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歩く魚(詩)


かつて海をすてた僕たちは
数々の痛みをこえて
あしを手に入れ
ことばをつくり
愛を学んで
街をつくった

かつて海をすてた僕たちは
数々の痛みをこらえ
エラを失くし
ひれを落とし
お互いの目をみて
苦しみを知った

時々こう思うことがある
僕たちは海から離れ
かたい地面を踏み
影をつくって歩くけれど
結局はあしが生えてしまった魚ではあるまいかと

だからこんなにも苦しいのではあるまいかと
だからこんなにももがくのではなかろうかと

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