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短編『何も気にならなくなる薬』その200

宝石

空き巣狙い

リップ


空き巣に注意。
剥がれかかった張り紙にはどこか説得力が足りない。
現に隣の家は昨日空き巣の被害にあった。
「気をつけないと」
「流石に昨日の今日で、ましてや隣の家に空き巣狙いをするわけ無いでしょ」
「でも、明日ちょうど二人共出掛ける用事があるから、とりあえず戸締まりはちゃんとしておこう」
そして翌日。
「せっかく待ち合わせまでしたのに直前で仕事が入るなんてな、あいつもツイてないな、とりあえず帰るか。あれ、あいつ、帰ってきてるのかな。ただいま」
「おかえりー」
「ドタキャンされたから帰ってきたわ」
「わ、私も思ったより早く終わったから帰ってきた」
「で、何してるの」
「えっ」
「鏡台の前に座って」
「あ、お化粧」
「帰ってきたのに?」
「うん、ちょっと練習」
「ふーん、そうなんだ。そう言えばこの間のリップどうだった?」
「え、あぁ、良かったよ」
「ならよかった、それでさこの間の買い物、あれどっちがよかった?」
「最後のがよかったかな」
「アメジストの方がよかった」
「アメジスト!?え、えぇ」
「それはそうとウィッグがズレてる」
「え、あ、ほんとだ、あははは」
「でも、ほんと化粧ってすごいよな、印象がガラッと変わるんだからな」
「そ、そうね」
「ただいまー」
「えっ?お前が二人?おい、間抜けな空き巣が入ってきたぞ、お前にそっくりな化粧をしてる」

美味しいご飯を食べます。