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マンガとアニメの感想文

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好きなマンガとアニメの感想をまとめています。
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2020年6月の記事一覧

自分さえいなければ、周りの人は幸せになれるなんて思い上がりだ/『聲の形』感想

「聴覚障害」と「いじめ」というセンシティブなテーマを切り取った『聲の形』。 京都アニメーション制作の綺麗な映像とともに、ずっしりと重くもどかしい感情が心にのしかかってくる映画でした。 この映画を観ている最中も、観終わってからも決してスッキリしたとは思いませんでした。 前半の陰湿ないじめのシーンなんて観ているだけでつらくて、苦しかった。 高校生になって再会した二人の心あたたまるラブストーリーがはじまるのかと思いきや、この映画はずっと人との関わりの難しさを訴えてくる。 コ

彼女たちを南極へ突き動かしたもの/『宇宙よりも遠い場所』感想

漠然と現状に不満をもっていて、何かを変えたい。でも、変える勇気がない。 ――そんな思いがずっと心の底にありました。 私は自己肯定感が高いほうじゃないので、周りのキラキラしている人を見て、羨んで、何もない自分に勝手に落ち込んじゃう。 そんなネガティブな感情を、やさしく吹き飛ばしてくれるアニメ「宇宙よりも遠い場所」に出会いました。 「女子高生、南極へ行く」なんとも胸がわくわくするキャッチーなコピー。 本当に本当におもしろかった! 高校生の女の子たちが南極への旅を通じて成長

人生をチュッパチャップスのようになめていた/『波よ聞いてくれ』感想

ヒロインが酒に溺れながらそのセリフを吐き捨てるアニメのタイトルは、『波よ聞いてくれ』。 もうすぐ25歳を迎える私にはピンポイントで突き刺さりました。ぐはあ。 主人公のミナレは、彼氏に50万円を貸したあげく別れることに。 どん底からスタートする彼女の物語ですが、ラジオDJという仕事に関わることで人生が変わっていく展開。 私も借金している彼にお金を貸すかどうかで、迷ったことがあります。 好きな人が困ってたら助けてあげたいって思うけど、借金作ったのは自業自得だし、それは根本的

あの時間は、人生のあまやどりだった/『言の葉の庭』感想

梅雨になると決まって観たくなる映画があります。 窓をたたく雨音を聞きながら、主人公たちの逢瀬に想いを馳せる―― 『言の葉の庭』は私にとって、まさにバイブル的な作品です。 新海誠監督の作品はどれも独特の雰囲気があって好きですが、『言の葉の庭』はその中でも別格。 『君の名は。』のようにエンターテインメントに特化しているわけでもなく、『秒速5センチメートル』ほどポエミーなわけでもない。 本当にこの世界のどこかでありそうな、日常と非日常の境目を切り取った絶妙な作品なのです。