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不思議体験


友人にチケットが当たった!と誘われて、絶叫マシンのあるテーマパークへ行った。

彼女がいつも行動を共にしていた幼馴染に「行こう!」と声をかけたら「もう勘弁して!」と断られたとか。そりゃそうだ・・・もうちょっとで中年の域も脱するかという年齢で、1日に何度も揺さぶられるのは、なかなかハードだと正直私も思う。

とはいえ、友人はコースター大好きでストレス解消にはもってこいだという。真っ逆さまに落ちるコースターや、飛ぶ恐竜に連れ去られるのとかだけど、乗れる?と誘ってきた。

私はそれほど得意でも苦手でもない。強いていうならば、横回転しなければ大丈夫かな。昔、コーヒーカップに乗ってガンガンに回された時に立てなくなって以来、横回りは苦手になった。

でも、ここ10年ほどはそういう過激な乗り物とはご縁がなくて、同じテーマパークに行っても、ややゆったり進むライド系に乗る程度、ショーを見たり、作り物の街並みを散歩したりツリーを見たりするくらいだった。

なので「乗れますか?」と聞かれて、大丈夫!と即答は出来なかった。

「昔は乗れたけど〜横回りが無ければ大丈夫だとは思うよ」と言いながら、他に適当な同行者がいないということで、ご一緒することになった。


当日は結構寒かったけれど、雨が降るよりは格段にマシ。時々お日様も顔を出してくれていた。しっかり着込んでカイロも貼って、いざ出陣!


今、流行りのアニメとコラボしているライドに長時間並んだ。乗っている時間はあっという間。VRの装置を頭につけた状態で室内コースターに振り回される。首がもげるか装置が吹っ飛ぶかというぐらい重かった。結果的にはどちらにもならずに、あっという間に終了(笑)

続いてジェットコースター。ここでは一番前の座席になった。真っ逆さまに落ちる系のコースターの最前列はかなり過激。友人が「一番前、初めて!」と喜んでいたのとは反対に、私は多分、やや青ざめていたと思う(笑)とりあえず落っこちるタイミングでは「ギャー!」と叫んだと思うけれど、それ以外はレールを見ながら次はこっち、あっち、またお尻が浮く・・・長いなぁ💦などと割と冷静でいられた。お尻が浮くタイミングのぞわぞわ感はあまり氣持ちの良いものでもなかったけれど。


その次は映画とコラボしている室内ライドへ。ここも暗い中振り回される。どちらかというと普通に重力によって加速して落ちていくコースターの方がまだマシだ。室内ライドは重力に逆らって、椅子が勝手に止まったり動いたり、あり得ない方向へ急に動き出す。予想がつかなくて三半規管がやられがち。


3つ目を降りたところで、いよいよ恐竜に連れ去られる「空飛ぶ体験」を目指す友人。正直私は10年ぶりぐらいに思いっきり揺さぶられて、かなりお疲れ気味だった。寒い中を待って、乗り物で揺さぶられる。降りてきたときには毎回「暑いのか寒いのかわからない変な感覚」になった。次休憩するときには「あったかい飲み物でホッとしよう」と思いつつ、降りたらアドレナリンで興奮しているからか冷たい飲み物を欲する。これは生物としてはいただけないなと思いつつ。


勇氣を出して言ってみる「シングルライダーで行ってくれん?私、カバン持って待ってるから」

「ええ〜〜!?」と不満顔の友人。一人で嫌なのは並んでる時間。確かにね。一人で並ぶの退屈だし。

わかる氣もするし、今日は頑張って乗ると請け負ったのだからと、とりあえず腹を括る。


実はこの時点で、私はある決意を固めながら並んでいた。


「こんな、体調に関わることが聞き入れられないなら、このライドを最後にお付き合い終了してもいいかな」


最初にも書いたけれど、我々さぼど若くはない。無理のきかない年齢だと言っても過言ではないのだ。確かに誘われて来たんだけれど、1つも乗らずに言ってるわけでもない。すでに3つもクリアして私なりに頑張って揺さぶられ続けて来た。

最後は「無理かも」を聞いてくれても良さそうなもんだ。それが不満なんだったら・・・

腹は括った。ちょっとイラっとした。いやイラついたというよりはなんだかさみしくなってしまったのかもしれない。

列を進みながらだんだん悲しくなってしまい、ちょっとだけ呟いてしまった。一体いつになったらマスクや消毒しなくて済むんだろうね?こんな短期間に開発された治験中のワクチンってどうなんだろうね?

なんのことかわからないって顔をする友人。ああ・・・やっちゃったよ。ごめんね、知らなかったのに。知らずに生きてきたのに。

「変な話してごめんね〜」とその手の会話は軽く終わらせて、また列を進む。反対にどんどん「おつき合い終了」の合図である乗り場が近づいてきていた。

この階段を上ったら乗り口だな。いいよね、メガネ外して乗ったら何にも見えないから、視覚的にはきっと怖くもないだろう。これで終わりでいいや。

やや投げやりにそう思って、ゲートに並んだ途端、下を向いた友人がポツリと言った

「ダメかも・・・」

ん?どうした?見ると友人の顔が蒼白になっている。

「なんかパニックっぽくなってきた。やめてもいい?」


斯くして、乗って縁を切ろうと思っていた私の氣持ちを知ってか知らずか(絶対知らない)彼女のリタイヤで、どうにか私も救われた。


考えたら不思議だ。マスクやワクチンの話を少しした以外は、彼女の仕事の愚痴を聞いたり、昔の職場の話をしたり、家族の話をしたりと至って普通の会話をしていた。元氣に歩いて階段をのぼり始めた時の彼女は「あー!ワクワクする!」って言ってたんだから。

もう少し、おつき合い続けたい。それには「今日はここで終わりにする」

そう彼女に言われた氣がした。氣がしただけ、なんの証拠もないけれど。


それにしても、三半規管が狂うような過激な乗り物にマスクをして並びライドする。こんなの体調が悪くならないほうが不思議だと思う。

早く普通に「キャーキャー」言えるテーマパークになることを、心の底から願っている。

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