見出し画像

助産師、母になる

2022年2月母になりました。助産師として約5年間お産に関わった中で大変さは十分に理解しているつもりだったけど、実際に経験したら異次元の大変さでした。

ここでは助産師として、そして一人の女性としてお産を振り返って文字に残そうと思います。

1ヶ月も続いた前駆陣痛

 前駆陣痛は妊娠37週から始まっていました。強めの痛みも時々あったけど大抵は痛みがあっても家事ができる程度。始めのうちはワクワクしていたのに痛みがあるのに陣痛がこないことで段々ストレスとなっていきました。

 妊娠経過に問題がなかったため妊娠後期からは1時間以上散歩したりヨガやスクワット(100回以上)をやったり乳頭マッサージを行ったり、お風呂にゆっくり浸かってリラックスをはかったりしていました。前駆陣痛がきてからも意識して行ったのですが、痛みは強まることはなく。。
 それでも成果を感じられたのは内診所見が良くなっていったこと。37週以降の妊婦健診は週に1回となりその度に内診をしてもらい子宮口の状態を診てもらっていました。37週での内診所見は芳しくなかったのですが、38週での内診所見は子宮口が少し薄くなり、さらに39週には頭が下がってきていました。本陣痛が来ない焦りもあったけど内診所見が少しずつお産にむけて良くなっていたことで自分の気持ちをどうにか保つことができていたと思います。
 今になって感じることは、お産って何をしても来ない時は来ない。予定日超過で焦る妊婦さんにたくさん会ってきて「いつかは陣痛くるから気長に待ちましょう」って伝えてきたけど、実際に経験してみると焦るしストレスは溜まる。その気持ちにどう向き合うかを妊婦さんと話していけたら良かったなと反省しています。私の場合、夫に焦りや不安の気持ちを伝え、理解してくれたからストレスがピークになると一緒に散歩して美味しいもの食べたりとにかく寄り添ってもらえたのでストレスを乗り越えることができました。

本陣痛がきてから病院に行くまで

 分娩誘発で入院予定の2日前に陣痛はやってきました。入院中の夫の食事を作って冷凍しておこうと食材を大量に買い込んだ日。夕飯を終えて、カレーを作り始めた18時頃からいつもより強めの痛みが6分間隔で規則的に始まりました。
「いよいよ陣痛だ!」と直感的に思うと同時に「この食材たちを料理せずに入院し腐らせるのは勿体無い」という強い思いに駆られ無我夢中で料理をしました。痛みがきている間は夫に腰をさすってもらい、おさまると料理を再開、を繰り返し21時くらいに料理・片付けをどうにか終えました。その頃には痛みで立っていられないくらいになり、病院に電話。

※お産する病院によって電話するタイミングは違うと思うのですが、もっと早く病院に電話したほうがよいと思います。

 助産師ということもあり「自分で内診してみて入院のタイミング決めて良いよ」とお産する病院の助産師さんが言ってくれ、自分で内診。「3cm80%-2後方、うん良いぞ。でも膜がない?」と感じ破水を疑ったので病院に行くことに。その頃には陣痛間隔は5分、痛みはフーフー声が漏れるほどに強くなっていました。 

いよいよお産です

 病院についてからは安心したのか一気に痛みが強くなりいきみたい感じがでてきました。その頃から胎児心音は遅発性一過性徐脈という良くない状態に。周りでは先生や助産師さんが緊急帝王切開ができるように採血したりし始めていましたが、幸いにも子宮口はみるみる開大し記憶がただしければ1時間もしないうちに全開大といわれるいきめる状態に。それからはあっという間に元気な産声をあげて生まれてきてくれました。

まさかの産後大出血

 我が子を抱いて幸せに包まれているのも束の間、出血が止まらず意識が遠のきそうになる事態に。結局2000mlを超える出血をしたのですが幸いにも大きな病院でお産をしていたため、搬送されることもなくその場でテキパキと処置をしてくださり出血を止まることができました。

 日本は妊産婦死亡自体少ないし、弛緩出血という異常は他の異常に比べて少ないわけではない。それでも妊産婦死亡のうち弛緩出血の占める割合は多いため、助産師として働いていたときは常に緊張が走る状況でした。それを自分が経験しているというのは不思議な気持ちになり、同時に客観的に自分の状況がわかってしまっていたので恐怖でした。それでも担当助産師さんが冷静にテキパキ行動してくれたので安心したのを覚えています。自分もそうなりたいと強く思います。

それでも母は強く生きる

 出産後貧血の状態が悪いため、翌日輸血することになりました。それでも産後初めて歩いたとき意外と意識ははっきりしていて。でもやはり心臓はバクバクしているし、その時は「大丈夫」って思っていたけど、数日後体調が良くなってきてから振り返ると産後1・2日目はかなり身体はしんどく無理をしていたと思います。それでも頑張ったのは、なるべく完全母乳で我が子を育てたく、そのためには産後するの頻回授乳が母乳の出を良くするといわれているため。休んでほしいというスタッフの方の声を跳ね除けわがままを言って産後0日目から授乳させてもらいました。無理する必要は全くないけど、でも我が子を好きなだけ抱かせてもらえたことは気持ちが落ち着いたのでとても感謝しています。

 母乳の出はとてもよく、頻回授乳のおかげもあったと思うけど、とにかく水を2Lを目指して飲んでいたのが大きいかなと思います。3日間くらいは母乳がでないのが当たり前。それでも諦めずに母乳をあげ続けたことも良かったと思います。それで心が苦しくなるなら無理する必要は全くないと思うけど、いつか母乳は出ると自分を信じて諦めないという方法もあると思います。ここは自分の心と相談することが大切だと思います。

 助産師だからって安産なわけじゃないし、助産師だから頑張りすぎる必要もないな、と振り返って感じています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?