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鳥小屋(詩)


白樺の木 斜めにかかったちいさな鳥小屋
鳥小屋の中は暗くて空っぽ
ある春の日にシジュウカラがやってきて
いつの間にやら棲みついた

雛鳥 ぴいぴい鳴きどおし
親鳥 しきりに餌はこぶ
鳥小屋いつもコトコト コトコト
晴れた日も コトコト
雨の日も コトコト
霧の朝も コトコト
月の夜も コトコト

そのうち 親鳥見なくなり
雛鳥の声もぱったり途絶えて
鳥小屋からのコトコトは
風がゆすった コトコトに
トカゲが這った コトコトに
気のせいだった コトコトに
あの日の余韻の コトコトに

白樺の木 斜めにかかったちいさな鳥小屋
鳥小屋は宙に浮いた過去
あの春の日にシジュウカラが来たせいで
丸い入り口 前よりずっと暗くみえた

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