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春のこと(詩)


山がふちどる ちいさな町に

野焼きのけむりが ふたをして

あらま なんにもないみたい

家も 人も ないみたい

夢も うわさも ないみたい


山をくだる くねくね道も

とちゅうでパッタリきえていて

なにもしらない子どもがみたら

すだってまもないトンビがみたら

白い海に みえるだろう


だけど よくよく耳をすませば

白いかすみの ずっと下から

ふつふつ 音がわいてくる

木々のざわめき 川のせせらぎ

まどをガラリとあける音

小鳥のさえずり つらなるクシャミ

おおきな ちいさな 話し声


白いかすみの ずっと下

目を閉じ 色をつけてみる

うれしいことにも かなしいことにも

たぎるおもいや しずかなうたにも


そうして 春は 春になる

ゆっくり のんびり 春になる

はっきり きっぱり 春になる

春は つたない子どものあんよ

いつしか しずかにほほえむ先生

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