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奴隷を捕えるために結成された米警察。この国で警察は誰のために存在する?

アメリカ全土でコロナウィルス感染者数が増え続けています。ここ2週間の新規感染者は89%増。木曜日には1日の新規感染者数が過去最高の5万5595人出ており、毎日5万人を超える感染者が出ている状況です。

今日は、例年であれば盛大に祝われるアメリカの独立記念日、July 4th(ジュライ・フォース、インデペンデンス・デイ)ですが、ほとんどのイベントがキャンセルになり、個人で集うことも控えるようにと言われています。今年は特に独立記念日を祝うことに違和感を持つ人も多く、歴史を振り返る日にしようという声が上がっていました。そんななか、大統領は大規模なイベントを強行開催し、自らも観客もノーマスク、ノーソーシャルディスタンシングで行いました。スピーチではパンデミックにはほとんど触れず、国の分断を助長するような発言や、大統領選での勝利を強調していました。大統領の言動が影響して、マスクをしないこと、ソーシャルディスタンシングを守らないことを政治的主張のひとつとして行う人も多く、それによる影響がこれからどれだけ出てくるのか心配です。

また、BLMの抗議デモが感染拡大の原因という報道する機関もあり、抗議デモへの参加が危険という印象を植え付けているようにも感じます。超党派の研究機関による調査では、感染拡大の原因を抗議デモと紐づけることは難しいというデータもあるので、私は、春休み中(デモが始まった5月末から約2週間は春休みだった)に家やバーなどの屋内で集まる人が増えたことが原因と考える説を支持しています。我が家も隔離生活は続けているとはいえ、気持ちが緩んできていたので、「うちはどこまでOK?」の基準をもう一度、家族で共有しました。

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前置きが長くなりました。今回は、アメリカ社会に組み込まれたアフリカ系アメリカ人への差別の中でも、特に根深い問題のひとつ、警察と彼らの関係にフォーカスします。この問題は、警察の成り立ちと深く関係しています。

最初にこれを聞いた時に耳を疑ったのですが、アメリカ南部の警察は、「逃げた奴隷を捕まえて雇い主に返すため」に作られ、その母体は白人至上主義団体であるとも言われているそうです。では、奴隷解放宣言の後、奴隷がいなくなったはずの国で彼らはどうやって「奴隷」を捕まえていたんでしょうか?

国が法律を変え、警察がアフリカ系アメリカ人を罪人として捕まえ、奴隷として働かせるシステムを作ったのです。

黒人奴隷制度の廃止は、憲法修正第13条(The 13th Amendment)の成立により表面的には成立しました。条項の内容は以下(Wikipediaより)。

第1節 奴隷制もしくは自発的でない隷属は、アメリカ合衆国内およびその法が及ぶ如何なる場所でも、存在してはならない。ただし犯罪者であって関連する者が正当と認めた場合の罰とするときを除く。
第2節 議会はこの修正条項を適切な法律によって実行させる権限を有する。

しかし、この条項の成立は、奴隷を労働源として抱えてた南部の農場オーナーを怒らせました。そして、憲法修正第13条の抜け穴となるBlack Code(ブラックコード)という法律が成立し、連邦政府はそれを黙認しました。

ブラックコードとは、ささいなことで黒人を罪人に仕立て上げることができるもので、その内容は以下。
・仕事がない黒人は徘徊の恐れがあるので逮捕、収監
・警察署長の特別な許可書がなければ黒人は宣教できない。罰金を支払えない場合には収監(ちなみにその罰金は支払えないほど高額だった)
・親がホームレスと”みなされる”黒人の子どもは、行政の判断で”新しい雇用主” に送られ、男は21歳、女は18歳までそこで働かなくてはならない。雇用主は、彼らが逃げ出した場合には罰を与える権限がある

このブラックコードにより、警察は理由を作り上げて、アフリカ系アメリカ人を罪人として捕まえ、懲役労働として、新たな雇い主(綿、タバコ、サトウキビ農場、炭鉱など)へ奴隷同様の扱いで送りました。

奴隷制度廃止とは名ばかりで、社会は彼らに同等の人権を与えることを許しませんでした。そしてそれは、2020年の今も続いています。前回の記事でも触れましたが、どんなに振る舞いに気をつけていても、警察は肌の色だけを理由にアフリカ系アメリカ人を逮捕する、暴力をふるう、殺す。それが正義でもあるかのような構図が全く崩れていないのです。自分の大切な人が、そういう世界で生きていくこと、想像できますか?

ご存知のとおり、Black Lives Matterは、そういう社会の仕組みっておかしくない?彼らの命はなぜ同等に扱われない?というアフリカ系アメリカ人の人権に対する抗議運動です。自分たちが受けてきた差別や歴史はまず置いておいて、この時代に居合わせた私たちみんなが同じ方向を向いて考えて、学んで、認識して、永続的に働きかけなければいけない問題だと思います。今は最初のスタートラインに立っただけという思いを忘れずに私も勉強を続けます。

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