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白鳥飛来の古沼2

  江戸時代に館林城というお城があったところは、現在、市役所や図書館、公園やプラネタリウム、文化会館などが並んでいます。

 かつては敵の侵略を防ぐお堀としての機能もあった城沼も、今は周囲5キロメートルの遊歩道に囲まれた市民憩いの公園です。

 白やピンクの梅と、黄色いロウバイが青空の下で花を咲き競っています。
 花の時期には少し遅いくらいでしたが
 「いい匂いだね」
 そう言い合って園内を進みました。

 少し進むとモカさんが足を止めました。
 動体視力は私よりもモカさんの方が優秀です。

 視線の前方を見ます。

  木の上を見て、低い場所の藪を見て、最後に私は地面を見ました。
 「何かいるね」

 小さな鳥が、地面に落ちている枯れ葉を持ち上げて、餌を探しているようです。
 あまり警戒していないらしく、3羽ほど遊歩道を平然と歩いています。

 モカさんがカメラを構えたまま
 「あれ、何」

 全体的にスズメに似ていて、スズメよりやや大きく、胸がオレンジっぽい子です。
 「ホオジロ?」
 私が答えると、すかさず
 「違うんじゃない、調べておいて」
 という返事が返ってきました。


ホオジロっぽい。


 沼の淵には釣り人が等間隔で並んでいました。

 私が
 「釣りの人がいるから怖がってカモがいないのかもしれないね」
 「そうだね」
 時々、アシの影にカモがたくさん集まっているような感じに見えました。

 モカさんが草の影にいたアオサギを見つけました。
 「アオサギが口を開けている」
 カメラを構えて、シャッター音が続いた後に
 「変顔が撮れた」
 満足そうに言いました。
   「変顔?」

 内心で、何を撮っているんだかと呆れつつ、後で見せてもらうのが楽しみだったりするのでした。


アオサギの変顔

 少し歩いて行くと大きなレンズを持った人が藪の中を狙っていました。
 モカさんが
 「ベニマシコ!」
 鳥の名前を言って同じ方向にカメラを構えました。

 私が鳥を探していると
 「わからないの?」
 「そこ」
 モカさんはどう教えたら伝わるか迷いながら
 「そこの草がすっと伸びた先」

 いやいや、同じような草ばっかりだし。

 その時、鳥がさっと飛んで移動しました。
 人間の手の動きに鳥がおびえるので本当は指さしをやらない方がいいのですが、飛んでくれたおかげで私はやっと見つけられました。

 とはいえ、藪が深くて、周囲の草に焦点が合ってしまい、うまく鳥の判別ができません。
 さらに野良猫がやってきてベニマシコを狙い始めたので撮影に集中できません。

 ベニマシコは猫の気配でも感じたのか、パッと遠くへ飛んで行ってしまいました。

 私は
 「焦点が合わなかったよ」
 と残念がったのでした。

ベニマシコ(失敗例)

(3に続く)


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