火車

9月は「火車」と共に、自分の着地点を探す長い長い1ヶ月だったなと改めて思う。

宮部みゆき著「火車」は、休職中の刑事本間が、遠い親戚の和也から婚約者を探して欲しいという依頼を受けて、その婚約者の行方を探す中で、謎を紐解いていくミステリー小説だ。今年の東京都知事選立候補者の宇都宮さんに興味をもって、それからこの本に出会った。

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ミステリー小説ながら、平成初期のクレジットカード破産、住宅ローン、多重債務、自己破産が関わってくる内容で、事実自分とは無縁と感じていた世界が、この本を読むとグッと身近に感じる。本当に誰にでも起こりうることなんだと身が引き締まる思いになった。

宮部みゆき小説で現代小説は実は初めて。私は根っから時代小説ファンだったので中々手が出せずにいたのだけれど、この時期にこの本を読むのは必然だったと感じた。

実生活で9月に入って弁護士や、消費者センターや、司法書士などとお話をする機会があり、私の場合は借金の話ではなく不動産問題だったのだけれど、実際そこへ相談することが人生の中であるだろうか?結構貴重な体験だったと思う。

小説の中に出てくる疾走した女性は、クレジットカード負債により自己破産をした女性で、水商売をしていた。そのことが男性やお金にだらし無い人というイメージを連想させるが、事実相談を受けていた弁護士はそうではないと話す。多重債務になる人の多くが、生真面目で気の小さい人が多い。逃げたり放り出したりすることが考えられないため、なんとか返さなきゃと、借金を返すために借金をするという悪循環に陥るのだと。サラ金に手を出して、利子が高額で返済額はどんどん大きくなっていく。それは多重債務者が悪いとは一概には言えず、そもそもその元になったクレジットカードを作っている会社も悪いのではないか。

社会を取り巻く闇も感じつつ、消費者には決して優しくない社会の現状を現実でも感じていて、9月は実に疲労困憊だった。

そして、火車を読み終わった日に、実生活の不動産との案件も解決した。

本間刑事に”お疲れ様でした”と心の中で声をかけた。


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