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小鳥のようにうたいながら 2021( 長月 September 〜 師走 December)


夏から秋、そして冬へ

なかなか思うようにはいかなくても
またひとつ無事に歳を重ねられて
笑うことだってできているから
ひとまずよしとして一年を終えよう
そしてまた次の一年へつなげていこう
ひとつひとつを重ねていく
そうすればいつか形になるはず
少しずつ ゆっくりゆっくり

***


長月 September

⭐︎︎風巻しまく青をはらむ黄色いワンピース 題名に「ケ・セラ・セラ」と

⭐︎きみとぼくのならんだデニム丈の差の二十センチのそれも愛しき

⭐︎ひつじ雲 優しく問いかけるようにわたしのなまえ呼ぶ声はどこ

⭐︎君は君、ただそれだけでいいじゃない no-nameとか言わせておけば

⭐︎白昼夢 星から星へ飛びはねて星座を描くエイリアンズよ

⭐︎ささやかに飾る 小さきイヤリング 久しき口紅ルージュのピンクベージュ

★三十九度 副反応のきみを思う 同じ温度の湯に浸かりつつ

★歳重ぬ 鏡へ寄せて頬の染みに「キミは黒子ホクロ」と言うて聞かせし

神無月 October

⭐︎忘れたよ、交際記念日なんてね 雨だったことだけ覚えてる

⭐︎扁桃と胡桃の種を炒りながら ただ香ばしくよぎる記念日

⭐︎ブルーブラック 滲むインクは戻せずにただ広がってゆくを眺める

⭐︎パカパカと鳴くパンプスのため息のオフィスへつづく駅の階段

⭐︎北風よ編み目を抜けて人肌の温度を知りてぬくもりとなれ

⭐︎ストールを纏う窓辺の冷えし朝ふわりススキの穂のひらきたる

⭐︎ 窓外の平和を見つつバーガーの平和をかじり神無月ゆく

★やさしくていつもの帰り道なのに月のまあるいそれだけなのに

霜月 November

⭐︎新米は持て囃されて 秋の田の麦の種まくニュースの微か

⭐︎ドライなる麦の穂先はツンツンと今のキミみたい そっと束ぬ

⭐︎振り向けば一本道を歩いてた てく、てく、てく、と数ふアナログ

⭐︎目の前をニ段飛ばしでかけてゆく もう届かないきみはデジタル

⭐︎一途さは白くまっすぐなようでいて風船ふくらすほっぺのごとく

⭐︎「青い花のような人ね」とその青はどんな青かと空を見渡す

★ 横に眠るきみの呼吸に合わせらば仲直りできるような気がして

師走 December

⭐︎好きだってどうしてあなたはわかるの? シュークリームのようにつなぐ手

⭐︎夕暮れにため息 しおる背中から「おつかれさん」とまるい差し入れ

★「ちいさいね」そうは言うけどそれぞれにみんな違う幸せのサイズ

★二十分に四つ見つけてほころびる都会の闇にも流星群

★とりどりのオーナメントで一本の木を成す 形なき聖夜なり

★やさしさを運ぶサンタよ 子育てはサンタがサンタを育てるような

★春は花、夏は海にて 秋は風、冬は星よりきみは浮かび

***


三十一文字みそひともじにただよう空気感、楽しんでいただけたでしょうか
景色が浮かぶような、心にふれるような歌はあったでしょうか
わたしもアルバムを見返すように出来事や気持ちを振り返ることができました

三行日記も三日坊主になるような私には、心が大きく動いた時に短歌で思いを残しておく というくらいがちょうどよかったのかもしれません

そして たとえそれが 悲しみや淋しさであったとしても、三十一音のわずかであれば まるで道を辿るためにそっとつけた目印のように 不思議とほっとできるのでした


悩んで 迷って 選んで 決めて 動いた一年
“変えたい”  “何かしたい” と思えば動くしかありませんでした
どう転ぶかわからなくても 動かなければきっと何も変わらなかった

noteを始めたことも、転職をしたことも、私にとってプラスの選択だったと思います
思い切ってよかったです

そしてつくづく感じたのは、
人はひとりで生きているのではないのだなぁ
人を支えてるのはやっぱり人なのだなぁ
ということです

エッセイも短歌も どれにも誰かの気配があって、
人との関わりから生まれていました
人の手や目、気持ち、そして言葉
誰かとの交差があってこそ 感情は生まれるのですね
そんな当たり前のようなことにも気付くことができました


なかなか気の休まらない大変な世の中
この一年もいいことばかりではなかったと思います
これからも 先のことはわかりません
できるだけの今を重ねていく、それだけです

一年間おつかれさまでした
一年間ありがとうございました

これからも、小鳥のようにうたいながらまいります



子供の頃 ヒナから育てた小鳥がいました
それはそれは愛しくて 大切に育てました
以来 鳥が大好きです
かわいい仕草や鳴き声が いまでもずっと心に残っていて
その時が わたしの母性と自我の芽生えだったのかなと思っています
そんなお話も できればまたいつか、別の機会に

★手をつなごう血はつながっていなくても
仲間っていう意味のファミリー
ー ちる ー


また来年の年末も、noteでの短歌をまとめたいと思います
どうぞよろしくお願いします
よい一日を、よい一週間を、よいお年を お迎えください

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