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線香花火 -よさこいチームちるらむ発足前夜譚- ②とうり編

「衣装が作れればそれでいい」は今も変わらないけれど、
このチームのためには絶対にいい衣装を作りたい、と思えているのは、多分自分でチームを作ったからかも。

私のよさこいへの動機は、東京花火に入ることを決めた8年前から衣装だった。勿論他のダンスではなくよさこいを踊る理由はあるけれど、自分の関わった作品を魅せることに対してこだわりがあったのだと思う。

誰も知っている後輩のいなくなった代の演舞を見て、いよいよ学生時代に制作した演舞が過去のものになっていくのを感じた。一学生チームの一衣装部員だったけれど、「私の作品」があったことが自分の矜持だったこと、そして、もう縋るには過去すぎることに気づいた。
もう一度衣装を作りたいけれど、既存のチームに入っていきなり衣装制作に関われるわけがない、そうだ、新しくチームを作るところに衣装要員で入ろ。

これが私の動機です。

チームを作りたいかもと言っていた佐内と、おんなじようなことを溢していたらしいちえみと、渋谷の沖縄料理屋で飲むことになった。私にとっては激動の4時間だったような気がする。

まだ見ぬよさこいチームの理想を語るのはいくらでもできた。
得意な魔法は頭の中にお花畑を出す魔法です。
ひたすら楽しい。ご飯も美味しい、あの店もう一回行きたいな。

でも、夢見るだけ見て、楽しかったね、はい解散、とさせてくれるような2人じゃなかった。
いい大人になると「こうやって将来の理想を語るのはいいけれど、現実的に考えて、多分実現はしないんだろうなぁ」と頭の片隅で理解しながら夢語りをすることが増える気がする。
けれど、多分2人はそこまで大人じゃなかった。私も多分大人になり切ってなかった。

22時、卓の上では遠慮の塊が冷め始め、なのにグラスはどんどん空いてく。
議論は「チーム設立のためにこれからやるべきこと」のリストアップに移っていた。
佐内が、ああこの人代表だったんだ、と実感させるような視野の広さを見せてきて「こういう、やると言ったらやる精神の人が結局成功するんだなぁ」とぼんやり思った。1年半のコンサル勤めで切れ味を増したであろう、しごでき感を漂わせるちえみを横目で眺めていた。私はひたすらジャスミンハイを飲んだ。

まだ頭に咲かせたお花を眺めていたかった私は、少しずつ焦ってきた。
やばいこの人たちすぐにでも動くつもりだ。私にそこまで責任持ってやる覚悟ある?というかもう、自分衣装だけやりたいっす、って言えるポジションじゃないんじゃないか。

焦りかけていた私が、それでもその晩覚悟を決めたのは、店を出る直前の、佐内の一言があったから。

「やるなら本気でやるけど、本当に大丈夫?」

その時、ああ、多分私が抜けてもこの人たちはやるに違いない、と思った。
この人たちが作るチームを後々外から眺めて、やっぱり楽しそうだなぁと指を咥えて見ることになるくらいなら、今からやる方が絶対楽しい。乗るしかない、このビッグウェーブに。

かくして、大変面倒くさがりでモチベーションの波に定評のある私が、よさこいチームちるらむの副代表になることになりました。

次回、統括さえない編。


▼ちるらむのYouTube

▼文・とうり(@0306_Tori)

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