ウマ娘の精神分析 第11章 スーパークリーク -「思いっきり甘えてくださいね。いいこいいこ」-
●実在馬
サラブレッド オス 鹿毛
1985年5月27日 - 2010年8月29日
北海道門別町に生まれます。
5戦目より、当時18歳の武豊が騎乗することとなります。
菊花賞で、人馬ともに初のGI勝利。武は史上最年少でのクラシック勝利(19歳8か月)となりました。
その後天皇賞秋・春を共に武豊騎乗で制覇。
ライバルはオグリキャップとタマモクロス。共に1勝1敗。
「武豊を育てた馬」と呼ばれ、武自身も、思い出深い馬と回顧しています。
通算成績:16戦8勝 2着2回 3着2回
●ゲームの声:優木かな
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茶色の長い髪。ベージュのセーターに水色基調勝負服。青いかばんを首から下げていますが、その中身は、誰か他のウマ娘が怪我をした際の救急用具です。
とても怒りそうにない、やさしげなまなざしです。
相手の年齢に関係なく、「いっぱい甘やかしてあげますね。いいこいいこ」と頭をなでようとします。このセリフはゲームをする人の間ではあまりにも有名ですね。
子供時代、両親は託児所を営み、たくさんの子どもたちに囲まれて育ちました。
特に親に頼まれたわけでもないのに、子どもたちの世話をすることをあたりまえのこととして育ちます。
「自分は人に甘えようとしたことがない」と彼女はいいます。
両親からは「手のかからない子だった」と言われていたそうです。
育成し、指導する立場のはずのトレーナーの方が、「甘やかしてあげますね。いいこいいこ」と頭をなでられようとするのですから、逆転した、何とも奇妙な関係となります。
彼女は、自分がレースで成果を出して、立派なトレーナーへと「育成」するという意識でいるのです。
ただでさえ背の低いタマモクロスは、ことあることに「いいこいいこ」されようとするのを煙たがっています。学園一の大食いのオグリキャップは、繰り返してものすごい量の食事を作ってもらっています。
しかし、彼女が言う「甘やかす」ということには、ひとつの特徴があることに気がつきます。
それは、どんどん甘えてくる相手を甘やかすのではないことが多いということです。
むしろ甘えたくても甘えることができないでいる相手の気持ちを察して、自分の方から世話を焼くのです。
しかし、そうした「気の使いすぎ」で消耗してしまい、自分の実力を出せなくなっていることがむしろ自分の弱点であることに気づいていきます。
そして、「私を自分にふさわしいと思ったから、受けて立ってくれたんですよね?」
トレーナーを対等のパートナーとして、共に戦うという意識を持つようになります。
タマモクロスもオグリキャップも台頭してきて、幾度となくレースでしのぎをけずるようになります。
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先ほど述べたように、彼女の「甘やかし」は、相手を自分に依存させ、だめにしてしまう性質のものではありません。
人は、誰かに依存しないと生きていけないものです。成長とは、実は特定の誰かに依存する状態から、多くの人に少しずつ依存する「能力」へと切り替えていけるようになることとも言えます。
更に言えば、実は人を依存させ、世話する立場の人間も、そうやって世話することを生きがいとしているという点で、実は世話する相手に「依存」していることになるという逆説があります。
スーパークリークの場合もそうでしたが、そうやって人の世話をしたがる人間自身は、実は甘え下手、あるいは甘えさせてもらえなかった形で育っていることが多いものです。
これが自覚されないと、子供や生徒、そして私のようなカウンセラーで言えば相談に来る人を、自分の人形のように支配し、自分のイメージ通りに育たないと、無意識のうちにコントロールし、文字通り「いい子」に育てようとしてしまうのですね。
「いい子」に育ってしまうと、まわりには一応受け入れられ、期待される役割を果たせるかもしれませんが、そのことにより嫌なこと、無理なことをさせられることで苦しまねばならなくもなります。
そして、「いい子」でい過ぎると、ほんとうに心をひらく友だちもできにくいということになります。
ところが、スーパークリークの「いいこ、いいこ」という言葉には、「私にとっての『いい子』でいなさい」という意味合いはないのです。その相手が、その人なりに成長し、一人前になっていくのを「お手伝いし」、見守り、相手の喜びに共感し、「よくやったね」と褒めるというスタンスなのです。
いすれにしても、人を「甘やかす」、「母性のかたまり」というとらえ方をするだけでは、彼女の本質は見えて来ないと思います。