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コンビニバイトの話 コロナの影響を添えて

最低賃金で働いている僕らに、彼らは一体何を求めているのだろうか。

まずは身の上話からしよう。

僕は大学院まで来たものの、継続してアルバイトをしている。
コロナの影響で親の収入が現状なく、自分の学費はおろか研究の基礎となる勉強のための書籍代、研究に使用するPCの代金などは支出されていく。
塾講師もかつてやっていた(生徒が志望校に合格したため引退した)ので、肉体的な負担の重く、時間拘束の多いコンビニをやめてこちらに復帰しようかと思っていた。
しかし、コロナの影響で授業があるとも思えなかったため。また、一年以上継続することも恐らくできないと言うのもあったため、募集を見ることすらなく3年ほど続けているコンビニの夜勤アルバイトを継続して行っている。

「コンビニ 夜勤」などと調べると、大体態度が悪いだのなんだのと言った記事や掲示板、5chのスレがヒットする。
実際かつて一緒に働いていた店員の中には常時態度が悪い、もしくはあまり望ましくないような態度を取る店員もいたためあながち間違ってもいないだろう。
ここまで書いている自分自身もいくらか心当たりがある場面もあるし、実際先日僕のことかと思われるクレームのような書き込みが自分の勤務先のレビューにあった。

しかし、恐らくほとんどの店員が「全ての客に対して態度が悪い」のではなく「客に合わせて態度を変えている」のである。

態度の良い、感じの良いお客様には品出し中だろうが
「お待たせしました」「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」
は基本だしその他の点においても丁寧な接客、笑顔での接客になる。
これは自然にそうなるのである。話しかけれられれば対応するし、何か聞かれればわかる範囲で答えるものだ。
どうしても困っているお客様には失礼を承知で目の前でスマホを出して調べながら対応するなんてこともザラである。

一方態度の悪い客には挨拶をする気すら起こらない。
まぁ最低限の発声はするし、トラブルを避けるためにマニュアル(読んだことも見せられたこともないが俗にいうマニュアル通りの対応という意味で使う)はするが、そこに気持ちは一ミリもないし、接客してもらっているだけありがたいと思えくらいの気持ちでやっている。
これが態度にも恐らく現れているだろう。

願わくば、望ましくない客には二度と来て欲しくないのでそうしている。
それが最低賃金で働く僕らが行うレベルの接客である。

なぜこうなってしまうのだろうか?
別に自分が休憩中に勉強をしていたりするから客を見下しているとかそういう話ではない。邪魔されて不機嫌になるということはないこともないが、それが態度に現れることは恐らくない。

そもそも、コンビニ店員というのは接客以外にも結構量の仕事がある。
時間帯にもよるが深夜はその傾向が顕著であり、客があまり来ないのだから、品出しやバックヤードの整理、フライヤーの清掃や発注のチェック、売り場作り、本部から送られてくるポップの組み立てと設置、期限が切れたポップの撤去、雑誌の陳列と返本、新聞の折込etc...はっきり言ってこの手の雑用の方が時間がかかっている。
他の時間帯が残した仕事も全て夜勤が片付けているので(自分たちのやり残しも恐らく他の時間帯がやってくれているとは思うのでお互い様ではあるが)、はっきり言って仕事量は多い。
1店員が勝手に判断するなと言われればそれまでかもしれないが、昼に3倍以上の金額で雇われている自分からすると、時給あたりに消費する体力等を鑑みてこっちの「雑用」がメインになってくる。故に接客をメインとする昼の人たちよりも接客のクオリティは下がる。
深夜手当も支払われるが、これはあくまで人間が起きているべきではない深夜にわざわざ仕事をしていることに対する手当なのでこれは最低賃金と見做すべきであろう。

また、昼に自分の生活があるので夜は眠い。疲れている。
それは利用する客もそうだろうかとは思うが、恐らく同等程度の状況なのに
「俺は忙しいんだから敬え」と顔に書いているサラリーマンに丁寧な態度を取る気は全く起こらない。

そして態度の悪い店員に対するレビューに対して最終的に
「それくらい接客の最低限の基礎だろう!」
だとか
「お金をもらっている以上はプロ意識を持ってどうたらこうたら」
などと書いているのを見かけるが
基礎と言う言葉の意味を考えれば、接客の最低限の基礎というのは
「レジ打ちの完遂」であり、愛想よく丁寧に挨拶をして気分良く帰っていただくというのはあくまでオプションである。
そして我々は最低賃金で働いている店員である。
先ほど述べたように雑用がメインである深夜が行う接客の基礎は
「レジ打ちを完遂すること」
と導かれることは自然であろう。
これで金を放り投げたりしたらクレームを入れても良いかもしれないが、別にそうでもなくとりあえずレジをうって袋に詰めてもらったならそれは完遂したと言って良いだろう。

例え他の店舗で愛想よく振る舞ってもらったからと言って愛想よく振る舞ってもらえるのが当然だと思うのは傲慢極まりない。
それは店員の「善意」によって提供されるオプションなのだ。無償の。

「金をもらっているのだからきちんとやるのが当然だ!」
などとは言うが金をもらってやっている仕事中常に誠心誠意取り組んでいる人間が本当にいるのだろうか。
タバコ休憩もとらず、勤務中にケータイも弄らず、twitterを見てみたり、競馬情報や株価をみたりもせず、黙々と言われた仕事をこなし、時には自分で考えて成果を上げたり、責任感を持って部下に仕事をアサインしたり、上司に理不尽に怒られようが誠心誠意対応する。こんな人間がいるのだろうか?
大体の人間が「成果が必ずしも賃金に対応しないのであれば、程よく手を抜いてやりたい時や評価に繋がるタイミングできっちりこなせば良い」とか考えて仕事をしているのではないだろうか。
賃金に対してそれに見合うと思っただけの責任を負うのだからそれを引き合いに出されても「賃金の分だけの接客をした」と答えるだけである。


態度の良いお客様に愛想よく接客するのは接客するこちらも気分が良いからであって、それが仕事だからではないのである。

これで僕が2倍以上の、なんなら3倍、塾講師をしていた頃と同程度の金額をもらっていたのであれば、それは当然行って然るべきオプションかもしれないが、最低賃金で働く我々が提供する義理は本来ないというものだ。

最近はコロナの影響でこちらの負担ややることが増えた。
レジ袋有料化によってこちらが確認するべき事項も増えた。
はっきり言ってこんなご時世にも関わらず口も抑えずマスクもせずにくしゃみや咳をしながら店内を歩き回る客ばかりで、かつて来てくれていた良い感じのお客様と会う機会はめっきり減った。
良い感じの態度のお客さんはこんな連中にうつされたらたまったものではないと思うので、来ない判断が賢明だと思われる。
こんな状況下でヤバイ客が来てまともに接客してもらえるとでも思っているのだろうか。マスクをしていない客はこちら目線雑菌も同然だ。態度の良い常連でようやく通常レベルとどこっこいと言ったところだろうか。

ちなみに店員はそういうのと接客した後に消毒こそすれど、商品まで消毒することはできないので何にどう触れているかはわかったものではない。
商品を陳列する際に保菌者の飛沫を移している可能性だってあるので、是非とも帰ってから出来るものは表面を消毒することをおすすめする。

こちらを気遣ってマスクをしながら出来る限り発話を控えてこちらに要項を伝えて来ようとする人や、手袋をしているひと、きっちり除菌している人や自分で清潔なエコバッグを持って自分で袋詰めをするお客様もいる一方で残念な人も多い。汚いエコバッグ(というか使用済みのレジ袋)に袋づめするように渡してくる客もいる。はっきり言ってストレスがえげつない。

良いお客に当たれば気分は良いし、仕事が早ければ休憩時間もあるし、休憩時間であれば勉強していてもゲームをしていても責められることもない。
そして昼に忙しい理系学生には体力的に我慢さえすれば非常に嬉しいバイトではあったが、コロナのあれこれでいろいろ見えてきたし、そろそろ潮時だろうか。

清掃、塾講師、試験監督、教材作成データ打ち込み採点etcと色々やってきたが、大学院を卒業して就活するまでの間、次は何して稼ごうかな。









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