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フルートデュオ リアン

2023年11月25日、静岡市の楽器店にあるホールに僕はフルートの演奏を観にやってきた。
いつまでも暑さが残る天候も下がり、小旅行に履いてきた足下のブーツを見ながら、リハーサルが始まる時間を会場のホールの待合室の椅子に腰掛けて待っていた。そこに聞き覚えのある声がする方向に向かうと、出演者や観客が既に中に居て、リハーサルの様子を拝見する貴重な機会を得た。

正直言うとフルートについては、ライブで観ることもほとんどなくて、銀座スウィングで今年になってようやく酒井麻生代さんの演奏でフルートの演奏を観たくらい。しかもそれだってジャズだから、フルートという楽器全体からすると変化球というところかもしれない。

フルートデュオ リアンは、静岡県を拠点にしたフルート奏者ともこさんとのりこさん2人のユニットで、アニメ〜映画音楽〜クラシックとジャンルを超えた楽曲を同じくらいのあんばいで演奏をしていて、動画やSNSを通じて知った。
特に選曲とアンサンブルに特徴があって、ノスタルジックで美しい旋律を奏でることにおいては、比類のないミュージシャンではないかと僕は確信している。

坂本龍一さんが今年亡くなり、彼の自伝を読んでいた時に、『自分がドビュッシーの生まれ変わりだ』と坂本龍一さんが学生時代に思っていたくらいドビュッシーの音楽に影響を受けたというエピソードを読んだ。なるほど、確かに坂本龍一さんの音楽には美しくはかなさを感じる旋律がたびたび出てきて天賦の才能だと誰しもが思うけれど、ドビュッシーが居たから彼の音楽も開花したのだろう。

前置きが長くなってしまったが、演奏会について。曲目は休憩を挟んだ2部構成で、全18曲。
コンサートは、観客と一緒に作っていくものなのかもしれないと感じるような、聴く人それぞれの心に響き共鳴できる曲が並んでいたように思った。また、ペンライトによる観客席からのサプライズもあったりとユニークな場面もあった。
もしもリアンの音楽に出会わなかったなら、“Stand Alone”や“You Raise Me Up”“天使のくれた奇跡”を知ることはなかっただろうし、こんなにフルートの演奏を日々探して聴くことはなかっただろう。
昔から好きだった“Danny Boy”で知られた、“ロンドンデリーの歌”もリアンが演奏をしていて、そのアンサーソング的な雰囲気を持つ“You Raise Me Up”、それに“天使のくれた奇跡”は作曲家村松崇継さんの曲ということ。他にもムラマツさんは、“彼方の光”や、フルーティストが取り上げることが多い“Earth”や作詞の竹内まりやさんの歌うセルフカバーが有名な“いのちの歌”も作曲しているということを知るようになった。

そしてリアンと一緒に演奏をされていたピアノの足達理恵さん。3人によるこの日の演奏では、“人生のメリーゴーランド”のフルートアンサンブルと曲の終わり方、“戦場のメリークリスマス”のピアノの左手、“海の見える街”の変拍子と展開、“東風”ではのりこさんの目の覚めるようなフラッター、“アンダンテとロンド”の3人の音の重なりが特に記憶に残った。
しばらくこの余韻と振り返りを楽しみたいが、いつかまた生演奏を聴きたいと切に願っている。

曲目
第1部
1.天空の城ラピュタ(『天空の城ラピュタ』より)
2.人生のメリーゴーランド(『ハウルの動く城』より)
3.美女と野獣
4.A Whole New World
5.Stand Alone(『坂の上の雲』より)
6.戦場のメリークリスマス
7.海の見える街(『魔女の宅急便』より)
8.君をのせて(『天空の城ラピュタ』より)

第2部
1.東風
2.川の流れのように
3.愛の讃歌
4.Amazing Grace
5.月の光
6.G線上のアリア
7.You Raise Me Up
8.アンダンテとロンド

アンコール
1.天使のくれた奇跡
2 .Let It Go(『アナと雪の女王』より)

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