地獄が怖いあなたへ〜地蔵と閻魔とBLと…
いわゆる宗教2世(もしくは3世以降)が親に教えられた(押し付けられたとも言う)信仰から離れたいときに悩むことの一つが、
「信じるのをやめたら、悪いことが起こるのではないか」
「死後、地獄に堕ちるのではないか」
という恐怖とどう付き合っていくかだと思います。
私も伝統的なキリスト教の2世です。
教会コミュニティが苦痛で離れたくてたまらず関わるのをやめましたが、その後何年も地獄への恐怖で苦しみました。
(今はとくに気にせず生きてます;笑)
今日はそんな悩める2世たちに、昔の日本の地獄観はこんなにゆるかったんだと知っていただければと文章を打っています。
以前伝統芸能についての講座で聞いたことですが、昔の日本では地蔵菩薩が地獄に行かないように助けてくれるという信仰が盛んで、あまり地獄が恐れられなくなっていたそうです。
たとえば『八尾』という狂言があります。
大阪府八尾市にある常光寺というお寺を舞台にしたお話です。
このお話のあらすじが産経新聞ネット版に載っていましたので、引用します。
《ある八尾の男が閻魔大王の審判で地獄に落とされそうになった際、閻魔大王宛てに八尾地蔵から預かった手紙を渡す。
手紙には「この者の親戚に大変な篤信者がいて、世話になっている。その人に免じてこの者を極楽へやってください」と書かれていた。
閻魔大王は「八尾の地蔵といえば、昔大変な美僧で、わしとことのほか仲が良かった。その地蔵の頼みとなれば仕方がない」と言って、不信者を極楽へ送るよう取り計らった》
こうして読むと、地蔵菩薩様は閻魔様をも説得して罪人を極楽浄土に送らせてくださるという大変ありがたい話です。
ですがドキドキするのは『八尾』の設定で、この狂言では昔、地蔵菩薩と閻魔大王が恋仲にあったという話になっているのです。
つまり、この狂言はBL!!!閻魔大王様も地蔵菩薩が美僧だったとか言っちゃってるしね。
そして地蔵菩薩から閻魔大王への手紙の内容がなかなかに口汚い…。
「(やってきた罪人を極楽にやってくれという)私の頼みを聞かなければ、お前のところの地獄の釜を蹴破るぞ!(意訳)」
ですからね。
それで昔を懐かしく思い出して、言うこと聞いちゃう閻魔大王もどうなのよ!?
閻魔大王って日常業務で嘘ついた人の舌を抜いてるくせに、実はドMなのか。または地蔵菩薩は人々救ってるキャラなのにドSなのか。
仏教の教えで固定されているイメージを反転させてる作品で、もう遊んで作ってるとしか思えないのです。正直、こんなノリで良いのかと思いながら笑ってしまいます。
(一応仏教では、地蔵菩薩と閻魔大王は"同体"という考えもあるようですが、私の頭では理解が追いつきません…あしからず)
そして、この『八尾』が作られた狂言は、一応武家向けの芸能なんですよね…。武家向けでこれなら、庶民の間ではどれだけ軽いノリが共有されてただろうかと思うのです。
(ただし、『八尾』が上演されることはほとんどないらしい…)
地獄の脅しって、これくらい緩くとらえても良いんじゃない?
というのが今の私の考えで、悩んでた真っ只中の自分にも伝えてあげたかったと思うのでした。
自分の信仰を信じる/信じないも含めて今悩んでいる当事者さんの心が、ひとりでも軽くなってくれることを願っています。
これから選びとっていく人生に幸多かれ!!
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