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機能不全家族育ちが良い恋愛をするには

恋愛でもそれ以外のことでもまず挑戦して失敗から学ぶことは大切だと思うが、機能不全家族育ちやアダルトチルドレンの場合は、気を付けなければならないことがある。
それは大抵は恋愛観、言い換えると愛着が望ましくない方向に歪んでいることだ。
それに気づかないまま失敗すると歪みが強化、もしくはさらに別の方向に歪む危険性があるので、事前に自分がどんなふうに歪んでいるか知ることができれば、たとえ失敗してもリカバリーしやすくなるだろう。

では自分の歪みを知るにはどうすればいいのだろう?
私の母を具体例に挙げて解説を試みようと思う。

私の母の最初の恋愛は高校生の頃で、小学生のときから親しかった幼馴染が初彼氏になった。
彼はワンマンなところがあったが人を引っ張っていくような頼もしいリーダータイプで、母はそのサポートをするのが得意なお似合いのカップルだった。
母は彼のことが本当に好きだった。
高校卒業後、彼のほうは地元を出て進学し母は地元で就職して遠距離になり、すれ違いから大喧嘩になり彼からの連絡はそれっきり途絶えた。
母は薄々はもう駄目なんだろうと気づきつつもはっきりとした別れ話にはなっていなかったこともあり、この恋愛を引きずっていた。
仕事が楽しくて恋愛には目がいかなかったのもあるが、素敵だなぁと思っている男性からアプローチを受けたときでさえ、前の恋愛の傷が深く一歩踏み出せないでいるうちにこの男性とは進展せずに終わった。

当時は女性は25歳までには結婚するものだという所謂クリスマスケーキ理論が一般的な価値観で、母は仕事に夢中になっていたのと恋愛に慎重になっていたのとで、この年齢に近くなってきたとき相手がおらず、そのことを少なからず気に病んでいた。
しかも同じ頃、知人に例の元カレが結婚したことを聞いて精神的に参ってしまった。
そんなときにある男性が熱心にアプローチしてきた。
その男性は元カレや今までアプローチしてきた男性の中で素敵だなと思った人に比べると魅力がなく恋愛感情として好きな気持ちをあまり持てなかったが、どう見ても自分に惚れ込んでいてよく尽くしてくれたので、母は結婚を決めて当時の慣習通り退職した。
その男性が結婚後に酒を飲んではDVするようになり、母からの申し出で早々に離婚することになった。
この男性が母の前の夫で、次の夫が私の父である。

どうして母がこのような失敗をしたかというと、最初の恋愛で本当に好きだった人に振られる形で破局し深く傷ついたことが理由の一つ。
もう一つは母とその両親(私から見て母方祖父母)の関係性からだ。
祖父は母をとても可愛がって大事にして、尚且つ妻である祖母の希望にいつも譲歩する人だった。
祖母と祖父がこのような関係性だったのは、祖父が前妻と死別しており祖母が後妻であったこと、祖母が子供の頃に両親を亡くしている境遇であったことが理由だろうと思う。
つまり可哀想な身の上の祖母が、前妻の代わりに迎えられたと思わないようにと。
だが子供の母からすると単純に祖母>祖父の力関係のように見えただろう。
祖母は祖父をそこまで大事にしておらず好いてそうには見えなかったが、それでも祖父から譲歩されて尊重されていた。
母は恋愛経験から自分が振られるような関係が恐くなり、自分の両親の関係性のほうが傷つかずに済むのではないかと思ってしまった。
つまり、結婚相手は自分のほうが振られないように、自分のほうが力関係が上になるように魅力の低い人を選ぶべきだと。
自分がそこまで好きではなくても相手が自分のことを好きで大事にしてくれるなら、と。

恐らく母は自分がこのように考えて結婚相手を選んでいたことを自覚していなかった。
だから次も失敗した。
父は母に暴力こそ振るわなかったが、そこだけはマシなだけでいろいろ問題のある人で、結果として不仲になった。

母は祖父に優しく大切にされていた経験から、男性は好きな相手なら大事にするものだと思い込んでいた。
母の元カレや素敵だなと思っていた、年齢なりに成熟した男性ならその理屈は通用していただろう。
だが元夫や私の父はそうではなかった。

もし母がこういったことを知っていたならば、喧嘩した初彼氏に自分から歩み寄って元鞘になっていたかもしれないし、そうでなくとも後にアプローチしてくれた素敵な男性に勇気を出して応えていたもしれない。

現在は機能不全家族やアダルトチルドレン、愛着障害など、生い立ちが原因のさまざまな問題を分析、解決に役立つ知見が出てきているので、私の母の時代より恵まれていると思う。