見出し画像

この街(詩)


あの月は
昔に死んだ誰かの骨でできていて
星屑は
そのとき流れた涙の塩の結晶です

それらが照らすこの街で
罪という名の他人の荷物と
罰という名の他人の悦を
ガラガラ引いて 皆歩くのです

黒煙を吐き出す工場で
おびただしい数の人影が
休む間もなく勤しんで
ゴム製の胃袋を造り続けますが

それでもいつかは口を失い
爪も瞳も背骨も失い 影すら失い
風が荒野を吹き抜けるのです

嗚呼、美しきこの街よ
いまはまだ忙しきこの街よ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?