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ソ連の軍歌や戦時歌謡など

今は亡きソビエト連邦時代の名曲について好き勝手に語る。

*本記事に政治的意図はありません。

軍歌編

軍歌とは兵士の戦意高揚などを目的に制作される楽曲である。

本項ではソビエト連邦時代の軍歌を8個ほど紹介する。(帝政ロシア時代に作曲されたものであっても、ソ連時代にも歌われていた曲ならばソ連軍歌に含めている。

1. スラヴ娘の別れ

1912年の帝政時代のロシアで作曲された行進曲。第一次世界大戦を通じて兵士たちに広まり、後に白軍版やソ連版も作詞された。個人的に一番好きな曲。

勇ましさと哀しさを併せ持つ曲調がとても良い。

https://www.youtube.com/watch?v=FJt_JdFwLw0


2. タチャンカ

ロシア内戦期に活躍した兵器「タチャンカ」をモチーフにした軍歌。

タチャンカは馬車の後部に機関銃を搭載した兵器で、内戦中はその高速性を生かして展開した。そのような特徴を反映してかスピード感のある曲に仕上がっている。

https://youtu.be/rmmQP8E1dXQ

3.赤軍に勝るものなし

ロシア内戦中に作られた軍歌。赤軍はその正式名称を「労働者・農民赤軍」といい、概ねソ連軍と同意である。内戦中の曲のため、白軍やツァーリに対しても言及している。

ちなみにこの曲は様々な国や地域で歌われており、曲調や歌詞はその国の文化や政治情勢に即したものになっている。日本語版も存在するが、私はあまり好きではない。クルド語版が一番好き。

https://youtu.be/vA-W_MPg9ec

4.モスクワ防衛軍の歌

独ソ戦の時期に作曲された軍歌。ドイツ軍が首都モスクワに迫る中で兵士や市民を鼓舞するような内容となっており、生まれ育ったモスクワに対する熱い思いがつづられている。

https://youtu.be/LUZMDvdwZbg

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5.聖なる戦い

これもまた独ソ戦期に作られた軍歌。ドイツの侵攻をうけてからわずかな期間で発表された。不可侵条約を破って侵攻したドイツやファシズム全般に対する怒りの感情が綴られている。重々しく厳かな曲調になっている。

https://youtu.be/TSDr8Xxd5h0

https://youtu.be/maYCStVzjDs

6.航空行進曲

1920年代に作曲された。歌詞には比喩表現が多用されており、それがまた何とも言えぬ雰囲気を醸し出している。

果てしない空を超え
夢を現実とすべく我々は生まれた
英知は我らの腕に鋼鉄の翼を
心臓に熱きエンジンを与えた
常に高く、高く、より高く
我らは鳥の如く舞い上がる
プロペラ一枚一枚の羽根の下
国境には平穏が息づく
機体を自在に空へ羽ばたかせ
未知の飛行に挑み
我らは知る、空軍の進化を
世界初のプロレタリアの空軍を!
我らの鋭き眼差しは原子さえも貫き通し
全神経は決意に震える
我らは確信する、いかなる最後通牒であっても
空軍は応えうることを!            (Wikipediaより引用)

https://youtu.be/KBAwAGbwj4o

7.艦隊への道

曲調は古典軍歌のようだが、実は1970年代に作曲された比較的新しい軍歌。

曲の最後にロシア各方面の艦隊名を叫ぶところが好き。

https://youtu.be/bEZZIputz4c

8.ポリュシカ・ポーレ

1934年に作曲された有名曲。元は交響曲の一部だったが、後に軍歌化した。民謡のような曲調のためか世界各地で親しまれ、日本においてもドラマの主題歌になっている。 

https://youtu.be/1KW29FEGIco

その他・戦時歌謡編

1.ワルシャワ労働歌

ロシア第一革命時に広がった革命歌。歌詞には労働者の叫びが歌われているがかなり過激。レーニンのお気に入りの曲で、時折口ずさんでいたらしい。(真偽は不明)

勇ましく我らの旗を掲げよ、
 敵の嵐が吹き荒れようとも、
 我らをいま邪悪な力が抑圧しようとも、
 我らの明日が不確実であろうとも。
 嗚呼、これは全人類の旗なのだ、
 神聖なる声、革命の歌、
 労働者と正義の大勝利なのだ、
 兄弟たる全人類の夜明けなのだ!
 ワルシャワへ前進だ!
 神聖で正義ある流血の戦いだ!
 進め、進め、ワルシャワへ!     (Wikipediaより引用)

ちなみに日本語版も存在しているが、こちらも少々主張が強い。

暴虐の雲 光を覆い
敵の嵐は 荒れ狂う
怯まず進め 我等の友よ
敵の鉄鎖を 打ち砕け
自由の火柱 輝かしく
頭上高く 燃え立ちぬ
今や最後の 闘いに
勝利の旗は ひらめかん
起て同胞よ ゆけ闘いに
聖なる血に まみれよ
砦の上に 我等の世界
築き固めよ 勇ましく      (Wikipediaより引用)

https://youtu.be/kgSdI9UnLD4 (ソ連版)        

https://youtu.be/WGdd5Jc3ZU8 (日本語版)

2.青いプラトーク

1940年代に作曲された曲。戦場の兵士の目線で、故郷に残して来た恋人への思いがつづられている。どちらかというと恋愛ソングに近いかもしれない。

プラトークについて

ロシアの民族的な女性用被り物で,季節を問わず用いられる。ふつうは四角い布切れ,またはニット地で,頭に被るほか,肩にかけたり,首に巻いたりする。原色の華やかな花柄が多く好まれる。民族的な被り物とはいっても,広く使用されるのは機械による大量生産が開始された19世紀半ば以降のことである。その時期以降,伝統的な被り物にかわって,農民,商人など広く一般庶民の間に流布するようになった。プラトークは一般庶民によって日常的に気楽に用いられた反面,結婚の結納品や仲人への報酬としても用いられたし,花嫁にとっては娘時代との別れを象徴するものとして,婚礼へ向かう道で投げ捨てたり,実家に残していくべきものであった。(https://kotobank.jp/word/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%88%E3%83%BC%E3%82%AF-1202295)

間奏の声がとても美しい。

https://youtu.be/96DzhQGikso (女性歌唱版)

3.スムグリャンカ/小麦色の娘

青年が農村で出会った女性に一目惚れし、その女性に誘われてパルチザンに入るという内容の曲。

ここでいうパルチザンとは、共産主義者のゲリラ部隊のようなもの。

赤軍をモデルとして作られたパルチザンはソ連政府の統制および指揮を受け、ドイツ軍の後方、特に道路や線路など輸送機関の破壊を最大の目的としていた。1941年7月29日、人民委員会議と共産党が発した指令の内部でパルチザン活動に関する概略が述べられた。当初のパルチザン部隊は赤軍兵士および破壊大隊、地方の共産党員、コムソモール、ソビエト活動家によって構成され、ソ連当局の資料によると1941年夏の時点ですでに231個の「派遣隊」が活動しており、同年の終わりまでに437個が編成され7200人以上が従軍した。  (Wikipediaより引用)

とても有名な曲だが、青年のパルチザンに入る動機が正義感に駆られてではなく、女性につられてという不純なものなので当時は賛否両論があったらしい。

https://youtu.be/H1ShvPOY8-Q

番外編①:ドイツ共産党&東ドイツの軍歌・革命歌

本来のテーマからは逸れるので、紹介するのは2曲にとどめる。

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1.秘密の配備

1929年に作成された、反ファシズム曲。歌詞は共産主義要素にあふれているが、とても勇ましい。

1番
世界中でささやく声
労働者よ、聞こえないのか
各国の国防長官の声だ
労働者よ、聞こえないのか?
石炭・鋼鉄の生産者の声が
化学兵器業界の声が
噂は全ての大陸から聞こえてくる
ソ連に対する動員だ!
(コーラス)
労働者よ、農民よ、武器を取れ!
その手に銃を取れ!
略奪者たるファシスト共を打ち砕き、
その心に火を点けろ!
労働者の赤旗を立てよ
全ての工場、街灯に
旧社会の廃墟から立ち上がる
社会主義世界共和国!
2番
労働者よ、聞け! 戦争屋共はいつも言う
国家のため、民族のためと!
本当は世界の支配者達だけの為の戦争だ!
労働者階級への戦争だ!
何故なら、ソ連に対する攻撃は
革命精神への打撃だからだ!
そして今、諸国に広がる戦争は
君に対する戦争なのだ、プロレタリアよ!
(コーラス)
労働者よ、農民よ、武器を取れ!
その手に銃を取れ!
略奪者たるファシスト共を打ち砕き、
その心に火を点けろ!
労働者の赤旗を立てよ
全ての工場、荷役場に
旧社会の廃墟から立ち上がる
社会主義世界共和国!   

https://youtu.be/HYJmGaBMQJ8


2.公然たる進軍

こちらは冷戦下の東ドイツの曲。実は上記の「秘密の配備」のアレンジ曲。

https://youtu.be/tAxadstFhzo


番外編②:中華人民共和国の軍歌

こちらも本来の趣旨から逸れるので1曲のみ紹介する。

1.鋼鉄の潮行進曲

https://youtu.be/gFBwXdguRrY

かっこいい。以上。



まとめ

本記事で紹介した曲以外にもまだまだ沢山の軍歌が存在しているので、興味のある方はぜひ調べてみてください。

ただ、こういった曲はプロパガンダの一環として制作された場合が多く、事実を捏造したり、誇張したり、歪曲させている可能性があるので、歌詞を鵜吞みにせず、あくまで音楽作品として楽しもうという姿勢で鑑賞するのが大切だと思います。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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