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soropen
「きれいだな」と思うことは、「恋をする」ということ
「岩は『きれい』なのだ。それを『きれい』と思う人間は思うし、思わない人間は思わない。それだけのことである。『感じる』ということはそういうことで、『感じないものは感じない、感じるものは感じる』─ただそれだけのことである。私は、木や花や風景を『きれいだな』と思うのとおんなじノリで、岩を見ても『きれいだな』と思う。ただそれだけである。『岩が自分になにかを語りかけてくれる』とも思わない。花はおしゃべりな女で、岩は寡黙な男である。どっちも“人間”だから、好きになる時は好きになる、つきあう時にはつきあう─ただそれだけの話である。
『きれいだな』と思うことは、『恋をする』ということとほとんど同じで、室町時代は、男が花を生けて、石を愛した時代なのである。」
(『ひらがな日本美術史2』)