セラピーの鍵は、今、ここでの面接関係の中に生起している


いわゆる「#境界型パーソナリティ障害」と見える人に、治療者との関係性の「二次被害」によってこじれさせたれたケースが少なくないという私の見解は、専門家には議論を呼ぶかと思いますが、実は #中井久夫 先生の論考にあります。 「治療にロマンを求めるなかれ」

患者さんを自由連想や催眠によって「退行」させ、「抑圧」された幼児期の体験を想起させないと治療にならないという考え方は危険ですらあると私は思っています。むしろ「今、現在の」治療者との関係性の中で生起しているものを取り扱っていく。これは精神分析でも「対人関係学派」はそういう見地です。

「対人関係学派」とは「対象関係学派」と混同されかねないのですが、アメリカのサリヴァン、クララ・トンプソン、フロム=ライヒマンらの実践を元に発展してきた展開です。

対人関係学派の見地に立てば、セラピーでわざわざ人を「退行」させ、幼児期に引き戻してそこから成熟した人格を「再構築」するなんていうのは、非常に操作的な、危険を犯すやり方ということになります。目の前のクライエントさんとの関係性の中で生じてくるモヤモヤしたものに、すでに糸口があると。

これは、もとをたどれば、サリヴァンの「関与しながらの観察」という見地にさかのぼることができます。このサリヴァンの有名な概念、独り歩きして理解されがちで、本来の含蓄は結構知られていないような・・・

手前味噌になりますが、私の、現場カウンセリングにおける方法論のベースラインは、カウンセラー自身が、面接場面のただ中で、クライエントさんを前にして、自分の中に生じてくる漠然とした曖昧なモヤモヤとした感じ(フェルトセンス)に注意を向け、まずはそれと無理なく自分の中で一緒にいられる内的関係を作り、「そこ」からクライエントさんに何を語るかを慎重に吟味していくというものです。

これについては学会発表もしていますが、私が編著した、「現代のエスプリ」でも詳しく述べさせていただいています。

これは、「治療者の逆転移の活用」ということになり、対人関係学派に限らず、現代精神分析で、かなり多くの専門家が重視している見地です。


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