美味しくないって言うはずだった、10年ぶりの煙草は美味しかった。

この前、10年ぶりに煙草を吸った。
煙草をやめたのは、妻と付き合う少し前。
付き合って貰うために煙草をやめた。

ヘビースモーカーではなかった。
吸い始めた理由は友達。
喫煙所に1人で行くのがいつも申し訳無さそうで。
俺も行くよって言うために始めた。
吸い始めたら心地よくて。
週に1箱吸う程度だった。
嫌なことがあったら、2箱になったり、お酒も増えたら3箱になったり。
逆にほとんど吸わない週もあったり。
お酒が入ると吸いたくなる時が増えて、友達みたいにちょっと喫煙所行ってくるって言うのが癖になっていた。

そんな中1人だけ気にしなくて良いよって、話続けたいし席で吸えよって言ってくれるやつがいた。
今も付き合いがある、今もなお何でも話してる親友。
喫煙所ちょっと行くって言うと、喫煙所まで着いてきて話をしてくれる、そんな親友。
親友ってどっちかが言うと、違うよ大親友だぞ、って笑いあって、心の友でもあるな、なんて笑う、そんな親友。
そいつの前で10年ぶりの煙草を吸った。
何で吸いたくなったかの話をして、普通なら軽蔑されるような話をして。
それなのに軽蔑もせず優しく相槌をうってくれて。

話してる途中でふと、煙草吸いてえなって言葉がつい溢れた。

何で吸いたくなったのかは、凄く特別な話ではなく。
ありふれているのは良くないけど、ありふれている話で。
またいつか別のnoteで書くつもりなので今回は割愛。
友達になってくれた人を傷付けて、それがバレたら沢山の人を傷付けることをした。
妻は泣いてしまう。
そういう事でしかないけど、詳しく書ける程まだ飲み込みきれてないので、飲み込んだら書くつもり。

煙草に関しては、嫌なことがあると吸いたくなる程度で、世の中の禁煙してる人と比べたら何も辛くない、そんな禁煙だった。
妻にはたまに、離別したら煙草吸って泣きながら不味いって言うか、なんて笑って話したりしていた。
そう。
次に吸う煙草は不味いはずだった。
美味しくても不味いって言うはずだった。
言うつもりだった。
言わなきゃいけなかった。

煙草吸いてえな、って溢したら、俺が誘ったことにして良いから吸えよ、って言ってくれた。
親友は吸わないのに。
車で吸っても良いよ、とまで言ってくれた。
その時点で泣きそうだった。
俺が泣いちゃいけないのに。

少し悩んで、やめとくって返答して予定通りの旅行をして。
ホテルにチェックインしてちょっと休んで。
そろそろ話せよって、居酒屋でお酒飲みながら詳しい話をして。
お酒が進むにつれて、口数が増え。
口数が増えるにつれて、自分の中の、よくわからないモノが整理されて理解できて。
ストンと、納得できる答が自分の中に降りてきた。
全部失敗してたなあって、自嘲したら、失敗しないやつなんていないって言ってくれて。

自分の中の全てを昇華させたくて、煙草を吸うことにした。
当時吸ってたのは、キャスター、セブンスター、ラーク。
キャスターは名前が変わっているのが何か嫌で、セブンスターは強いのしか売ってなかった。
ラークは当時と何も変わっていないように、感じた。
だからラークを選んだ。
値段は、変わっていた。

喫煙所に着いて、火をつけながら最初の一吸い。
美味しくないって言うはずだった。
当時も美味しいとは思ってなかった。
煙草を吸う、その行為が好きだった。
今回も美味しいとは思わなかった。
きっと美味しいわけではなかった。

でも、うめえって溢してた。

親友はそうかって、相槌だけ打ってくれて。
また色々話をして。
何本か吸ってから、二軒目。

煙草が吸える居酒屋だった。
でも、そこでは吸わなかった。
酒を飲みながら吸う煙草は、何となく嫌だった。
飲んだ後吸ってるのに、飲みながらは嫌だった。
何が嫌だったのかはわからない。
でも、嫌だった。

そこでも思いの丈を話させて貰い、また喫煙所で何本か吸ってからそれぞれの部屋に。

部屋に戻ったら、自分の中のケジメをつけるための行動をして。
それが終わっても寝れそうになかったから、喫煙所に向かう。
1人で煙草を吸い始めた。
1人で吸う煙草は、色んな後悔が混ざって、美味しくなかった。
何本か吸って、戻ろうかなって思いつつ、何となく親友に連絡したら、今散歩してるから話そうって。
多分、煙草吸いに来るのわかってて、起きててくれたのかもしれない。
単純に寝れなかっただけかもしれない。

でも。
それで今までの、誰にも言ったことも無いことまでぶちまけて。
そうして吸う煙草は、人生で一番美味しく感じた。

10年ぶりの煙草は、自分を少し癒してくれて、親友の優しさに気付かせてくれる、そんな味だったんだと思う。
こいつがいるうちは、自分は大丈夫だなって、変な安心を、10年ぶりの煙草で抱くことが出来た。



後書き的なもの。

個人的には煙草は緩やかな自殺だと思っています。
子供の頃の持病か何かで、吸ったら死ぬかもしれないって親にずっと言われながら過ごしていました。
多分ただの脅しだったと思いますが、僕にとっては煙草を吸えば死ねるかもしれない、みたいな思いはありました。
初めて吸った時は、勿論付き合いで吸う事を決断しましたが、裏に嫌なことがあったことは否めません。
普段から死にたいなあって思った瞬間に、煙草吸いたいなってなる程度の。
そんな喫煙者だったので、別に吸わなくて依存症的なの出たりもありませんでした。
普段から死にたい時はあっても、それが続くことが無かったので禁煙出来てましたが、今回は自業自得ではありますが、自分のしてしまったことで、ずっと死にたくなってたので緩やかな自殺をしてしまいました。
最後まで読んでくださりありがとうございました。
喫煙に関しては、しっかりケアをしたので、表立って何も言われませんでした。
バレてたのかもしれませんが、言われてないのでセーフにしています。

喫煙も飲酒も緩やかな自殺。
飲む量、吸う量には気を付けて、健康を害し過ぎない程度に嗜みましょう。