020年には選抜高校野球大会の中止や2020年には夏の甲子園大会が中止された。しかし2019年に秋の大会を勝ち抜き甲子園出場が内定していたチームは甲子園に出場したことにしている。したがって甲子園出場回数にカウントしている。また夏の甲子園も中止になったが、独自大会を勝ち抜き優勝した高校についても甲子園に出場したこととしてカウントしている。



第3章 各野球カテゴリー別名門校出身者の割合

 3章では2章で定義した名門校を名門校と本論文で仮定し、野球カテゴリー別名門校出身割合を調査していく。

私はスコアラーとしてアルバイトを四国アイランドリーグplusでスコアを書いていた。そこでの疑問点の1つに聞いたこのない高校名や大学名の選手が多いということにある。

かつてプロ野球選手に進んだ選手の大半は学生時代から注目されるスターであった。例えば、野球を知らない人も知っているイチローは愛知県の名門高校、愛工大名電高校出身である。またメジャーリーグで世界一のチームでプレーしワールドシリーズでMVPを獲得した松井秀喜も石川県の名門星稜高校出身である。高校時代の甲子園での5打席連続敬遠は社会現象とも呼ばれるくらいの注目があった。今年現役引退を表明した松坂大輔も平成の怪物として世間知られており、2年連続WBC(ワールドベースボールクラシック)でMVPを獲得し日本を2年連続で優勝に導く活躍を見せた。一方で高校時代は名門横浜高校でエースとして活躍し、彼は3年時の公式戦で1度も負けなかった。つまりすべての大会で優勝したのである。このようにスーパースターに限らずともプロ野球界に進む選手は高校や大学時代に名門校を経由しているケースが多い。

しかし独立リーガーは名門校でプレーした経験のある選手が少ない。この章で検証する。


3-1 独立リーガーの名門校出身割合

図 2 独立リーガーの名門校出身割合

[愛媛マンダリンパイレーツ, 2021] [徳島インディゴソックス, 2021] [香川オリーブガイナーズ, 2021] [高知ファイティングドッグス, 2021] [福島レッドホープス, 2021] [茨城アストロプラネッツ, 2021] [栃木ゴールデンブレーブス, 2021] [武蔵ヒートベアーズ, 日付不明] [神奈川フューチャードリームズ, 2021] [群馬ダイヤモンドぺガサス, 日付不明] [新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ, 2021] [信濃グランセローズ, 日付不明] [富山GRNサンダーバーズ, 日付不明] [石川ミリオンスターズ, 日付不明] [福井ワイルドラプターズ, 日付不明] [オセアン滋賀ブラックス, 2021]


2021年10/27日現在の四国アイランドリーグplusとBCリーグの選手たちの名門校の割合である。選手の全体人数は、408名で、高校時代名門校で過ごした選手数は、49名、大学時代に名門校過ごした選手数は37名。その中で高校時代と大学時代にも名門校で過ごした選手数は10名だった。高校や大学時代に名門校で野球をやったことない選手が全体の8割近く、その選手数は332名であった。


3-2 2021年都市対抗出場選手の名門校出身割合

図 3都市対抗出場選手名門校出身割合

[Honda硬式野球部, 2021] [JR東日本東北野球部, 日付不明] [エイジェック硬式野球部, 2021] [NTT西日本, 日付不明] [西濃運輸, 2021] [日本製鉄, 2021] [北海道ガス, 2021] [セガサミー野球部, 2021] [Honda熊本 硬式野球部, 日付不明] [JR東日本野球部, 日付不明] [ 伯和ビクトリーズ硬式野球部 , 日付不明] [四国銀行野球部, 日付不明] [三菱重工East硬式野球部, 日付不明] [東邦ガス硬式野球部, 2021] [ヤマハ野球部, 2021] [日立製作所野球部, 日付不明] [ENEOS野球部, 2021] [一球速報, 2021] [日本通運スポーツサイト, 2021] [Panasonic, 日付不明] [東京ガス硬式野球部, 2021] [ミキハウス, 2021] [三菱自動車倉敷, 日付不明] [三菱重工, 日付不明] [JFE東日本硬式野球部, 日付不明] [東海REXホームページ, 2021] [伏木海陸運送株式会社, 2021] [大阪ガス 硬式野球部 , 日付不明] [NTT東日本, 日付不明] [トヨタ自動車硬式野球部, 2021] [TDK硬式野球部, 日付不明] [西部ガス硬式野球部, 2021] [公益財団法人 日本野球連盟, 2021]


このデータは2021年に都市対抗野球に出場する企業チームの野球部の名門校出身割合である。全体で868人野球部に所属しており、その中で名門校に所属していた選手は406名である。高校時代に名門校に所属した選手は、243名、大学時代に名門に所属した選手は、261名。その中で高校大学ともに名門校で野球をした選手は98名であった。名門校かそれ以外かの割合でみると、52%は名門校での野球経験があるということにある。

この中で特に面白いと思ったデータは待遇がいい大企業の社会人野球チームほど野球エリートが多かったということである。

[東洋経済新報社, 2021]JR東日本は東日本旅客鉄道、NTT東日本は日本電信電話から平均年収を引用。※小数点第3切り捨て
 これは今年の都市対抗野球大会に出場するチームの名門校出身割合が高かったチームのランキングである。これらの企業は東証一部に上場しており、平均年収も日本人の平均年収の461万円 [国税庁, 2021]を大きく上回っている。このように大きな安定した企業は名門校出身の野球選手が特に多かったのである。

一方で2021年の都市対抗野球大会で名門校出身の選手が最も割合が少なかったチームは以下のようになっている。

[東洋経済新報社, 2021] [ライトハウス, 2021] [年収マスター, 2021]三菱倉敷自動車オーシャンズは三菱自動車、新日鉄住金東海REXは日本製鉄より平均年収を引用。


伯和ビクトリーズは平均年収が最も低かった。他にも名門校出身の選手が最も少なかったチームであった。また三菱倉敷自動車オーシャンズは母体こそ三菱財閥で大きく年収も高い。他にも名門校の割合がワースト3位の伏木海陸運送も名門出身者の割合が23%と低めだが、この数でも独立リーグの名門校出身割合(21%)の平均を超えている。また伯和ビクトリーズ以外の企業やチームの平均年収は独立リーグの平均年収と日本人の平均年収を上回っていた。企業で野球チームを持つ企業は日本の平均年収を上回るような大きな会社であることがわかる。他にも待遇が悪いチームには名門校出身者の野球エリートは少なくなっている傾向があるということもこのデータを見ればわかる。


3-3 都市対抗野球補強選手の名門校出身割合

図 4都市対抗出場補強選手名門校出身割合

[球歴.com, 2021]

都市対抗野球には、代表になれなかったチームから選手を都市ごとに各チーム3名ずつ補強できるシステムがある。名前の通り都市対抗であるからである。その補強選手で補強された選手の名門校出身割合はこのようになっている。補強選手全体で89名が高校時代に名門校所属選手は21名、名門大学出身選手は36名、高校大学ともに名門校出資の選手は、11名であった。半分以上は名門校出身の選手であった。このように3名という限られた中の少ない補強選手であるが、名門校出身選手が選ばれる割合が高い。このように名門校出身の選手はレベルが高いことが伺える。


3-4 プロ野球選手の名門校出身割合

図 5プロ野球選手名門校出身割合

[東京ヤクルトスワローズ, 2021] [阪神タイガース, 2021] [読売巨人軍, 2021] [広島東洋カープ, 2021] [ドラゴンズ, 2021] [sportsnavi, 2021] [東北楽天ゴールデンイーグルス, 2021] [千葉ロッテマリーンズ, 2021] [オリックス・バファローズ, 2021] [福岡ソフトバンクホークス, 2021] [北海道日本ハムファイターズ, 2021] [埼玉西武ライオンズ, 2021]

このデータは2021年11月11日時点でのプロ野球選手の名門校出身割合の選手である。695名の中、名門高校で過ごした選手は332名、名門大学で過ごした選手は152名であった。両方に所属した野球エリートは52名であった。独立リーグ⇒社会人野球⇒プロ野球とレベルが上がるごとに名門校を卒業した選手が増えることがわかる。


3-5 このデータを見てわかること

この3つのデータを見てわかることは3つある。1つ目は、名門校出身の野球選手は高いレベルのところで野球をやれる確率が上がるということだ。プロ野球>社会人野球>独立リーグというレベルの順番で、名門校で過ごした選手の割合では、プロ野球68%、社会人野球52%、独立リーグ21%であった。このデータを見ることで、プロ野球選手になるためには、名門校出身であると確率的になりやすいということがわかる。


3-6 独立リーグが社会人野球よりレベルが低いと言える理由

私は独立リーグが社会人野球よりレベルが低いとしているがその理由は、JABA四国大会で一度も四国アイランドリーグのチームは予選を勝ち抜いたことが無いからである。四国アイランドリーグplusは現在最もプロ野球選手を輩出している独立リーグで、独立リーグの最高峰のレベルであるとされている。その独立リーグの球団が社会人野球チームに惨敗をしているからである。

[スポーツnewstar, 2021] [一球速報, 2021] [wikipedia, 2021]ウェブサイトより参照

このように2014年からこの大会に独立リーグの球団が初めて参加したが、結果は0勝3敗であった。2018年のデータを除き、現在対戦成績は3勝15敗であり、まさに独立リーグの球団は完敗を喫している。この結果を踏まえて、独立リーグの方が全体的に見てレベルが高いということができる。


第4章 名門校出身者が独立リーグに少ないのはなぜなのか

 4章では名門校の指導方法について [松井浩, 2018]と [横尾, 2009]を参考にするとともに、私の高校時代の実体験を元に解説していく。


4-1 監督自ら動き選手を獲得する

 [松井浩, 2018]を参考に解説する。いい選手を集めてくることだ。大阪桐蔭は名前の通り、大阪に学校があるだが、関西のみならず日本全国から選手をスカウトしている。監督が自ら動き選手を獲得するために面談や交渉をする。監督自ら動き選手をスカウトする名門校は少ない。その理由は現場(高校野球)の指導に名門校の監督は最も力を入れているからである。そのためスカウトを組織させ、選手の獲得を一任させることが当たり前なのである。しかし西谷は自ら動く。その結果、大阪桐蔭に合った選手や、西谷自身この人と野球がしたいという選手を獲得する。


4-2 西谷浩一監督の選手の選び方

西谷の判断基準は本物の野球好き。いわゆる野球バカを選ぶことだ。

本物の野球好きとは、努力感なく努力できる人のことである。他人からは頑張って見えても当人からは頑張っているという意識はない。ただ好きなことに打ち込んでいるだけなのである。好きなことに打ち込んでいるので、集中もでき、集中するから濃密な時間を過ごせるのである。また向上心も強ければ、技術や知識にも貪欲で色々な工夫を惜しまない。また全体練習が終わればこれからは趣味の時間となり、また野球に取り組む。このような選手を獲得することで西谷自身もモチベーション高く指導できるということになる。 [松井浩, 2018, ページ: 30]

自らが育てたい選手を自分の目で見て判断し獲得する。近年は甲子園での活躍は教え子のプロ野球での活躍も後押しし、よりいい選手や大阪桐蔭で野球をしたいという選手が集まってくる。この選手を自ら動き獲得することでより最強のチームになり、プロ野球に選手を送り込む好循環も生まれている。西谷の選手を選ぶ眼もレベルが高いことを示している。


4-3 徹底的個別指導

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