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とある画廊

とある所に、沢山の絵画が並ぶ画廊があった。人々は活気に満ち溢れ、時に支え合い、励まし合いながら創作活動に勤しんだ。

ある時、一人の画家がそこに入っていった。人見知りで上手く話ができない画家は最初、その和気あいあいとした集まりが羨ましくてしょうがなかった。

そこで、画家は自分と全く同じ絵を描くロボットを連れてきて、そのロボットと合作をするようになった。周囲にもそのような人はちらほらいたので、そうしたら周りの凄い人たちと肩を並べて会話ができると信じた。しかし、そんなに上手くはいかなかった。周囲も己の事で精一杯だったのだ。各々の事情や、他に楽しい場所を見かけたからと、一人、一人とその画廊から姿を消していった。画家も、ロボットを連れて閑散とした画廊から去っていった。

しかし、画家は戻ってきた。酷く寂れた画廊には新しい絵が飾られている事はほとんどなかったが、それでも新しく始めたらしき画家の作品が置かれていた。

周りには誰もいない。見てくれる人もいない寂れた画廊だ。いつかここも消え失せてしまうのだろうなと、物悲しい気持ちになる。それでも。

画家は新しいキャンパスを手に取って描いた。画廊の明るい未来を。周りには沢山の画家が微笑んでいるように見えた。

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