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大戦略III’90(感想)_前作から大幅に飛躍したゲームシステムは現在も充分に楽しめる

『大戦略III'90』は、前年に発売した『大戦略IIIグレートコマンダー』の改良版で、その名の通り1990年に発売したゲームで、生産型(国)を選んで128×128マスのHEX上を当時の兵器を駆使し、最大4カ国で戦う戦略SLGだ。PC9800版とX68000版が発売されていたようだが、私はPC9800版を発売当時購入した。

生産型は、アメリカ、ソビエト、西ドイツなど12カ国から選択することが出来て兵器数は全部で252種類。なので今どきのゲームと比較するとかなり少ないと思われるが、前作『大戦略II』の兵器数が63種類だったことからすると、約4倍に増えているため発売前から期待が膨らんでいた。

生産型も前作では西側諸国がNATOとまとめられていたのがイギリス、フランス、イタリアなどに分けられ、その国独自の兵器が用意されるようになり、中国やイラクも選択出来るようになった。また、ロシアではなくソビエトという呼び名も冷戦時代を思い起こさせて懐かしい。
以下、『大戦略III'90』の感想となるがゲームルールはほぼ同じのため『グレートコマンダー』『'90』を同一のものとして扱う。

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兵器の色がグレーで、描写が緻密になった

初代の『現代大戦略』から『大戦略II』まで、兵器の色は選択した各国の色(青赤緑黄)に着色されていたため、それまで戦闘シーンがカラフルだったのが本作から突然渋くなった。兵器なのでまっとうに考えたらポップな着色の方が違和感あるはずなのだが、それが当たり前と思っていたのでゲームとしての渋さが増して当時かなり嬉しかった。

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また、兵器を描画するドット数が増えたのか陰影が付いてよりリアリティが増した。
ただしこれは一長一短で、前作までの少ないドット数でもちゃんと、各兵器を個体識別出来るシルエットに味があった。少ないドット数でよくぞ各兵器を再現したものだと感嘆させられ、まさにドット絵による職人芸が味わえたのも事実だ。

マップの地形識別HEXのデザインにほとんど変化が無かったのは良かったと思う。リアリティを求めて殺風景になるよりは、ポップでわかり易い地形の方がゲームとしてのバランスは良い。
UIは素っ気ないが戦略SLGの雰囲気には合っていたし、作戦指示を選択するためのウィンドウがサクサクと動くのもいかにも作戦を立てている気分が味わえて気分が良い。

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地形種類の種類と視界の高低差が増える

氷原、製油所、基地、レーダーなど地形種類が増えて、視界にも高低差が4段階と切り替えられるようになった。さらに敵の生産兵器が丸見えという状態が無くなり、マップ上の視界外の地域がグレーアウトしたのも戦略性が増して楽しい。

視界を拡げるために、本作から新たに偵察機や早期警戒機が新たに兵器として登場することになったのだが、残念ながらこれらの兵器が役に立つことはほぼない。
なぜならばこのゲームにおいて、兵士の人命については一切気にする必要がないからだ。大戦略では金と生産力さえあれば、無尽蔵に兵器と搭乗しているであろう兵士を供給することが可能で、「士気」という概念が無いため兵器を将棋の駒のように動かすことが出来るのだ。

なので、偵察機代わりに撃ち落とされることを覚悟のうえでユニット数を最小限にした戦闘機を飛ばしたり、機動力のある装甲車を前線に派遣した方が遥かに効率が良い。コンピューターは律儀に最初は偵察機を飛ばして来るのだがその意味は残念ながら薄い。(そもそもプレイヤーのやっていることはお見通しだろうに)

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命令をしておけばある程度勝手に動いてくれる

進行は各国ごとのターン制ではなく、同時に進行させるセミリアルタイム制で、部隊ごとに目標を設定出来るのも便利だ。

工場の数に連動して生産兵器数を指定し、部隊編成の指示を出すとターンごとに小隊がマップ上に配置されるのだが、兵器を配置するときに補給の頻度や作戦命令を指示出来る(遊撃、進行、占領、国防など)ようになっているので、ある程度放置しても各部隊が勝手に判断して進行してくれる。部隊数が増えて管理が出来なくなっても、思い通りに動いてくれることは稀だが一応勝手に侵攻してくれるのは有り難い。
また、この思い通りに動かない部隊をもどかしく眺める感覚は、ある意味本当の指揮官の気分を味わうということではリアリティがあるのかもしれないと思ったりする。

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ユニット補充することで、経験値を活かして育てる楽しみ

『現代大戦略』では、前線の都市や空港でユニットの補充が可能だったので、ユニット数が減ったとしても前線でユニット補充することが出来たので経験値を活かして部隊を育てることが容易だった。
ところが『大戦略II』では、前線の都市や空港でユニット補充が出来なくなった。かといってユニットの減った部隊を後退させるのは手間で、新たに部隊生産した方が効率が良かった。
そのため前線でユニット数が減ると全滅するまで戦わすことになっていた。ユニット合流は行えたが部隊あたりMAXの10という数字に合うことは滅多にない。せっかく小隊の経験値が上がったとしても最後まで残る部隊を育て辛いのは残念だった。

本作では前線の基地や空港でユニット補充が可能になったため歴戦の経験値(A~Fランクで表示)を積んだ部隊を育てることが出来るようになり、徐々に部隊ごとに愛着が湧くようになるのはよかった。自国と敵国、同じ兵器同士で戦ったとしても経験値の違いによって戦果が変わってくるのは地味に嬉しい。また、基地や空港へ兵器配置することも可能なためいきなり前線に兵器を投入出来るのも首都からの移動の手間が減って便利だ。自国と敵国、同じ兵器同士で戦ったとしても経験値の違いによって戦果が変わってくるのは地味に嬉しい。また、基地や空港へ兵器配置することも可能なためいきなり前線に兵器を投入出来るのも首都からの移動の手間が減って便利だ。

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前作からのアップデートによって残念なのは、折れ線グラフによる戦況確認が出来なくなったことや、歩兵でなくても都市占領が可能になって歩兵部隊の存在意義が減ったくらいか。

1989年に発売した『大戦略IIIグレートコマンダー』を忘れられない

冒頭『大戦略IIIグレートコマンダー』が前年に発売していたと書いた。30年以上前のことだが、私は少ないお小遣いを注ぎ込んでこちらも購入して後悔したことをよく覚えている。

大戦略IIIグレートコマンダー

当時、PC98シリーズへ対応する新作ゲームの情報源が私の場合、雑誌の「マイコン」「Login」「コンプティーク」しか無かった。
『大戦略II』を遊び倒していた私は、とにかく期待に胸を膨らませて秋葉原のソフマップへ『大戦略III』を購入しに行ったわけだが、これがとんでも無い不良品だった。

まず、進行速度が遅い。私の利用していたPC-9801VM21では1時間かかっても1ターン進行しないことがままあった。それでも辛抱して待ったとしてもコンピュータの思考レベルが低いため、いきなり歩兵部隊で敵首都へ侵攻しても防衛されずにあっさり勝利してしまうという始末。さらには、艦船ユニットが陸上にいたりとそもそもゲームとして成立していなかった。
よくぞこんな不良品を発売してくれたものだと泣き寝入りたわけだが、翌年改良版の『大戦略III'90』が出るということで、「今度こそは」と購入した経緯がある。

現在だったらSNSで炎上して回収騒ぎになる(そもそも評判の落ちることを恐れて発売しないと思うが)ような出来だったと思うのだが、まあおおらかでいい時代だったと思う。
ちなみに、ゲームと直接関係無いが『大戦略IIIグレートコマンダー』はオープニングの音楽が好きだったので何度も繰り返し見たりしていた。

あれから約30年。『大戦略シリーズ』には当然新作は出ており、さらに複雑でグラフィックや演出もさらに緻密になったSLGを楽しめるのだろうが、私にとってはこれくらい単純なゲームシステムの方が楽しめるというのが正直なところだ。
長いこと様々なゲームをプレイしていると思うのだが、グラフィックの綺麗さや複雑なルールはとゲームの楽しさはリンクするものでは無いのだから。
何より作成指示が軽快に動作するためストレスが少ないのも相俟って今でもたまにプレイしたくなる。


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