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Mint Royale 1998-2007年(感想)_過去音源のサンプリングとブレイクビーツの組み合わせ
1990年代後半以降、Fatboy Slim、The Chemical Brothersなどと共に、ブレイクビーツやビッグ・ビートで括られていたMint Royale。
過去の音源をサンプリングして再構築するのが特徴的なMint Royaleは、マンチェスター出身のNeil ClaxtonとChris Bakerによって1997年に結成されたデュオ。
フロア映えするノリの良い楽曲は、気分的に春~夏頃に聴きたくなる。
以下リリースされた3枚のアルバムといくつかのシングル、リミックスについての感想などを。
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Tequila (Mint Royale remix)/Terrorvision(1998年)
Mint Royaleの名前が売れたのは、Terrorvisionのリミックスからで、本作はUKシングルチャート2位につけた。
オリジナル曲はEdwyn Collins(元Orange Juice)プロデュースによるギターサウンドの強調されたロックとなるが、リミックスはMint Royaleによってノリのいいパーティー・トラックに仕上がっている。
色んな音がわちゃわちゃしながら、ブレイクビーツと子どもたちのコーラスの組み合わせがいかにも楽しげな曲で、当時は様々なDJ Mixに収録されていた。
自身のDJ Mixにも入れて、あまりにもスタイルが似ているから、Mint RoyaleがNorman Cookの変名プロジェクトという噂もあったとか。
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On The Ropes(1999年)
Faith & Hopeレーベルからのデビュー・アルバムは、賑やかなジャケデザインのとおり、底抜けに明るいパーティー・チューンが目白押しの1枚。
シタールの音色が脱力する「From Rusholme With Love」、甘いヴォーカルのLauren Laverneを起用したポップな「Don't Falter」(UKシングル20位)、イケイケでダサ格好いい「Deadbeat」など、明るくて混沌とした印象の名盤。
Mint Royaleの音は、過去の音源を発掘・サンプリングして、レイクビーツにのせて再構築するのが特徴てとしてあって、とにかく音源チョイスのセンスの良さがある。
例えば「Shake Me」では、Blood Sweat and Tears「Lucretia Macevil」のイントロ部分と、Jean-Jacques Perrey「E.V.A.」を組み合わせていたり。
楽曲の混沌とした印象は、サンプラーを手にした音楽オタクが音源を組み合わせて新たな音楽へと生まれ変わらせる感動が伝わってくるような初期衝動も感じさせる。
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Sexiest Man In Jamaica(2002年)
2ndアルバムからの先行シングル。
オリジナルもテンション高めの曲なんだけれど、押しの強くて下品なシンセベースを追加した「Sexiest Man In Jamaica (Scanty's Dirty Weekend Dub)」が好み。
しゃがれた男性の語りが挿入されてからの、こういうグイグイくる曲をフロアでピークタイムに聴けたら最高だと思う。
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Dancehall Places(2002年)
2ndアルバムは、前作『On The Ropes』のようなパーティ感は薄まって全体的に少し暗めの印象。
徐々に盛り上げてくれるアッパーなハウスの「Anything」や、 まったりとチルできる「Dancehall Places」など、ダンスに偏らないバリエーション豊かな1枚。
特に好きなのが、De La SoulのPosdnuosが参加した「Show Me」。ノリの良いソウルはアンセム感もあって、いつまでも聴いていたいと思わせる名曲。
Tamiko Jones「Can't Live Without Your Love」をまんまサンプリングした、「54」もディスコっぽいハウスで好き。
シングルカットされた曲のリミックスの質が良いこともあって、好みでいうと、これまでリリースされた3枚のオリジナル・アルバムの中で最も好きな1枚。
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Anything(2002年)
女性コーラスのコーラスが美しいJudie Tzuke「For You」をサンプリングしたアルバムバージョンも良いのだが、ちょっと控えめな「Anything (Liquid People Remix)」の方がフロアに映える。(このミックスは恐らくレコード盤のみのリリース)
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Blue Song(2003年)
2ndアルバムからのシングル・カット。
テンポを上げて、原曲からあまり変えず素直にハウスミックスした「Blue Song (ATFC Remix)」も良いのだけれども、個人的には「Blue Song (Ewan Pearson Remix)」の方が好き。
Ewan Pearsonによるダブっぽいミックスが独特のグルーヴを生み出していてかっこいいから、フロアユースという意味ではMint Royaleのあらゆるリミックスの中でも飛び抜けて好き。
ちなみに、「Blue Song」のPVはEdgar Wrightが監督によるもの。
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Rhythm Bandits (Mint Royale Remix)/Junior Senior(2003年)
デンマークのデュオ、Junior Seniorの曲をリミックス。
Junior Seniorの曲って、Mint Royaleの1stのようにイケイケの曲が多いのでこの組み合わせにはかなり納得だったのだけど、リミックス自体はミドルテンポの大人しめな感じ。(Happy Mondaysっぽくもある)
粘っこいグルーヴ感は良いのだが、原曲がバカっぽい感じで期待値が高かっただけにちょっとイマイチかも。
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Ez Pass (Mint Royale Remix)/Har Mar Superstar(2003年)
米国のシンガーソングライター兼俳優のHar Mar Superstarという人のリミックスをMint Royaleが担当。
ドライブするギターサウンドと、早口の男性ヴォーカルでノリの良いミドルテンポの曲。いかにもなビッグ・ビートの曲で、まぁまぁ好き。
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Wait For You(2005年)
3rdアルバムからの先行シングル。
原曲も良いのだが、エレクトロでファンクな「Wait For You (Bastian remix)」が素晴らしい。踊れるしリスニングにも耐えられる完成度の高さ。
シンセベースがブイブイいわしている「Wait For You (National Forest Production Line Remix)」もまぁまぁ好き。
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See You In The Morning(2005年)
3rdアルバムは前作『Dancehall Places』の延長線にある感じだけど、イケイケな感じはさらに抑えられている印象。
なお2023年3月現在、本作以降にオリジナル・アルバムはリリースされていない。
シングル・カットされた3曲以外にも、深みのあるハウストラックの「I Don't Care」や、エレクトロなポップ・ソング「My Heart Is Beating Fast」などが好き。
かなり完成度は高い1枚なのだが、あまり話題にならなかった気がするのは残念。この頃の音楽シーンではエレクトロクラッシュが流行って、それすらも収束に向かっていた時期だから時流に乗れなかったのかも。
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The Effect on Me(2005年)
Jean Wells「Have A Little Mercy」という60年代ソウルをサンプリングした曲で、ダウンテンポでゆったりと聴かせる1曲。
リミックスでは、8bitゲーム機のようなチープなエレクトロサウンドが印象的な「The Effect On Me (Max Tundra Remix)」が素敵。
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Singin' in the Rain(2005年)
なんと大胆に往年の名曲、Gene Kelly「Singin' In The Rain」をサンプリングした曲。
楽しげな原曲をまんま引用しつつ、ブレイクビーツと存在感のあるシンセベースを被せていくことで緊張感が出てくるからガラッと印象が変わる。
3rdアルバムからのシングル・カットでは一番好き。
いくつかリミックスがあるが、オリジナルに比較的忠実にハウスミックスした「Singin' In The Rain (Kenny Hayes Remix)」が良さそう。
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Pop Is...(2007年)
これまでリリースされた作品をまとめたベスト盤。
Mint Royaleの曲だけでなく、上記したTerrorvision「Tequila (Mint Royale remix)」や、The Stone Roses「Elephant Stone (Mint Royale remix)」も収録されているのが嬉しいところ。
本作以降、MInt Royale名義でのリリースは長いこと無くなるから区切りとしてのベスト盤だったのかも。
2013年には「GTFU (EP)」で久しぶりに復活し、「Ring(2013年)」「Time(2016年)」、「Glitter(2020年)」、「One To Another(2022年)」とシングル・EPをリリースしているものの、過去作品と比較して大人しい楽曲が多いせいか、だいぶ印象が異なるのと、あまり好みでは無かったのでここでは紹介しない。
やっぱり、Mint Royaleには、ブレイクビーツとサンプラーを組み合わせた音楽を期待してしまうから。
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