#3 "慣れ"がいかに恐ろしいかについて

　昔から期限のある課題は苦手です。小学校の夏休みの課題に始まり、中学・高校と進んでも常に期限と隣り合わせ。大学だってそう。レポートだの何だのと、期限期限期限。。。それほど「期限」と付き合ってきたはずの新卒社員が、「期限は死んでも守れ、社会をなめるな」と熱血指導を受けているんだから、日本の教育はどうなってるんだよと嘆かわしい気持ちにもなるわけで。

　前回、さっそく締切オーバーのデビューを飾ってしまったので、今回は締切にケツを叩かれる前に早めに取り掛かることにしました。おかげで夕食後のハイボールを飲んじゃってますが、それも言葉の潤滑油ということで。
　
　酔って文章を書くと言えば思い出すのが俳優の佐藤二朗さん。彼のツイートは酔った状態で書かれてることが多い。酔ってる人のろれつが回らない様は、直接話してればわかるが、彼の場合はそれが文章に現れる。つまりタイピングのろれつが回ってないのだ。そりゃあ酔ってれば少しくらい打ち間違いもあるかもしれないが、彼の場合は次元が違う。「酔ってる人が喋ってる様子をそのまま再現したかのような書き言葉」なのだ。知らない人はtwitterで検索してみて。あれは何というか、陳腐な言い方になるけど、凄い。もし本当に酔ってるとしても、ああいうツイートを書こうと思ったら、「酔ってる人の喋り言葉みたいな文章がきちんと書けているか」という冷静な視点が必要なはず。それができるということは素面、つまり実は酔ってないという壮大な矛盾を抱えることになる。自作自演もいいところだ。
　だが彼は違う。本当に酔っててそういう文章になったとしか考えようがないのだ。まさしくアルコールの申し子。それでつぶやく内容が、情熱だったり、子供自慢だったり、愛おしいのね。すごく大好きです。

　さて、かくいう私も酔ってきました。酔って困るのは論理的思考回路が弱まることね。物事を筋道立てて考えたりすることができなくなる。なので、本当にそうなってしまう前に、本題に入ろうと思います。ガチで酔っぱらってこんな記事を何時間もかけて書いた挙句、支離滅裂な文章のため、おじゃん、オール書き直しになるくらいなら、今書きあげてしまえと、理性が言ってくれている今のうちに。

今回のテーマは「”慣れ”がいかに恐ろしいかについて」です。

人は慣れる生き物である。例えば、僕はこの2年間で2回引っ越しをした。木更津の実家から仙台のぼろアパートへ。そして仙台から、現在の住処である埼玉県某所の2LDKのマンションへ。
木更津でボケっと過ごしていた青春時代から考えたら、1人で2LDKに住んでるなんて夢のような話だ。いや、正確には毎週末わがやに来てくれる人もいるし、時には友人を招いて朝まで飲むことだってある。とはいうものの、僕はまだ独身なので、社会一般的には2LDKに独りで住んでいる独身男性って言っていいだろう。
寝室も専用にあるし、リビングダイニングはご飯食べながらテレビでも見ようかっていう、くつろぎの場所。それに何より嬉しいのは、プライベートスタジオがあること。今の住まいは賃貸物件なので、防音施工もしてないし、厳密な意味では「スタジオ」と言えないのだけど、ギターが何本もあって、録音環境があって、落ち着いて音楽に没頭できる音楽専用部屋という意味で親しみを込めてスタジオと呼んでいる。

引っ越した当初はそりゃ感激したさ。仙台で住んでたアパートなんて、ちょっと良い物置っていう程度だったからね。大げさでなく。
それが寝室は別だわ、ギター専用部屋はあるわ、キッチンのシンクと洗面所は別だわで、本当に夢のような世界だった。「都会で働いている俺」に酔ったこともあった。

ところが、最近は当時の浮かれた気分などまるでなく、ただの「巣穴」に成り下がった。神聖な場所だからと清潔を心がけていた寝室は、寝起きするためだけの場所となり、部屋の四隅にはホコリが溜まっている。キッチンだって物理的な必要に迫られるまで洗い物もしないし、独りで過ごす夜はせっかくのテーブルをスルーして地べたに座って安い発泡酒を飲みながらコンビニの唐揚げ弁当なんかを貪ることも珍しくない。スタジオはまだマシで、レコーディングの時期などはそれらしい雰囲気もあるけど、そうでもないときはペットのパンダマウスに占領されている。ギターがひしめき合って楽器屋の香りが漂ってた我がスタジオも、今やネズミの糞尿の匂いで満たされている（僕はパンダマウスを溺愛しているのでそんな匂いさえも愛おしいのだけど）。

要するに、人は忘れる生き物なのだと思う。昔感じた感動や感謝さえも、月日が経つにつれてせっせと掃いて捨てるようにどんどん忘れていく。忘れるからこそ、それを当然と思うようになるわけで、それが「慣れる」ということなのかも。

それが人間の性で、避けられない運命のようなものであるなら、それはそれで受け止めて、「あ、オレ慣れてんな」って感じたときに、初心に戻って気持ちを新たにすればいいのかなぁ、と。ハイボールのせいか記憶力がパンダマウスといい勝負まで低下してきたのでこの辺で終わります。

Chira

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