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感情労働を見える化したい…が

肉体労働は体を使う仕事

頭脳労働は頭を使う仕事

感情労働は心を使う仕事

だけど

もしかして感情労働って人に伝わりにくいのでは?と考える。

肉体労働

とってもイメージしやすい。

体を動かす=疲れる と、ほとんどの人が経験しているから。

物を運搬する仕事なら、進捗状況が一発でわかる。あと体を動かすと汗をかいたり、筋肉がついたり。

プロセス(例:汗)や結果(例:マッチョ)が客観的にわかりやすい。

頭脳労働

肉体労働に比べると、ややプロセスがわかりにくい。

ただ義務教育の中で培ってきた、頭を使う=勉強=嫌なもの というネガティブなイメージがある。

嫌なものに取り組む=疲れる という経験は大多数がしている。だからまだイメージしやすい。

あとなぜか頭脳労働してる人は「お前すごいな」と尊敬の眼差しで見られる傾向にあるので、結果は評価され易い気がする。まあ内容はどうあれ。

感情労働とは?

本題。

まず保健師をはじめ、対人援助職と呼ばれる職種において、感情労働は必須項目。また接客業など、お客さんにサービスを提供する仕事もそうだろう。

そもそも感情労働ってなんだ?となる。

自分が仕事をしている時を想像してみる。

どんなに「え?それは違うでしょ」とか「うわあその話、聞きたくない」とか「早く終わらないかなぁ…」と思っていたとしても、それを相手に悟られてはいけない。

かつ「それは大変ですね」など適当な相槌や、必要な情報の聞き取りをする。「ああああ!もうやだ!」と思っても、こんな奴になぜ支援をしなければならないんだ!と思う時だって、投げ出せない。

自分の素直な感情は、ひとまず横に置いておくところから、感情労働は始まっている。これが結構、心に負担がかかる。

Wikipediaで感情労働と調べる。

「感情の抑制や鈍麻、緊張、忍耐などが絶対的に必要」

な労働らしいですよ。感情労働って。抑制、鈍麻、緊張、忍耐  ってすごい心に悪そうなフレーズばかり。


感情労働は時間や回数で疲労度を示すことは難しい。時間や回数と、感情労働による疲労度は比例しないからだ。

たとえ5分でも自分の価値観に合わない、聞くに耐えない内容の話を聞かされれば、ストレスがかかる。

理解されにくい感情労働

こんなに大変な労働なのに、他の2つの労働に比べて理解されにくいのはなぜか。

プロセスと結果がわかりにくい点と、大変さをイメージしづらい点が要因にあると思う。

普段私達は、自分の価値観と大きく違わない人達と、時間を共にする場合が多いわけで。

聞きたくない話を聞かざるを得ない場面はゼロではないけど、ある程度避けたり、右から左に受け流せる。

ただ、これを仕事として相手にサービスを提供する場合はそうも言っていられない。

保健師の仕事の大半が感情労働であるのだが、問題はその仕事量を可視化できない部分だ。

相談件数や相談時間は可視化することができ、仕事の成果として事務職の上司や人事に報告できる。

もし感情労働も、数字や何かの指標で示せるようになれば…適正な人員配置に生かされるかもしれないし、保健師の地位向上につながるかもしれない。

じゃあどうしたらいいのだろう。

感情労働を見える化したい

そもそも感情労働は、経験しないことには大変さがイメージしにくい側面を持っている。

でも、もしや、感情労働を経験していても、大変さを自覚できていない人もいるのではないだろうか。

「なんで今日はこんなに疲れてるんだろう」と、感情労働による消耗に気がつかない時もある。自分の心や体に耳を傾けて、初めて「あ、自分、あの会話がすごくストレスだったんだ」と後出しで気づいた経験がないだろうか。

感情労働が経験済みの人にとっても、認知しにくい労働であるならば、そりゃ他人に仕事の大変さや重要性を説くことなんてできない。


そこで思い出したのがプロセスレコードと呼ばれるツールだ。

看護の勉強をした人は、馴染みがあるかもしれない。私がそのツールと出会ったのは、精神科領域の看護実習の時。

患者さんとの関わりを振り返る際に使うもので、精神領域実習の看護記録は、主にプロセスレコードだった。

①対象者から得た情報、知覚したこと

②自分は①を知覚してどう思ったか

③その結果、自分はどのような行動・発言をしたか

①から③を繰り返し記録する。

実習ではすべての会話を書き起こすのでは無く、自分が印象に残ったやりとりや、うまくいかなかった場面を切り取って書いていた。

例えば関わっているママさんがいつもと違う様子だった時

①保護者の表情が暗く、視線があいにくい
②いつもより表情が暗いな。何か落ち込むことでもあったのかな。それとも単に疲れてるだけ?
③〇〇さん、こんにちは。どうしました?いつもより元気がないみたいですけど…と声をかけた
①−2保護者はこちらに顔を向け「ああ、こんにちは」と返事を返してくれた。・・・・・

その時その時、自分が何を考え何を発言し、相手はどんな反応をしたのかを、客観的に振り返られる。

これを感情労働を他者に伝えるツールとして応用できないだろうか。

見える化したい、が。

じゃあ事務職の上司に「感情労働って本当はすごいエネルギー使うものなんですよ」とか「保健師だからこそできる技術なんですよ」とプロセスレコードを見せたところで、読んでもらえるのだろうか。

はっきり言って NO だと思う。

日常全ての支援をプロセスレコード化することは現実的でない。そしてそもそも押し付けがましく、記録を課内のトップまで回すことなどとても難しい。(記録を報告するのは、直属の保健師の上司だし)

かろうじて出来そうなのは、事例検討会等をおこなった記録を、回覧で上司にまで回すくらいだろうか。

ちなみに私の所属する自治体では、事例検討会を皆が嫌がり、年1回、かろうじてパフォーマンスで開催されるくらいだ。(検討すべき事例は山ほどあるのだけど)

求む、具体策

うーん、私の頭では、感情労働を見える化する具体的方法は出てこなかった…(出てこないんかーい)

私の仕事人生において、保健師の地位向上は切っても切り離せないテーマなので、これからも地道に考えていきたいと思っている。

もしこの記事を読んでくれた方で、感情労働を普段しない人がいたら「へえ、そんなに大変なんだな」と思いを馳せてもらえたら嬉しい。

もしこの記事を読んでくれた方で、感情労働を生業にしている人がいたら、ぜひ一緒に考えてもらいたい。