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あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

「心が叫びたがってるんだ。」「空の青さを知る人よ」の方を先に観てしまったが、監督:長井龍雪、脚本:岡田麿里、作画監督:田中将賀による、今から10年前、2011年のTVシリーズアニメ。

「エヴァンゲリオン」以降のアニメは、「まどか☆マギカ」「化物語」「輪るピングドラム」そして新海誠作品、細田守作品を除き、特に深夜TVシリーズアニメに関しては無知に近い私にも、早くからその名前だけは届き、傑作と誉れ高いことは知っていたが、やっと実際に観ることができた。

ストリーミング配信の時代に入り、実質タダで全編観ることができる時代になっていたのは、嬉しいことである。

TVシリーズアニメの長丁場でもあり、観るのに少しパワーがいるかと身構えたが、一話一話があっという間に過ぎさり、さわやかな気持ちで観ることができた。

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高校生になったじんたんのもとに、子供時代に一緒だっためんまが居候しているところから、何の説明もなしに物語ははじまる。

めんまはのしかかってくれば重く感じ、食べ物も食べ、作るくらいの存在である。

しかし、普通の存在でないことが、徐々に暗示される。

めんまの姿は、じんたんにしか見えないのだ。

めんまは、子供時代、じんたん、あなる、ゆきあつ、つるこ、ぽっぽと共に、森の中の廃屋を「秘密基地」にして、「超平和パスターズ」を結成している一員だった。

しかし、めんまに対するじんたんの気持ちを確かめようとして、じんたんが「嫌いだ」といい、めんまが後を追ったのが、めんまの生前の最後の姿となった。

(めんまの死因は、さり気なく暗示されているに過ぎない)

じんたんは、ずっと不登校を続けている。宿題なとを届けるのは同じ高校に進んだあなる。

しかし、他の皆は違う道を歩んでいた。

ゆきあつとつるこは同じ進学校に進み、周囲から見れば、一見つきあっているかのような関係にある。

ぽっぽは高校を辞め海外放浪の旅を繰り返していた。

しかし、めんまがじんたんのもとに居ついたことをきっかけにして、5人の間に、徐々に人間関係が回復されてくる。

5人の間には、複雑な人間関係の綾があることが徐々に発覚してくる。

最初めんまが、見えないだけで、そこに確かに実在することを信じたのはぽっぽだけだったが・・・・

結局、物語は、めんまの「願い」をいかにかなえるかという方向に収束するのだが、それにつれてじんたんたち5人の間には、関係のもつれ、傷つけ合いも増幅する。

それがいかに収束されていくか、その過程で5人の中に子供時代にどのような感情が渦巻いていたかも暴露されていくのも本作品のみどころであるが、物語大詰めに至り、更に一捻りがあり、物凄く盛り上がるのが見どころでもあろう。

このへんでネタバレは終わり。

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非常に緻密に構成された脚本だと思う。5人の間にある関係の綾とそのぶつかり合い、変化の様子が、丁寧に描かれていく。

ある意味では実写作品としても十分通用する物語である(実際、実写映画版も作られたらしい)。

しかし、特にめんまの存在が、他のキャラクターより少し、よりアニメチックなキャラデザになっているからこそ、生臭くならないのだと思う。

近年の若者向けアニメ作品では、家族、特に親の存在がほとんど描かれないことがままあるが、めんまとじんたんの家族も、しっかり物語に絡めせられている点も評価すべきだろう。

いずれにしても、アニメ的にみれば地味ともいえる物語展開で、ここまで観る人間をひきつけてやまないのは、たいしたことであり、この作品が、未だに秀作として愛され続けているのもむべなるかなと思う。

ちなみに、脚本の岡田麿里氏自身が、不登校経験者であることは、後でWikipediaで調べて知った。


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