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ひいじいちゃんと、わたし(詩)


棺桶の窓は一晩中
ずっとずっと開けっ放しで
ひいじいちゃんが 白と青

冷たい畳に 冷たい果実
冷たい匣に 冷たいじいちゃん
あたたかいのは わたしだけ

絶えず焚かれる線香の
ざらつく煙に沈む部屋
白い水底 白い森
明日旅立つじいちゃんと
白い世界にふたりきり

じいちゃんは青いくちびる動かし
毛糸のような声で編む
"行ってくるよ、ありがとさん"

わたしはたまらず じいちゃんに触れ
声にならない声を出す
"行ってらっしゃい、またいつか"

わたしは さらにあたたかくなる
ひとすじ ふたすじ ながれる涙で
わたしはどんどん あたたかくなる

生きると死ぬを分かつとき
生きると死ぬは ひととき交わる

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