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Mixes/Kylie Minogue リミックスがオリジナル曲を凌駕する好例

Kylie Minogueのリミックスには数多の優れたトラックがあるのだけれども自分はRazor N' Guidoによる「Did It Again」のRemixこそがアンセムだと思っている。

この楽曲は『Impossible Princess』のリミックス集に含まれており、レコードだと2枚組で、以下の通りリミキサー陣にハウスのトラックメーカーとして一線級の名前が連なっている。
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A1 Too Far (Brothers In Rhythm Mix)
B1 Too Far (Junior Vasquez Remix)
C1 Some Kind Of Bliss (Quivver Mix)
C2 Breathe (Tee's Freeze Mix)
D1 Breathe (Sash! Club Mix)
D2 Breathe (Nalin & Kane Remix)
E1 Did It Again (Trouser Enthusiasts' Goddess Of Contortion Mix)
F1 Did It Again (Razor-n-Go Mix)
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『Impossible Princess』はkylieによる1997年発表となる6枚目のアルバムとなり、イギリスでのアルバムチャート・アクションとしては10位が最高位。これは過去の5枚と比べると少し人気に陰りが出てきたか、という印象。

Kylie(1位)1988年
Enjoy Youself(1位)1989年
Rhythm of Love(9位)1990年
Let's Get to It(15位)1991年
Kylie Minogue(4位)1994年

97年頃の日本でのKylie Minogueの扱いについては、ユーロビートのブームもとっくに過ぎ去って時流に残されてしまった存在で「Can't Get You Out of My Head(邦題:熱く胸を焦がして)2001年」で人気再燃するまでは忘れられた過去のアイドルのようだった。マドンナほどはプロデューサーの起用はうまくないし、マライアほどは歌えないという中途半端なアーティスト立ち位置というのもあったと思う。

さて、そんな状況で発表された「Did It Again」は『Impossible Princess』からの2ndシングルとなり、まずはBrothers In Rhythmプロデュースによるオリジナルを聴いてみて欲しい



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Caught up in this house
Trapped my very own self in the snare of my mind
No more space than a slither
What I'd give for deep breath inside
Where the chaos has me captive
Where there's no exit sign
Where fuel the stupid fire with these feelings of mine
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Kylie Minogueによる怪しい上記語りによるイントロから、速めのBPMによるブレイクビーツが入って来る。途中でストリングスによるブレイクが入ったりと音数が盛り沢山で疾走感がある忙しない楽曲に仕上がっている。

これはこれで良いのだが、Razor N' Guidoがリミックスするとこんな感じになる。



低音で重厚感のあるキックのリズムに1:53あたりからドラムロールが入ってからのズ太いシンセリードが肝。暑苦しくうねる量感たっぷりのシンセリフがリフレインしてまるで厚切りロースカツのようだ。間奏ではオリジナル版にも入っているシタールの音色が優しく奏でてロースカツ定食のキャベツみたいに見事な調和を醸しだしている。何度もリピートされる変にドスのきいた声で歌われるDid it again~ であったり、下手するとダサくなりかねないボコーダーが多用されていたりと、とことんギリギリな感じがピークタイムにかかったらもう最高!Razor N' Guidoの楽曲は当時のレコ屋ではNYのProgressive Houseなんてコーナーに置いてあって、いかにも大箱で映えるような音色とリズムが特徴的だがこのミックスはそれが特に顕著。約11:30ほどある曲なのだが飽きずに何度も聴き直したくなるクセがある。

その他の曲ではいつものJunior Vasquez節炸裂(サビへイキそうでなかなかイカずに焦らされる)の「Too Far (Junior Vasquez Remix)」が好き。

サンプリングされてエコーのきいたKylieの特徴的のワンショットにキックの音色が被さってきて、静かな雰囲気から徐々にアガっていくドラマチックな展開はいつものJuniorのワンパターンなのだが重たいトラックとKylieのコケティッシュな声の組み合わせはハマっている。流石はハウス界の重鎮。(しかし、このミックスも12分弱と長い)いつものごとく楽曲の展開が必要以上に大げさ過ぎるために踊りにくいとは思うが。

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[ ジャケットのデザインについて ]
白い線のみで腰をくねらせて踊る女性を表現したデザインは「Farrow Design」によるもの。Pet Shop Boys、Deep Dish、Orbital、M People、Kylieの他作品などのジャケをデザインしており、シンプルにシンボライズされたようなアートワークが特徴的な印象。デザイナーからするとこういうシンプル過ぎるのは「仕事してるのか?」と問われかねないような仕上がりな訳だが自分は好き。

調べてみたらこのFarrow Design、5枚目のアルバム「Kylie Minogue」のデザインも手掛けていた。極限まで抑制されたシンプルなデザインなため、いわゆるポップ路線からの脱却をこのアートワークによって図っていたであろうことが想像される。このシンプルで悪そうな雰囲気のKylie姉さんのアートワークは昔から好きなヤツで、Kylieのアルバムジャケットでも最も好きなヤツだ。

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ちなみに『Impossible Princess』のあとに『Light Years(2000年)』『Fever(2001年)』へと躍進を続けていくわけだけど、30歳を過ぎてからのKylie Minogueが復活と共に見た目が断然可愛くなっていたことを記憶している。やっぱり売れると優秀なスタイリスト / ヘアメイク / カメラマンがアサインされるというのもあるのだろうが、自分は女の盛りは30を過ぎてからだと割とマジで思っている。

あと、今回改めて確認したら1stシングルの「Some Kind Of Bliss」を、Manic Street PreachesのJames Dean Bradfieldがプロデュースしていたのが意外だった。

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