ゲーム・オブ・スローンズに学ぶ!ファンタジー作品に必要だと感じたもの

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2010年代を代表する実写ファンタージー巨編であるゲーム・オブ・スローンズ。

全8シーズンを完走したので今回はブロガーでもあり、物書きもしているボクがゲーム・オブ・スローンズから学んだファンタジー作品に必要なものをまとめてみました。

テーマ的にネタバレ要素満載になるのでまだ視聴していない人でネタバレが気になるという人は先にゲーム・オブ・スローンズを視聴する事をオススメします。

ファンタジーでありながら徹底的に突き詰めたリアルさ

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ゲーム・オブ・スローンズはジャンルで言えば間違いなくファンタジーな作品である事は間違いありません。その象徴たるドラゴンの存在を初め、現実では起こり得ない事も往々にして起こる。

とはいってもあれもこれもファンタジーというわけではないのが実写のファンタジー作品であるという点を考えても非常に大きい。どこか現実味があるのである。

ゲーム・オブ・スローンズに登場する兵器・武器の中で最強な物は?と言われたら間違いなくドラゴンだが、その次は?と聞かれたらモンゴル騎馬がモチーフだろう、ドスラク人の騎馬であり、ドラゴンを倒す際に利用されたスコーピオンと呼ばれる巨大弓である。どちらも史実において脚光を浴びた事がある事を鑑みても非常にリアルなバランスになっていると言える。史実においてモンゴル帝国はユーラシア大陸の広大な土地を支配しているが反面海戦は苦手で日本やイギリスまでは至っていない。ゲーム・オブ・スローンズのドスラク人はある種「モンゴル騎馬兵が島国に至ったら」という歴史IF的な物語とも言えるのではないかと思いながら見ていた。

またとある戦争では古代マケドニアのファランクス戦術から着想を得たような戦い方をするシーンが合ったり、特に戦闘面ではかなり現実に近い描写をしている場面が多いのが非常に印象的だった。

そしてこのリアルさを高い次元に押し上げているのがゲーム・オブ・スローンズの残虐的・性的な描写にあると言える。残虐的・性的な表現をここまで盛り込めるのはゲーム・オブ・スローンズが有料ケーブル放送で放送された事が大きな影響を持っていると言える。残虐性だけを取り上げても日本の地上波では絶対に放送できない。でも実際にそのような場面があったそうなるであろうと考えられる程のリアル。そんな描写がゲーム・オブ・スローンズには豊富に取り入れられていた。

リアルさという意味ではそれぞれの登場人物の感情と行動原理もリアルで明確な場面が多い。理性的に判断する場面もある一方で多くのシーンで理性と感情で感情を優先してしまう場面も目立つ。影響力の強い1人の感情が多くの者に反映されてしまう様などはまさにリアルな様が描かれている。

その代表例と言えるのがシーズン1のエダード・スタークの処刑ではないだろうか。反逆罪で囚われてしまったエダード・スタークは慣習的に言えば壁への追放処分になるはずで、実質的な執務を取り仕切るサーセイもその準備を進めていたあったが王になったジョフリーによって処刑にされてしまう。

仮にジョフリーが感情的にならずに慣習に従っていれば、エダード・スタークはもちろん、エダード・スタークの子供達や妻のキャトリン、シリーズ全体で見ればサーセイやジェイミー、ティリオンらラニスター家とそれに連なる者らにも全く違った運命が待っていたのではないかと考える事ができる。
紛れもないファンタジー作品でありながらもファンタジー要素は実の所フレーバー要素に近いと言える程のリアルさを持った作品、それがゲーム・オブ・スローンズの大きな特徴と言える。

SNSが普及した現在だからこその説明しない事の大切さ

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ゲーム・オブ・スローンズはファンタジー作品なので専門用語が非常に多い。国の名前やそれぞれの領地を治める領主家の名前、そこに至るまでの歴史など様々な要素が物語に絡んでくる。これらの専門用語や世界観などは通常の作品であればついついモノローグや登場人物に話させるような形で説明してしまいがちだがゲーム・オブ・スローンズでは一切そんな事をしない。

ゲーム・オブ・スローンズの物語において主な舞台となるのは「ウェスタロス」と呼ばれる大陸、或いは島国でウェスタロスは同時に「七王国」とも呼ばれたりする。これはかつてはこのウェスタロスに7つの王国が乱立していた頃の名残りであり、物語に登場する主要な領主もこの7つの王国がモチーフになっているように見受けられるが実際の位置関係についてはそれほど多くの説明はされない。オープニングにて俯瞰した地図こそ描かれているものの、作中では「遠い」「近い」のような曖昧な表現しかされていない。これがまた1つのリアルさにも繋がっているとも言える。

また作中のセリフ(あくまでも日本語翻訳されたもの)においてはいわゆる「察する」会話も非常に多い。実際に口にしてはいないが含みのある言い方をする、暗喩表現を用いている場面は表現に多い。これらは登場人物からすれば「立場的に直接的に口には出来ない」言葉なので濁している形なのだが視聴者視点からすると見ていて考えさせられる部分に繋がる。特にそれらのやりとりが多いのがティリオン・ヴァリス・ピーターの3人。作中でも特にキレ者といわれる3人の会話は非常に高度で暗喩のオンパレード。同時にこの3人は相手の意図を察する力も持ち合わせているので多くの情報をお互いに不利益が出ないように話す場面が非常に多い。

これらの要素は本来少なくとも視聴者には説明するべき場面も多いがゲーム・オブ・スローンズではそれをしない。ともすれば視聴者に不親切とも言える程に説明をしない。制作陣が視聴者に察する事を求めているのである。
しかしそれがゲーム・オブ・スローンズが成功した大きな要因だとも考えられる。ゲーム・オブ・スローンズが放送された2010年代は言ってしまえばSNSが爆発的に普及した年代でスマホの普及でTwitterやLINEなど常時、他者とやりとりできる場面が増えた。

そのような土台の上に乗ったゲーム・オブ・スローンズはこれらの不親切な部分が多くのファンによって解説、考察されるようになった。様々なコミュニティでの考察がさらなる盛り上がりを生み、作品全体としての盛り上がりにも繋がっているのだ。

敢えて説明しない作品というのはこれまでもあったがどうしてもニッチになりがちだった。だからこそ多くの作品、特に専門用語を作りがちなファンタジー作品ではどうしても説明をしてしまう。

ゲーム・オブ・スローンズはその流れを壊した1つの大きな作品になったのではないかと思う。

もちろん全ての作品に取り入れるべきではないかもしれないがゲーム・オブ・スローンズは元々その描写的にもターゲットの年齢層が高い。少なくとも子供向けではないのだからこうした視聴者の想像力をかきたてるような表現は大切になるのではないかと感じた。

群像劇のあるべき姿

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ゲーム・オブ・スローンズを知らない人に説明するのは非常に難しい。実際にボクも視聴していてわからなくなる場面は多々あった。

その大きな理由の1つがゲーム・オブ・スローンズが高度なレベルでの群像劇を体現しているからである。それぞれの登場人物にそれぞれの物語があり、歴史があり、立場があり主張がある。主人公が明確な作品であればその主人公の視点を軸に話ができるのだがゲーム・オブ・スローンズではそれが出来ない。誰を視点に物語を語っても情報が圧倒的に足らなくなり理解出来ないように感じた。

どうしても説明するなら本来ゲーム・オブ・スローンズでは察する部分である世界観等を話す事になるのであろうが、それはゲーム・オブ・スローンズ本来の楽しみとは離れているようにも思う。

物語的な大枠でいえば、
1.ロバート王の死に端を発する王位争奪戦
2.ホワイトウォーカーと対峙するナイツウォッチの戦い
3.デナーリスによるウェスタロス王位奪還の物語
の3つが絡み合った物語ではあるのだが、他にもアリアやブロンの冒険など長編のエピソードも多く、短い期間でも視点となっている登場人物を数えるとその数は両手では足りなくなる。

加えてゲーム・オブ・スローンズでは本当によく登場人物が死ぬ。びっくりするぐらい簡単に死ぬ。主要な人物かな?と思った登場人物があっさり死んだかと思えば意外な人物が生きていて再登場するような事もある。それだけ登場人物が多く、入れ替わりが頻繁に起こるのである。

しかもその死に様も驚くような死に様も多い。タイウィン・ラニスターやトメン・バラシオンの死に方などは個人的には想定外だった。どちらかと言えば倒される側ではあるので先々死ぬ可能性は十分に考えられたがその死に方は予想できないという死に方をしている。だからこそ誰かを視点にして物語を語る事は非常に難しい。どうしても誰か視点を選ぶのであれば全編に渡って登場する登場人物を選ぶ事になるのであろうが誰の視点にしても語れないエピソードは登場する。

王位争奪戦に絞って話すにしても関わっている者も多く権力者の入れ替わりも激しい。最初は一定の地位にあった者が転落する、地位がなかった者が権力者に気に入られて地位を得る。ゲーム・オブ・スローンズではそのような場面も非常に多い。同時に他者によって地位を剥奪される者もいれば、自らの意志で地位を捨てる者もいる。転落して終わり、権力を手に入れて終わりではないのである。

ゲーム・オブ・スローンズはウェスタロスを舞台とした歴史の中の1つの時期を切り出したような作品である。実際に放映中、放映終了後にも様々なメディアミックス作品で別の時代、ドラマでは過去の出来事として語られた物のピックアップが行われているのもゲーム・オブ・スローンズのこうした作りが関係しているのではないかと思う。

まとめ

創作をしているとついつい、そういった視点で見てしまう事から今回はゲーム・オブ・スローンズを視聴して感じた事をまとめてみました。

なんだか上手くまとまっている感じはしないんですけど、1つ言えるのは本当に面白い作品だったと言う事。

今回触れていない部分でもセリフの言い回しや人の感情などが細かく描かれている作品なのでドラマシリーズであり全8章もあるので非常に長い作品ではあったけど、ファンタジー好きで血生臭さに耐性があるのであればぜひ抑えて置きたい作品だと推したい。

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