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【刺激的な言葉の壁】ナキニシモアラズと自転車用ヘルメット

「まァ…なくもないか」
「それ!」
「どれ?」
「その言い方よ!それ言われたらホンマ混乱する!わからん!どっちなん?ナシ?アリ?あるの?ないの?どっち?」
「大半ナシやけど、人によっては少数派でアリの人もいるか、個人的に私はナシやけどな、くらいのアリでほぼナシ」
「どっちなん結局?ナシ?アリ?」
「それは人による。90%前後ナシで10%前後アリくらいの割合じゃない?」
「ホンマわからんわ~その言い方!なくもない・あるわけでもない、どっちかわからんねん、あるのかないのか!」
曖昧表現で混乱する発達障害の民にとって言葉の壁になるナキニシモアラズ問題

我が息子(26)は自閉症スペクトラム障害で場面緘黙症のドモリであるが「無きにしも非ず」をバシッと理解したことがない。
ちょいちょい使われる表現だな~と漠然と知っている言葉ではあるが、真剣に理解しようと考え始めると混乱が生じるらしい。

そしてこの度、似たような混乱が生じる新たな現象が加わった。
それが自転車用ヘルメット問題

2023年4月から自転車のヘルメット着用が努力義務化され、帽子のように見えるヘルメットが売られているのを目にすることが多くなったことにより、新たなる課題となった言葉の壁である。

「ホンマに帽子に見えるもんやなァ…コレならヘルメットて思わんよな、帽子に見える」
ヘルメットに見えへん帽子てコトやんな?」
「なんで帽子にすんねん、ヘルメットて売ってんねんから物はヘルメットや。ヘルメットに見えへん帽子じゃなくて帽子に見えるヘルメットやねん」
「何が違うん?」
ヘルメットに見えへん帽子て言い方したら物は帽子として売ってることになるやんか、ヘルメットにもなる帽子じゃなくて帽子にもなるヘルメットのほうやねん、どっちかゆーたら。やから売り物はヘルメットじゃないとアカンわけよ、そしたら、帽子に見えるヘルメットて言えばいいやん?なんでヘルメットに見えない帽子て言っちゃうん?ヘルメットですけど?」
「どういうこと?物が違う?何か違う?」
「物は一緒や。一緒の物見てんねん、コレ。このヘルメットを見てるねん、

ふたりとも見てる物は一緒やん、コレしが見てないやん。コレ、ヘルメットやん、ヘルメットとして売ってるやんな?」
「ヘルメット売り場やで?」
「でもアンタは、ヘルメットに見えへん帽子て言ったやん」
「言ったで?」
「売り物が帽子になってるやんか」
「コレ帽子なん?」
「ヘルメットやがな、ヘルメット販売中やがな」
「やんな?」
「ヘルメットってことはわかってんのよな?もしかしてヘルメットわかってない?」
「わかってるわかってる。ヘルメットに見えへん帽子て、ヘルメットやんな?」
「だから~帽子てゆってるやんけ!アンタが!帽子で言い終えたら物は帽子やないかい。ヘルメットに見えへんとして物がヘルメットやったら『ヘルメットに見えへんヘルメット』て言うやろ?そしたら物はヘルメット!」

すこぶる帽子に見えることが表現をややこしくしてしまうヘルメット

「じゃ、ヘルメットに見えへん帽子て言ったら物は?」
「帽子!」
「え~…じゃぁ僕が言ったの何?」
「ヘルメットを、ヘルメットに見えない帽子て言った。それだと帽子になっちゃうねん、気持ちはわかるけどな『ヘルメットに見えへんな~帽子に見えるな~』て思ったんやろ?やったら残すのは「見えへん」のほうじゃなくて「見える」のほうじゃないとヘルメットにならんやん?」
「そういう時、なんて言うって?」
「帽子に見えるヘルメット」
帽子に見えるヘルメットて、物は帽子なん?」
「ヘルメットよ!どんなヘルメットかを説明するのに帽子が出てきただけで物はヘルメットやんか。ヘルメットが帽子に見えるけどヘルメット売り場で買えるヘルメットやねん!」
「も~~~!物が何なのかわからんっ!」

トレーニングは続く。

「これヘルメットやんな?」

「ヘルメットやで」

「めっちゃ帽子に見えるけど~?帽子じゃなくて~?」

「ヘルメット」

「ハイ、どんなヘルメット?」

「ん~帽子に見えへんヘルメット
「だったら素直にヘルメットでええねん!帽子に見えてへんねやったらわざわざ帽子入れてくんなよ紛らわしい!」
「ちゃうちゃう…帽子に見えてる。ヘルメットに見えへんけど」

あ、わかった。
見える見えないで言おうとするから混乱すんねん。
さぁ発達障害の民たちよ、最近はやりの帽子のように見えるヘルメットのことは、こう言いたまえ。

「帽子っぽいヘルメット」

これで万事解決ではなかろうか。

#クリエイターフェス

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