ウマ娘の精神分析 第6章 グラスワンダー -ほのぼのと柔らかいが、芯の強さを秘めた帰国子女-


  
 
 
●実在馬
 
サラブレッド オス 栗毛
 
1995年2月18日-存命中(2022年1月現在)
 
両親ともアメリカの良血馬で、グラスワンダーはアメリカで日本人によってせり落とされます。
 
最初から、筋肉のつきがいい、動きのいい馬との評価を受け、2歳馬の有望株とみなされます。
 
新馬戦から4連勝で4戦めにはGIを初制覇。当初マイル戦線で、外国産馬でもあっため、マルゼンスキー(第5章)を思い起こさせ、「怪物2世」と呼ばれました。
 
1995年生まれは、エルコンドルパサー、スペシャルウイーク、セイウンスカイらも輩出し、「黄金世代」とも呼ばれます。
 
骨折による長期休養後、有馬記念でセイウンスカイを押さえ優勝。外国産馬による有馬記念優勝は史上初、7戦目での優勝は史上最短でした。
 
翌年の宝塚記念ではスペシャルウイークと初対戦して優勝。
 
2回めの有馬記念でもスペシャルウイークをおさえて優勝。フランスで活躍していたエルコンドルパサーにこそ年度代表馬の座は奪われましたが、スペシャルウイークとともに特別賞を受けています。
 
しかし、その後は敗戦が続き、骨折を期に引退します。
 
長い種馬生活の中でGI.GIIを含む数多くの勝ち馬を生みました。
 
2020年には種馬も引退し、余生を送っています。
 
穏やかな落ち着いた馬で、むしろ穏やかな時ほど気合が入っているとの見方もされていました。
 
通算成績:15戦9勝 2着1回 3着0回
 
騎手は最後の1戦を除いて的場均。
 
 
●ゲーム・アニメの声:前田玲奈
 
 
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さらさらとした栗色の髪。白地に青のセーラー服ふうの勝負服。
 
おしとやかでもの柔らかで礼儀正しい印象を与えます。
 
両親のアメリカ勤務時代に生まれ、アメリカで育ちました。
 
両親は根っからの日本びいきで、子供時代のグラスワンダーも自然と日本風のものに興味を抱くようになり、アメリカにも先生がいたから、自分から茶道・華道・書道・日本舞踊、そしてなぎなたまでたしなむようになります。
 
そうした修行から、礼節、まごころ、思いやりを学びます。「まだまだ至らぬところもありますが」と謙虚ですが、とっさの冷静な判断を、実行に移す力もあります。
 

トレーナーの間では、おだやかすぎて闘争心に欠け、勝負向きの性格ではないのではないかという噂が立っていました。
 
実は、自分の意志で走るのを決めた以上、いついかなる時も勝利を譲ってはならず、自分の修練でそれを勝ち取るまではトレーナー契約を結ばないことにしていました。
 
揺ずれない部分は譲れない。一度決めたことは変えない、妥協しない。
 
 自分が納得行くように調整しないと気がすまないタイプなので、無茶をしないように見守る姿勢がトレーナーには必要となります。
 
同室のエルコンドルパサーとは親友でありライバル。スペシャルウイークやセイウンスカイともそういう関係にあります。
 
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外国生まれのウマ娘の中で、エルコンドルパサーやタイキシャトルが、カタコトをしゃべる「外国人(外国ウマ娘?)」として描かれているのに対して、グラスワンダーはあくまでもアメリカ生まれ、アメリカ育ちの大和撫子として設定されています。
 
海外勤務となった日本人は、得てして、現地に溶け込むというより、日本人のコミュニティーの中でのライフスタイルを好みます。グラスワンダーの家庭はその典型ということになりますが、日本からの留学生にアメリカかぶれしてしまうケースも少なくないのとは正反対に、多くの日本人以上に日本的となってしまう場合もあるのですね。
 
これは生粋の外国生まれの人物が日本で暮らすようになった場合にも少なからずみられ、古くは小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)、近年ではドナルド・キーンのように、文章だけ読んでいると、外国人だと思えないくらいに日本人的感性を理解している、日本語に堪能な文学者なども出てくることになります。
 
そうした人たちの日本観は、時として理想化され過ぎているとも言われますが、日本人のこころを慰めるものであることも確かでしょう。
 
クラスワンダーには、周囲の空気を読んで迎合するといった、いわゆる「日本的」とされる対人関係様式とは一線を画しているところがあります。むしろこだわりが強く、おのれを譲らないタイプです。
 
こうした側面は、実はアメリカの個人主義的風土とも無縁でなかったことも影響しているのかもしれませんが、本来日本人の中にも備わっていたはずの美質なのではないかとも考えさせられます。

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