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夏が呼んでいる


蝉がけたたましい声で鳴く。冷たいアイスクリームを口の中で溶かしながらほおばる。じりじりと照りつける太陽。夏だ。今年も夏がやってきた。

少し溶けかけたメロンクリームソーダをエアコンのきいた喫茶店でほおばりながら、炎天下からの避暑地として涼んでいるのには、ちゃんとした理由がある。今年の自由研究は彼の生態を知ることだ。いつもこの時間帯にこの喫茶店にアイスコーヒーを飲みに来ることが私の研究成果としてわかっている。この研究のためにわざわざ夏の暑い中自転車を目いっぱいこいでこの喫茶店に来ているのだ。

「お嬢ちゃんも懲りないね。」

喫茶店のオーナーはニコニコしながらカップソーサーを磨いている。
メロンソーダは半分くらい溶けかけている。急いで半分だけ飲むことにした。シュワシュワとしたはじける感触と甘いくちどけがたまらない。

カランカランとドアが開く。スーツを汗でびっしょりと濡らしたオールバックの青年が
「アイスコーヒーを一つお願いします。」
と言いながら隣の席に座る。今度は私の胸がはち切れんばかりだ。

今日も彼の生態はわかりそうもない。明日も通うことになりそうだ。
蝉が鳴く暑い夏の日のことだった。

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