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マンガとアニメの感想文

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好きなマンガとアニメの感想をまとめています。
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記事一覧

青さと熱さを見た感覚が残る/『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』感想

年齢を重ねていくうちに、スポーツ作品への抵抗がなくなってきた気がします。 自分が運動部に所属したことがなくて、スポーツをやってきていないから、昔は「運動やっている人の気持ちはよくわからん」という感じでしたが、最近はスポーツに打ち込んでいる人を見ると、その熱をもらって魂が震えるようになってきました。人間らしくなってきた。 今回劇場で観た『劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦』も面白かったです。MX4Dで観たのでアトラクション的な楽しみもありつつ、しっかり惹き込ませるアニメー

自分さえいなければ、周りの人は幸せになれるなんて思い上がりだ/『聲の形』感想

「聴覚障害」と「いじめ」というセンシティブなテーマを切り取った『聲の形』。 京都アニメーション制作の綺麗な映像とともに、ずっしりと重くもどかしい感情が心にのしかかってくる映画でした。 この映画を観ている最中も、観終わってからも決してスッキリしたとは思いませんでした。 前半の陰湿ないじめのシーンなんて観ているだけでつらくて、苦しかった。 高校生になって再会した二人の心あたたまるラブストーリーがはじまるのかと思いきや、この映画はずっと人との関わりの難しさを訴えてくる。 コ

だれかの日記を読んでいるような感覚/『葬送のフリーレン』感想

普段アニメを見ない方と話していても、『葬送のフリーレン』はちょくちょく話題に出ます。 まだ見たことない方には是非見てほしいので、フリーレンのどんなところが面白いのか伝えたく、この記事を書きました。 ネタバレはないのでご安心ください。 一見地味な作品ですが、アニメ化されてぐんと人気が出たなあと感じています。 私は漫画で読んだときにはハマらなかったのですが、アニメをあらためて見て「あ、こんなにおもしろかったのか」と気づいた遅めのタイプです。 あらすじは、勇者ヒンメルが魔王を

人生をまるごと肯定してくれる傑作マンガ/『ゾン100 〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』感想

(うわーもう日曜日終わるのか……明日からまた会社行きたくないなあ……) そんな思いが一瞬でもよぎったあなた。 日曜の朝から、月曜日のことを考えると憂鬱になってしまうあなた。 そんなみんなに是非読んで頂きたいマンガが、『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』です。これめっちゃくちゃ面白いよ! 主人公はブラック企業で働いていた青年で、ある日、ゾンビだらけになった街で、本当に自分がやりたいことを探しはじめます。 あらすじだけ読むと、いやいやどういうストーリーよ

明日からも生きていける気がした/『ゆるキャン△』感想

それは昨年の2月のこと。転職をして、週5日間、電車に揺られて職場に通う生活がはじまりました。 初めての営業。初めて関わる職場の人たち。 新卒で入社した会社は、こういっちゃあれだがお遊びのようなゆるい雰囲気だったので、遅ればせながらようやく社会人デビューしたような鮮烈な記憶がある。 一言でいうと、つらかった。 当時の冷え切った私の心の癒やしになっていたのが、女子高生ほのぼの日常系キャンプアニメ『ゆるキャン△』でした。 * 日常系アニメというものを、今までほぼ見たことがあ

彼女たちを南極へ突き動かしたもの/『宇宙よりも遠い場所』感想

漠然と現状に不満をもっていて、何かを変えたい。でも、変える勇気がない。 ――そんな思いがずっと心の底にありました。 私は自己肯定感が高いほうじゃないので、周りのキラキラしている人を見て、羨んで、何もない自分に勝手に落ち込んじゃう。 そんなネガティブな感情を、やさしく吹き飛ばしてくれるアニメ「宇宙よりも遠い場所」に出会いました。 「女子高生、南極へ行く」なんとも胸がわくわくするキャッチーなコピー。 本当に本当におもしろかった! 高校生の女の子たちが南極への旅を通じて成長

人生をチュッパチャップスのようになめていた/『波よ聞いてくれ』感想

ヒロインが酒に溺れながらそのセリフを吐き捨てるアニメのタイトルは、『波よ聞いてくれ』。 もうすぐ25歳を迎える私にはピンポイントで突き刺さりました。ぐはあ。 主人公のミナレは、彼氏に50万円を貸したあげく別れることに。 どん底からスタートする彼女の物語ですが、ラジオDJという仕事に関わることで人生が変わっていく展開。 私も借金している彼にお金を貸すかどうかで、迷ったことがあります。 好きな人が困ってたら助けてあげたいって思うけど、借金作ったのは自業自得だし、それは根本的

あの時間は、人生のあまやどりだった/『言の葉の庭』感想

梅雨になると決まって観たくなる映画があります。 窓をたたく雨音を聞きながら、主人公たちの逢瀬に想いを馳せる―― 『言の葉の庭』は私にとって、まさにバイブル的な作品です。 新海誠監督の作品はどれも独特の雰囲気があって好きですが、『言の葉の庭』はその中でも別格。 『君の名は。』のようにエンターテインメントに特化しているわけでもなく、『秒速5センチメートル』ほどポエミーなわけでもない。 本当にこの世界のどこかでありそうな、日常と非日常の境目を切り取った絶妙な作品なのです。