ショートショート。文学と芸術。
「文学は冬。そう、そんな気がするの。」
秋の風が冷たく吹くあの日、確かに君はそう言ったんだ。
秋は芸術、冬は文学。そう言いたそうにしている彼女に、僕は何も言い返すことが出来なかった。冬に芸術をしてもいいし、秋に文学をしてもいいと思うからだ。
冬に芸術をする彼女は輝いていたし、秋に文学をする自分の事を、彼女は何も言わなかった。実際、四季に関わらず私達は作品を作るだろう。
秋から冬に向ける文が秋に届く事はなく、冬から秋に届ける芸術は長い眠りにつく。私達は、とても非効率な時間の過ごし方を楽しんでいる。貴方を想う文を秋に描き、その返事の芸術が、また次の秋に届くのだ。
そんな状況を焦れったく思ったからこその彼女の発言だったのだろうかと、ふと我に返る。
次に会った時にこう言ってみよう。
「一緒に、作品を作りませんか?」
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