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かけら

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ちいさなエッセイ
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#フィルム写真

ことりのこと

窓辺に大きなシマトネリコの木がある。 夏はたくさんの葉をつけて、ガラス窓いっぱいをおおう…

ひとひら

雨の日が好きだな、と思う。 年を追うごとに好きになっている。そのしずけさやおだやかさ、か…

春の雨

梅の花が咲きこぼれて、沈丁花のつぼみがふくらんでゆく。じきに咲く。 窓の外、降る雨を眺め…

そばにいる

目をさます時間が、すこしずつゆっくりになっている。秋が深まってゆくな、と思う。 たなびく…

初夏

新しい日々が流れてゆく。シャワーみたいに、肌を伝ってさらさら流れて洗われてゆく。 新しい…

楚々

寒い時期に咲く桜を、今年はたくさん見た。 職場にきれいな冬桜が咲いていて、朝、いつも見上…

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六月の花

姫沙羅という花がとても好きで、咲くのをずっと待っていた。 六月の初めころ、白くて小さな花をつける。 朝咲いて、夕方に散る一日花で、地面にもいくつも落花が咲いていた。 それよりすこし大きい夏椿も、とても好きで、そのやっぱり白い可憐な花を、この時期よく見にゆく。 雨のふる時期に咲くことを選んだその気持ちに、ふれようとしてもなかなか届かないまま、眺めている。 高校生のころ、ほんとうにつらいことがあると、よく目をとじていた。 お布団に入って暗がりのなかで目をとじていると、まぶ